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イッセー尾形流「人生コーチング」~
(3)人生横入りの方法――「見る」効用

ワークショップ「イッセー尾形のつくり方」見学記3

2006年7月26日(水)

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 ズブの素人を、4日間の稽古だけで舞台に上げ、お客さんに見せられる芝居を作り上げる--。そんな“無謀な”挑戦が、日本が生んだ独り芝居の達人、イッセー尾形氏と、ずっとコンビを組んできた演出家の森田雄三氏によって行われています。ワークショップ、「イッセー尾形の作り方」です。

 森田氏が指導するこのワークショップは、ビジネスパーソンにとって、自分の限界と思っていた壁を破るためのヒントに満ちています。そのエッセンスを、彼らにずっと注目してきたルポライター、朝山実氏が分かりやすくお伝えします。初めての方は、ぜひ第1回からお読み下さい。

(日経ビジネスオンライン 山中 浩之)

 ワークショップは盛況で、どの会場にも100人を超える応募者がありました。こうした場合、先着順なり、なんらかの方法で適正な人数に絞りむのがよくある形式だと思います。

 森田さんたちは違っていました。夜だけの予定を、急遽、昼と夜の二部制へと増やし、参加希望者全員を受け入れるべく、臨機応変に対処していました。出たとこ勝負の思想は、スタートラインから徹底され、これは舞台もそうですが、つくりあげるまでの過程にも通じていることでした。

演出家・森田雄三氏
演出家・森田雄三氏

 2回に分けても、1回につき30~70人の人たちで、会場はいっぱい。仮に1つの課題に全員が1分ずつ答えるとなると、稽古はそれだけで時間が費えていきます。これではなかなか次の段階に進まないでしょう。ほとんどの時間は「見ている」ことで終わっていきます。いわば大人数教室のレッスン。少数精鋭よりも稽古の効果は薄れそうです。

 ところが、「この稽古は、一対一じゃなく、大勢でやることに意味がでてくる」と森田さんは強調していました。

大人数だから「見る」ことが勉強になる

 「人は、どうしたって自分のことに頭がいってしまう。やり終えたあとのダメ出しも、演じた人は冷静になって聞けないもので。うまくいったかどうか、褒められるのか、貶されるのか。そのことばかりに意識がいって、話の内容は頭に入っていかない。むしろ観ている側の人のほうが、冷静なぶん、ここをこうすればいいんだなと、ダメ出しの意味を理解しやすいものなんだよね」

 「ウチらがやろうとするのは、そんなウソっこなものではなくて、皆さんが生きているままを舞台にのせる。演劇の楽しさというのは、いろんな言い方があるだろうけど、身体の中から言葉を出す。寸前まで思いもしなかった言葉が、突然堰を切ったかのように溢れ出す。この体験だと僕は思う。それに、お客さんが笑ってくれたりすると、とても幸せな時間を感じるから」

 ワークショップには、働いている参加者が多く、時間に遅れてくる人もいます。

 途中から入ってきても森田さんは、一切おかまいなしでした。途中退席も自由です。

 ただ、1つだけ注意を与えていました。

 「演劇というと、どうしても台本があり、演出家がいて筋道だったものをしないといけないと思い込んでしまうんだけど、4日間では台本を覚えてやるなんて到底無理だから」

 「遅れてきた人は、遅れを取り戻そうと焦って、張りきったりしないで、何をやっているのか、全体の様子が飲み込めるまでは見ていてほしい。ふだん何かを〈する〉ことに価値があるように皆さん思い込まされてきているけど、黙って見ることも大事なことだから」

 学校でも会社でも、発言する、発表することが「参加する」行為だと考えがちですが、このワークショップでは「見る」が稽古の基本でした。

 一人の失敗と成功を、全員の学習材料にする。そうやって森田さんは「大人数」というマイナスを見事にプラスに転化していきました。

できるときは突然できるようになる

 芝居に限らず、稽古をしながら物事を習得するのは「徐々によくなるというものではないんだよね」と森田さんは言います。

 「鉄棒の逆上がりだとか自転車に乗れる瞬間ってそうじゃない。なんで出来たのか自分でもよくわからないんだけど、突然乗れるようになる。コツを掴むって、そういうこと」

 「徐々に出来ていくものというのは、タカがしれている。『人生横入りの方法』って、どこかで言ったら大うけしたけど、このワークショップでは、コツコツやってきた人を追い抜いて、途中から参加した人、昨日までまったく出来なかった人がある日突然出来るようになる。やりながら皆さんで、その方法を勉強していきましょう」

 稽古の最初のときにはジミで目立たなかった人が、急にいきいきと芝居達者に化ける。そういう場面を目の当たりにするたび、森田さんは「割り込み」の効用を確信していったのでしょう。横入りの人たちは、積極的に前に出て行かないけれども、稽古の様子を見逃さずに眺めていた人たちでした。

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