職業としての「社長」を自ら選び、活躍している人が、将来、経営層を目指す人々に、自身の経験を語るトークセッション「Road to CEO」。第6回は、1996年、デジタルクリエーターの育成を手がけるデジタルハリウッドから分社・独立した広告代理店、アイ・エム・ジェイ(IMJ)を率いる樫野孝人氏をゲストに迎えた。
樫野氏は大学卒業後リクルートに入社、当時、資本関係ができたダイエーの福岡ドーム運営、映画のプロデュースなどで活躍した後、2000年、IMJに入社、CEOに就任した。
第1回は「人事の採用担当になりたい」と入社したリクルート時代のエピソードから、ダイエー時代の福岡ドーム事業の立ち上げと、エンタテインメントの世界での経験を振り返る。 司会は日経ビジネスオンライン副編集長の山中浩之と、リクルートエグゼクティブエージェントの井上和幸氏。テーマ別に4回に分け、火・木曜日に掲載する。
司会、山中(以下Y) 最初にリクルートに入られ、(人事の)採用担当で、実績がすごかったとお聞きしているんですが、なにか決め技が。
伝えたいことは、リクルートってこういう会社とか、こんな働き方(ができるとか)、ですけれども、相手の土俵でのチューニングをいつも心掛けていました。アメフトをやっている人はアメフトにたとえてリクルートを語る、音楽をやっている人は音楽で話してあげるんです。
合わない相手にチューニングするには
Y 人の趣味や志向は千差万別ですよね。自分とは合わないところにもチューニングする心得もあったんじゃないでしょうか。
その人を好きになれるか、というのがすごく大事です。
愛情を持っている人に対しては向こうも好意を持ってくれるので、その気持ちを僕自身が持てるか。あとは、お茶が好きという人には、1時間、お茶のことを聞くと、相手も話して気持ちよくなる。僕も1時間、お茶のレクチャーを受けられるわけで、翌年、もしくは別のタイミングで、お茶に詳しい人が出てきたら聞きかじりをしているので、情報の雪だるま現象が起こる。年間100人を採用すると100人の趣味に触れるので、(知識が)膨れていきますよね。
本当に困ったら、人類共通の話題、恋愛問題。これに興味のない人はいないので、ここに持っていくと、たいてい共感できる感じでしょうか。毎年2000人ぐらい面接したんです。2000人を面接すると、それなりに見る目ができます。
Y そのときの経験は今、役立っていますか。
経営で本当に大事だと思うのは、人に対しての目利きと口説きとキャスティング(配役)。そんな感じで言うと、人事をやっていたのは、ものすごく役に立っていますね。
Y 1993年、ダイエーがリクルートに資本参加し、福岡ドームに樫野さんは呼ばれるわけなんですが。
(僕自身)めちゃめちゃ喜んだんです。(当時ダイエーのオーナーだった)中内さんは、高校の大先輩で、OB会長か何かをやっていらしたんですね。僕は神戸出身なので、主婦の店ダイエーにも非常に親近感を持っていました。当時はダイエーがツインドームシティ構想をぶち上げて、ホークスを買収した後、福岡に双子のドームを造って、ホテルも造って、都市開発をやるぞと。僕は大学まで野球部にいたので、この仕事には運命を感じました。
ダイエーとの隙間をどう埋めたか
Y それで福岡に行かれた。
はい。週3日福岡、東京4日みたいな。エンタテインメントの企画って、東京にほとんどある。プロダクションもクリエーターもいるので、こっち(東京)で作って、現場が福岡、そんな生活でした。
Y 一緒に仕事をする方もダイエーの方に変わられるわけですね。(リクルートとダイエーの両社の)壁は高いんじゃないかと思うんですけれど、どう乗り越えたんですか。
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