「食欲に透ける“建前と本音”学」

【最終回】「丁寧」に仕事する感覚を呼び起こそう

立ち止まっては期待に応えられない

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2010年7月28日(水)

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 「今、外食業界では何が流行っているんですか?」

 仕事柄、こうした質問を受けることは多いのですが、最近、返答に窮することが増えてきました。「これがブームになっています」と語ることのできる事象があまり思いつかないのです。

 しばらく前までの外食産業では、確かにいろいろな流行り廃りがありました。「ジンギスカン」「もつ鍋」「豚しゃぶ」「立ち飲み」などの業態は、一時期はそれこそ雨後の筍のように、次から次へと似たような店舗が現れました。

 その後、時代はヘルシー志向であるとなれば、野菜料理をウリにしたり、「蒸す」という調理法に着目したりする店舗が急増しました。あるいは、比較的最近では、生産者や市場からの直送をうたい、鮮度にこだわったホルモンや海産物を提供する居酒屋も林立していました。

外食業界はネタが尽きたのか?

 けれども、こうした「大ヒット業態」が今、見当たらないのです。

 もちろん、多くの顧客が集まる飲食店がなくなったわけではありません。カジュアルなイタリア料理店のサイゼリヤの業績は依然好調ですし、餃子が名物の王将フードサービスは、この5月まで2年11カ月にわたって売上高が前年同月比プラスを記録するなど驚異的な実績を叩き出しています。あるいは、ハイボールやホッピーを打ち出した低価格帯の居酒屋も連日、人で溢れています。

 ただし、これらのケースはその業態自体に強い魅力があって人気を呼んでいるというよりも、「安い」という経済的側面が時代とマッチして支持されている構造なのは間違いないでしょう(もちろん価格を上回る価値をきちんと提供できているからこそ繁盛しているのは言うまでもありませんが)。そういう意味では、「低価格業態」というものは、それを一括りにしてブームとかトレンドとして語るというのは、少し違うのかもしれません。

 さて、こうなると、いよいよ外食産業もネタが出尽くしたのかという気がしてきます。ここで改めて、外食産業の市場規模の推移をグラフで見てみましょう。

 1997年には29兆円を超えて、ついに30兆円産業になるかと思われた市場規模は、その後急速に縮小し、多少の揺り戻しはあったものの、昨年はついに24兆円を割り込んでしまいました。国内の経済状態や今後の人口動態を考慮すれば、この数字が上向く理由を見出すことはできません。

 そしてこの状況が意味することは、これまで通り「ごく普通に」経営しているだけでは、その存続が危ぶまれるようになるということにほかなりません。すなわち、多くの飲食店は足元がぐらつき始めていて、その「存在意義」が今改めて問われているのです。

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著者プロフィール

子安 大輔(こやす・だいすけ)

子安 大輔カゲン取締役。1976年生まれ。東京大学経済学部卒業後、博報堂に入社し、飲料・食品・金融などのマーケティング戦略立案に従事。2003年、飲食業界へ転身。2005年に飲食店のプロデュースやコンサルティングを手がけるカゲン(東京都世田谷区)の設立に携わり、取締役就任。起業や独立などのための専門スクール「スクーリング・パッド」(東京都世田谷区)設立にも関わる。2009年、『「お通し」はなぜ必ず出るのか ビジネスは飲食店に学べ』(新潮新書)を上梓。



このコラムについて

食欲に透ける“建前と本音”学

食品スーパーや飲食店などが続々と登場しては、次々と消えていく――。食欲は、人々の本能であり、物欲が満たされつつある現在、「食」に対する関心と期待は高まる一方だ。そこで、「食」を通じて垣間見える、世の中の事象、そしてその背景にある人々の微妙な心理を取り上げる。人間の“欲”の本質を探ることで、マーケティングのヒントを得られる「視点」を提示していく。

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