「食欲に透ける“建前と本音”学」

飲み放題の先にあるのは「フリー経済」なのか?

「稼ぎ頭が無料」という飲食店の損得勘定を分析すると・・・

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2010年7月14日(水)

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 民主党政権に移行してから、高速道路の無料化、高校授業料の無償化など、「無料」という点に話題が集まることが増えています。特に高速道路に関しては、無料化がもたらすプラスとマイナスの影響に関して、いまだ激しい議論が交わされています。

 また、昨年11月に発売されて話題になった『FREE(フリー) 〜<無料>からお金を生みだす新戦略』(日本放送出版協会)という書籍をご存じの方も多いのではないでしょうか。著者は「ロングテール」という言葉を世に知らしめたクリス・アンダーソン氏。主にウェブの世界をテーマとしていますが、「無料経済」について考察した非常に興味深い内容です。米グーグルがリードするIT(情報技術)領域に対しては、この「フリー」という概念を抜きにしては語ることはできません。

飲み放題でも利益が出るワケ

 今回はこの「フリー」について、少し考えてみることにします。飲食店にとって、フリーという言葉は極めて馴染み深いものです。ただし、「タダ」という意味でのフリーに関しては、クーポン券による「最初のドリンク1杯無料」のようなものはあるものの、それほどメジャーではありません。飲食店の場合、ウェブの世界のように限界費用をゼロに近づけることはできないので、それも当然でしょう。

 むしろ「自由」すなわち、一定金額を支払えば「好きなだけ、食べたり飲んだりできる」というケースが主流です。ホテルにおけるビュッフェ(バイキング・食べ放題のこと)や、ファミリーレストランのドリンクバーがその代表格です。

 あるいは、多くのビジネスパーソンにとって利用機会が多いのは、居酒屋での「飲み放題」かもしれません。この飲み放題というシステム、私を含む飲兵衛にとってはこの上なく有難いものですが、果たして飲食店側はきちんと利益を確保できているのでしょうか?

 例えば、1000円や1500円を払えば、2時間飲み放題というプランがあるとします。この金額の場合、ビールを3杯くらい飲んだら、顧客にとっては「元が取れる」ことになります。もちろんグループ全員が酒好きとは限りませんが、額面通り考えると、飲食店にとってのうまみは少なそうです。

 こうした飲み放題の仕組みが成り立つためには、次の2つのポイントが考えられます。

 まず1つは、「店は違うところで利益を確保する」という点です。すなわち、ドリンクで利益を上げることは諦めて、その分を食事でカバーするという発想です。と言うのも、このようなプランでは、大抵の場合、飲み放題を単体で注文することはできません。2000円や3000円のコース料理を頼んだグループだけに、オプションとして存在するケースが一般的です。

 仮に、2500円のコースを頼むとしましょう。比較的カジュアルな価格帯の店で、料理は1品500円程度のものが多いとします。すると、料理に2500円を支払うことは、1品500円の料理を1人当たり5品、自動的に注文していることになるわけです。けれども、皆さんが4人グループで店を訪れて、アラカルトで注文をする時に、合計で20品もの料理を頼むというのは、現実的にはあまり考えにくいかもしれません。

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著者プロフィール

子安 大輔(こやす・だいすけ)

子安 大輔カゲン取締役。1976年生まれ。東京大学経済学部卒業後、博報堂に入社し、飲料・食品・金融などのマーケティング戦略立案に従事。2003年、飲食業界へ転身。2005年に飲食店のプロデュースやコンサルティングを手がけるカゲン(東京都世田谷区)の設立に携わり、取締役就任。起業や独立などのための専門スクール「スクーリング・パッド」(東京都世田谷区)設立にも関わる。2009年、『「お通し」はなぜ必ず出るのか ビジネスは飲食店に学べ』(新潮新書)を上梓。



このコラムについて

食欲に透ける“建前と本音”学

食品スーパーや飲食店などが続々と登場しては、次々と消えていく――。食欲は、人々の本能であり、物欲が満たされつつある現在、「食」に対する関心と期待は高まる一方だ。そこで、「食」を通じて垣間見える、世の中の事象、そしてその背景にある人々の微妙な心理を取り上げる。人間の“欲”の本質を探ることで、マーケティングのヒントを得られる「視点」を提示していく。

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