「EXPRESS X」

【談話室たけくま】
著作権を主張せずに稼ぐ方法

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2006年9月13日(水)

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 「談話室たけくま」へようこそ。編集家、竹熊健太郎氏と、『インターネットの法と慣習』(ソフトバンク新書)を上梓された法政大学社会学部助教授の白田秀彰氏の対談をお送りします。ネット上での著作の権利は、徹底的に守るべきか、開放したほうがメリットが大きいのではないか。ふたりが自らの体験に即して語ります。白田秀彰氏のプロフィールはこちらです。

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白田 博士論文を書いた1996年ころから、インターネットの時代には、権利を主張して抱え込むよりは、どんどん公表して知名度を獲得して経済的利益に結び付けていくべき、といいますか、そういうモデルしか成り立たないと思っていたんです。

白田秀彰氏
白田秀彰氏

 自分の場合は書いたものを全部公開して(「Research Papers of Hideaki Shirata」)いたおかげで、それがきっかけになって声がかかり、就職もできたし、いろいろお仕事も来るようになった。そういう実証もあるんですよ、と言っているんですけど、一部の人だけが気付いているだけで、大多数の方は基本的に関心がないんですね。

竹熊 僕も今、ブログ(「たけくまメモ」)を始めてそろそろ1年半たって、今年の12月に2年目になるんですけど、ただで書いて読んでもらっているわけですね、もちろん。ブログからの直接収入は期待してないんですけど、そうしたらブログを書く前より、明らかに仕事は増えているんですよ(笑)。荒川静香さんの取材をやりたいとブログで言っていたら、彼女のアイスショー取材の仕事が入ってきましたよ。

白田 そうでしょう。そういうことだと思うんですよ。

「作りたい人」は、見返りを(あまり)気にしない

竹熊 ブログってある意味、自分の企画見本みたいになっていますからね。

 企画見本といえば、ピー・プロという会社の、うしおそうじさんという人がいらっしゃったんですよ。もう3年前に亡くなったんですが、この方にインタビューしたときの話なんですけれどね。このピー・プロというのは「マグマ大使」とか「宇宙猿人ゴリ(スペクトルマン)」とかを…。

白田 懐かしいですね。

竹熊 ああいう特撮テレビ番組を作っていたわけですね。ところが、うしおさんのユニークなところは、番組を売り込むときには企画書とか作らずに、まず第1話を作っちゃうんですね。

白田 すごいですね。漢(おとこ)だ!

竹熊 テレビ局からまったく依頼がなくても、自主製作でまず第1話を1000万円とか2000万円とかかけて作っちゃうんです。それをテレビ局に持っていくんです、「こういうものを作りましたけど、おたくで放送しませんか」と。ところが、向こうが乗らなくて、お蔵になることもあったんですよ。それでも作ってしまう。

白田 それは見たいな。

竹熊 今度、ピープロ・パイロットフィルム全集みたいなDVDが出るという話がありますけどね。

 それでですね、僕がうしおさんに「お蔵になったら1000万円とか損するわけでしょう。大損する可能性があるのに、なんで作るんですか」と尋ねたら、「君ね、企画書なんて誰も読まないんだよ、テレビ局の編成局長の机に行ってみろ、もう企画書が机の中とか下に積んであってほこりがたまっている。そんなもの、誰も読まないんだ。誰も読まない企画書に何の意味がある」とおっしゃる。「だから僕は企画書のかわりに作品を作って持ち込むんだ」と。

白田 企画書を見せられても「要するに何をやるの」と、たいてい聞かれますものね。

竹熊 うしおさんは、やっぱり何だかんだ言って「作りたかった」人なんだと思います。企画書の形でずっと寝かされたり転がされたりして、1年も2年も経つなんてクリエイターとして耐えがたかったんでしょうね。じゃあ、もう自腹で作っちゃおうよ、という。そこで話は戻るんですが、かかる手間やリスクは違いますけれど、思い立ったら形にでき、人に見て貰えるのは、今更ですがブログの一番いいところだと思います。

オルタナティブとしてのブログ

白田 そうはいっても、ブログを続けていかれるのも大変でしょうね。私なんか自分のWebサイトの更新は2〜3カ月に1回ですから。

竹熊 僕もそう思っていたんですよ、ブログをやる前は。いろいろな商業サイトから「日記を連載しませんか」というので、何回かやったんですよ。全部続かなかったですね。

 ところが、ブログを始めてみたら、編集者が間に介在しないと、こんなに書きやすいのかと驚いたわけです(笑)。僕は最近よく「ネットだけで食いたい」と言っているんですが、それは出版社と縁を切ると言っているんじゃなくて、自分もメディアを所有することによって、対等の立場に立てたら、と思っているからなんです。

 出版社の仕事をするということは、いわば他人の軒先を借りて仕事をするわけですよ。一応、なにがしかの遠慮は発生するし、基本的には版元の編集者が言うことは聞くしかない。聞きたくなかったら仕事を降りるしかない。でも従来のシステムだったら、降りたら即、身の置き場所がないじゃないですか。そのときにブログがあるとちょうどいいんですよね。「あ、こっちで書けないんだったら、分かりました、ボツになったネタは俺のメディアで書きますよ」ということで、それで成立するわけですよ。

白田 オルタナティブがちゃんとあるわけですね。

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著者プロフィール

竹熊 健太郎(たけくま けんたろう)

竹熊 健太郎

1960年東京生まれ。81年よりフリーで編集・文筆活動に従事。主な活動ジャンルは、マンガとアニメーションを中心としたサブカルチャー領域。2003年4月より、多摩美術大学共通教育で「漫画文化論」非常勤講師を務める。桑沢デザイン研究所で06年4月より「キャラクターメディア研究」ゼミ講師(森川嘉一郎、伊藤剛と共同)。ブログ「たけくまメモ」はこちら



このコラムについて

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 「ユーザーの顔が見えない」と言われる中で、自分自身の思い入れを武器に成果を上げている人々がいる。いわく言い難い個人の熱意(X)を、ビジネスとして組み立て、市場にいる買い手に思いの丈を伝える(EXPRESS)工夫を、本人へのインタビューを中心に、所属する組織や、市場規模の大小に関わらず紹介する。

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