2007→2010 上海マーケティングツアー 

【わかるかも中国人】(1)
変わりゆく都市を見つめる制服少女たち

社会  中国 

(c)artist and Redskyart Space, Haikou

 超高度経済成長による急激な発展から頻発する農民暴動まで、日々届けられる膨大な中国情報。ずいぶん大変なことが起きているようだが、そこに生活している、当の中国人は何を考えているのか、よく分からない。

 それでも今の中国を理解しようとすれば、次の3つの視点からのアプローチが有効だろう。「階層」「世代」「地域性」だ。

 まず「階層」の視点を持ち込むと、両極に振れる混沌とした中国のイメージをズバッと整理できる。市場として我々のビジネスの対象となりうるのも、ほとんどの場合、「チャイナ・ニューリッチ(国内富裕層)」の階層だ。

等身大の目線で、中国の人々を見てみよう

 急成長とともに生まれた新興富裕層をつかむには、「世代」の差異の視点も欠かせない。彼らは欧米の富裕層とは違う。国土を荒廃させた文化大革命(1966〜76年)から改革開放(1978年〜)、そして高度経済成長(1990年代〜)。チャイナ・ニューリッチたちは変貌する社会に生まれ、時代を生き抜いてきた。その生き様は、敗戦から高度経済成長を経て今日に至る、我々日本人の経験と重ね合わせることもできる。ただし、そこは中国。我々が既視感を持って見つめる対象も、実情が分かるにつれて、強い違和感を覚えるかもしれないが。

 中国の人々を「分からない相手」として突き放すのではなく、また「遅れてやってきた者」と下に見るのでもなく、お互いの生きてきた時代のタイムラグの存在を踏まえた上で、同時代を生きる者として等身大の目線で彼らの内面を見ていく。そうすれば、彼らのことがわかるかも…それがこの連載の基本スタンスだ。

 そして、チャイナ・ニューリッチの心を覗くのに恰好の窓となるのが、現代アートなのである。

 作品が描くテーマや題材はもちろん、アートが株や不動産のように投機の対象とされるビジネスの過熱ぶりや、それらを取り巻く「ヒト」「ハコ」「カネ」の奔放な動きは、彼らの欲望のありかをリアルに映し出す。

 こうした動きがストレートかつダイナミックに起きているのは上海だ。まずは、中国現代アートを通して、「上海ニューリッチ」の心象風景を探ってみよう。

 先ごろ『芸術起業論』(幻冬舎)を上梓した現代美術家の村上隆は、著書の中で次のようにいう。

「すべての人(=アーチスト)は起業家である」
「ビジネスセンス、マネジメントセンスがなければ芸術制作を続けることができないのです」
「アメリカの富裕層には評価の高い芸術を買うことで『成功したね』と社会に尊敬される土壌があります。そういう人たちが、商売相手なのです」
「現状のお金の流れをまず全面肯定して内部に入りこまなければ、美術のメインストリームで活躍する当事者にはなれません」

 今年サザビーズNYで自作が「1億円で落札」されたという村上の語りは、熱く挑発的だ。でも、中国社会に身を置く現代アーチストたちからすれば、「そんなことはハナから承知だよ」というに違いない。

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このコラムについて

生産拠点から巨大市場として注目されてきた中国。そこで何が、どうして、支持され、売れていくのか。2010年の中国市場を先読みするための、最先端市場現地レポート。

筆者プロフィール

中村 正人(なかむら・まさと)

編集者。1963年生まれ。立教大学社会学部卒。出版社勤務などを経て2004年からフリーに。専門は観光関連業界のビジネス動向、最近は訪日中国人旅行市場に関心を持つ。また東京池袋界隈の在日中国人事情にも詳しい。主な著書に、『最新データで読む産業と会社研究シリーズ トラベル・航空』『ホテル』『図解 中国の地域性がわかる本』(産学社)『行きたい街を歩く 上海・蘇州・杭州』(西東社)など

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