自由な表現を追求するのがアートである以上、当局との間に摩擦が生まれるのは必至。むしろそれが筋だとさえ思うのだが、創作産業の支援を打ち出した上海市政府は、そのあたりの矛盾をどう考えているのだろうか。
先日閉幕したばかりの上海ビエンナーレ(上海双年展)は、市政府主催の国際美術展だ。当局の自由な表現に対するスタンスをうかがうのに格好のイベントだと言える。スポーツイベントならまだしも、自由と民主化にあれだけ厳しい姿勢を取る政府が国際的文化イベントを主催するに至った背景を、現場で探ってみた。

9月5日に開幕した上海ビエンナーレは、「25の国と地域から集まった作品118点(作家は94組)が展示される」国際美術展だ。テーマは「ハイパー・デザイン(超設計)」。公式ウエブサイトの解説を見てもいまひとつ抽象的で分からないのだが、「各作品のデザインの裏には、複雑に交錯した社会と文化が内包されている」という(「人民網日本語版」2006年9月6日)。「ブルジョワ趣味」に走らず、より生活に密着した大衆にも分かりやすいアートを、といったくらいの大まかな方向性はうかがえる。

日本からも数人のアーティストの作品が出展されている。現地で評判だと伝えられるのが、目つきの悪い不機嫌な少女キャラクターで知られる奈良美智の巨大カボチャのオブジェだ。キャラクター文化が浸透しつつある中国ならではの人気ぶりだという。
こうした情報はネット上でもずいぶん拾える。中国では美術展の写真撮影もたいていノーチェック、いわば無法状態なので、若い美術愛好家の個人ブログに会場内の写真がバシバシ載っている。何の邪心のない若者たちの行為によって文化が際限なくネットを通じて伝播していくのだと思うと、海賊版に象徴されるこの国の著作権問題に関して、何が是で何が非なのか考え込んでしまうところだ。

会場は人民公園の中にある上海美術館や、ブランドショップの集まる南京西路の中信泰富広場、新天地といった上海ニューリッチや外国人にはおなじみのスポットだ。メイン会場となる上海美術館は、1933年に竣工された元上海競馬場のクラブハウスで、5階建ての鐘楼のある堅牢な英国式石造建築。以前は図書館として使われていたが、ビエンナーレ開催のために2000年、美術館に改装された。職員の通用口には(中国の政府機関ならどこでもそうだが)「党がこの国の美術を指導する」旨の標語が飾ってある。
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