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お天道様に守られている人(最終回)

松井証券社長・松井道夫 ―― 不安を楽しむ経営者

  • 高橋 三千綱

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2006年7月28日(金)

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 外務員による外交セールスをなくした松井道夫さんがめざしたのは、日本のチャールズ・シュワブである。ウオール街を嫌っていたシュワブは、スタンフォード大学を卒業すると、西海岸で証券ブローカー業を始めた。1975年のことである。

 その後、東のクイック・アンド・ライリー、西のシュワブとは壮絶なディスカウント競争をすることになるのだが、松井さんはシュワブの手法を徹底的に勉強することで、日本のチャールズ・シュワブになると社内に向けて宣言していた。

 外交セールスはコスト競争になる。それを見越して外交セールスをやめて、電話で顧客を開拓するコールセンターを始めたのだが、それもシュワブのやってきたことを脳裏に映しながら、こぢんまりと手探り状態で進めてきた。それが利益を生み出すようになったのが、始めて4年後の95年くらいからである。この年、松井さんは社長になる。

松井道夫氏

松井 道夫(まつい・みちお)氏

1953年3月長野県生まれ。一橋大学経済学部卒業後、日本郵船に入社。86年に松井証券のオーナー社長の一人娘と結婚、87年に同社に入社した。常務取締役営業本部長などを経て、95年から現職。株式委託手数料の大幅引き下げや、インターネット取引への特化などで、中小証券だった同社を個人の株取引でトップクラスに押し上げた。

 翌年の2月14日、アメリカでイー・トレードがインターネットでの株取引を開始した。松井さんはそこに未来の証券会社の姿を見た。さっそくアメリカに行き、提携を提案する。

 「そのときに会ったギリシャ人の社長が、とんでもないパテント料を請求してきた。日本でもいずれすごい価格競争が起きる。そんなときに法外なパテント料を払っていられるわけがない。いい加減にしろ馬鹿野郎といって、卓袱台をバーンと蹴とばして帰ってきた」

 97年にはチャールズ・シュワブ本人にも会った。彼との話の中でインターネット時代の到来を強く感じた松井さんに、このとき強い味方が現れた。シリコンバレーにいたシステムエンジニアの松島利幸氏である。

 これは運命的な出会いになった。松島さんこそがイー・トレードのインターネットシステムの相当部分を作った人だった。

 「話している内に意気投合してね、おまえ一緒にやらないかといったら、一肌脱ごうといってくれた」

 松島氏は当時世界でも有数のソフトウエアハウスだったケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズに勤めていた。そこで、いわば松井証券の専属になって、新しくシステムエンジニアを集めてシステムの開発をしだした。

 その1年後に松井証券の柱となるネットストックを立ち上げた。98年の5月のことで、それが自由化の1年前のことだった。(松島さんは99年にファイテックラボという会社をつくり、現在はチーフアーキテクトとして活躍している)

 「でも最初はコールセンターと併用だった。しかし、そんな中途半端はだめだ、インターネットだけでいこうと決断したのが99年のことだった」

 コールセンターで働いていた社員のほとんどは、このときやめていった。

 「それでも、スパッと決断できたわけではないんです。半年間ほど悩んでいた。夜中に何度も目が覚めた。ぼくはお山の大将ではないし、社長向きの性格ではないんです。悩みながら事態が好転するのを待つタイプなんです」

 いつでも不安はたくさん抱えている。今もそうだ。

 「でもね、不安を楽しむというのが人生を面白くさせる唯一の方法ではないかと、この頃気がついたんだ」

 松井さんは、不安を楽しむ経営者でなければ会社は伸びていかないと思っている。それはリスクテークであるという。リスクを背負わなくてはリターンもありえない。安定というのはリスクを求めようとしないから、リターンもこない。

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