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【わかるかも中国人】(6)
アートビジネスを育む廃墟「莫干山路50号」

  • 中村 正人

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2006年10月23日(月)

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 これまで上海を代表する現代アーチストの顔ぶれを眺め、その絵解きを通して、豊かになったといわれる「上海ニューリッチ」の胸の内を覗いてきた。

 次に、「ハコ」の話に移ろう。ほんの数年前まで無名だった彼らが「世界デビュー」したのはどんな場所からだったのか。アートビジネスの生まれる現場を訪ねよう。

 上海市内を東西に蛇行しながら流れる蘇州河。その両岸は至る所で地面を掘り返し、急ピッチで高層マンションに生まれ変わろうとしている。運河沿いの小道を歩くと、所々に租界時代に建てられた古い工場やレンガ造りの倉庫がぽつんと廃墟のように立っている。いずれは跡形もなく消えてしまうのだろうが、頭上を覆う高層建築に比べれば、どこかホッとさせる光景だ。

 その再開発地区の一角にある国営紡績工場の跡地。そこがいま、地元アーチストたちのアトリエやギャラリーが集まる、上海で最も有名な文化スポットのひとつ、「莫干山路50号」である。

モノトーンの工場団地の中にある莫干山路50号

 「莫干山路50号」の公式サイトによると、現在、この地区にはフランス、イタリア、スイス、イスラエル、カナダ、ノルウェイ、そして香港などから来た外国人と地元上海人が運営するギャラリーが60以上あるという。さらに、(これはサイトに書かれていないが)海外でも知られる有名どころから無名の中国人アーチストまで、玉石混交のアトリエ、そして聞き耳の早い広告デザイン事務所や設計事務所、映像制作会社といった連中の仕事場が軒を連ねている。最近では、観光客向けのスタイリッシュなカフェやバーもある。

 そこにあるのは公共の美術館や個人の商業画廊ではなく、フリーランスのアート関係者らが老朽化した建築物を利用して自主運営する実験的な場所、いわゆる「オルタナティブ・スペース」だ。ヨーロッパでは1980年頃から各地に現れており、中国では2000年以降に出現。そのゲリラ的な性格から世界の注目を浴びた。上海ではその代表が「莫干山路50号」だ。

改革開放で潰れた紡績工場がアートの梁山泊に

 中国では1990年代に入り、改革開放経済の急速な進展により市場原理にそぐわない多くの国営工場が操業停止に追い込まれた。上海では、かつて工場密集地帯だった蘇州河沿いに無人の工場跡や放置されたままの倉庫群が生まれた。それに目をつけたのが、アート関係の連中だった。なにしろ家賃が安いからだ。

 それまで中国では美術学校を出て定職につかないアーチスト志向の青年たちは、近郊の農家に住み込み、なかば自給自足に近い生活の中で創作に励んだものだった。都市の急成長を横目に見ながら、繁栄とは無縁のコミューン生活。90年代の中国アートが成金趣味に対して妙に攻撃的だったり、自らの境遇をあざ笑うような自虐性と露悪趣味に満ちていたのは、天安門の挫折もあるだろう。が、彼らが一般社会から疎外されていると勝手に思い込んでいたせいだったかもしれない。

1990年代アートは成金趣味を攻撃した(チャイニーズ・キッチュの作品から)(C)ShangART

 そして2000年前後。まるで申し合わせたかのように、全国各地で若いアーチストたちは都市の廃墟に潜入し、そこを寝起きの場にして創作を始めたのである。

サークルの部室を思わせる雑然とした開放感

 「莫干山路50号」は灰色の工場団地が入り組む殺風景な場所だ。薄暗いビルの入口を一歩入ると、無数のアトリエやギャラリーが並んでいる。まるで1970年代の日本の大学のサークル部屋のような雑然とした開放感がある。各部屋は工場だったせいか、やたらと天井が高い。壁は展示用に白く塗り替えられ、色鮮やかな現代アート風作品が誇らしげに展示されている。訪問者はそこを自由に出入りでき、アーチスト本人と話をすることもできる。

 ふと隣の部屋を覗くと、いまだに廃業することなく工作機械を動かす労働者の姿があるではないか。他者に無関心でいられることにかけては類を見ないのが中国人とはいえ、周辺の環境の激変ぶりは、彼の目にどう映っているのだろう。地区のはずれには民家もある。子どもの洗濯物が干され、路地にイスとテーブルを持ち出し、麺をすする家族がいたりもする。1点何百万円という値段の付いた作品が展示されている、そのすぐ隣で。蕪雑(ぶざつ)な感じが、いかにも中国らしい。

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