• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

着眼大局、着手小局 
勇気ある撤退から学んだこと

三井物産・鈴木大山の場合(その3)

  • 高橋 史忠

バックナンバー

2006年12月15日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

前回の記事から読む

 目の前に「大きな箱」と「小さな箱」がある。中に入っているものは分からない。好きな方を選べと言われたら、どちらを選ぶだろうか。

 昔話の教訓から言えば、迷わず小さな方だ。「舌切り雀」で小さなつづらを選んだ優しいお爺さんが得たのはギッシリと詰まった金銀財宝。大きなつづらを選んだ欲張りなお婆さんは、つづらから出てきたマムシやムカデで散々な目に遭う。

 欲張るとろくなことはない。多くの昔話は人間としての“美徳”をこう教えている。欲深な人間は幸せになれない。だから、小さな方を選べと。

 だが、囲碁では必ずしもそうではない。むしろ大きい方を選びなさいと、格言は言う。「小を捨てて大に就け(捨小就大)」。中国唐代の詩人、王積薪の作と言われる「囲碁十訣」という有名な10大訓戒の1つだ。碁石で囲んだ盤上の領域の大きさを競う囲碁では、小さな領域を争う戦いにこだわらず、盤面全体を見て大きな所に目をつけるべきだということを示している。全体の状況を俯瞰的に見ながら、その上で目の前のことにも最新の注意を払えと教える「着眼大局、着手小局」とほぼ同じような意味合いである。

シリコンバレーで獲得した提携先との調印式で。左奥で立っているのが鈴木大山氏(本文の内容とは関係ありません)

 見方を変えれば、これは欲張りはよくないと伝える昔話の教訓とも重なる。欲張って小さなことにこだわらず、もっと大局を見て行動しなさいということだ。これは囲碁だけでなく、ビジネスでも日常生活でも通じる教えだろう。

 1年半の米シリコンバレー生活から2001年に帰国した鈴木大山(だいせん)も、営業活動の中でこの格言に通じる場面に遭遇した。ある米国のIT(情報技術)ベンダーと提携し、日本でソフトウエアを販売するビジネスに邁進していた時のこと。事業開始後しばらくして、上司から提携関係の発展的解消の決断を迫られた。

もっと大きな仕事をすべきじゃないのか

 決して業績は悪くない。事業はそれなりに好調に推移していた。提携先には、「ジョイントベンチャーで日本法人を立ち上げるなら、ダイセンとやる。君とじゃなければ、日本法人は設立しない」と言われるまでに、篤い信頼を得た。名指しでここまで言われて、燃えないビジネスマンはいないだろう。鈴木も手塩にかけたその事業を自分の子供のように思っていた。

 そうした時に急転直下で下りてきた撤退。愛着のある事業だっただけに鈴木は頭を抱えた。どうしても手放せない思いでいっぱいだったからだ。

 「もう少し続けさせてください」
 「ダメだ。もうこれは決まったことだ」

 押し問答を何度か繰り返した末に、上司から諭されたのが「もっと大局を見ろ」ということだ。事業の業績は好調だったとはいえ、開始当初に想定していたものには届いていなかった。それが撤退の理由だ。「当初は10だった事業が100、1000と伸びていくはずだったのですが、伸びが50、100というイメージでしかなった」と鈴木は当時を振り返る。年間2000億円規模の営業利益を上げる三井物産の中ではほんの小さな事業でしかなかった。

 「お前はこの程度の事業規模ではなく、もっと大きな仕事をすべきじゃないのか」

 上司のこの言葉を聞いて、鈴木は撤退を受け入れた。我が子のように思っていた事業。本当は続けたかったと今でも思うことがある。それでも人手に渡した。次の大きな仕事をするために。

 もしかすると、「大局を見ろ」という上司の言葉は愛着のある事業に固執する鈴木を説得する方便だったのかもしれない。だが、ビジネスの世界では、大きな果実を得るために時に非情になって勇気ある撤退を決断しなければならない時がある。鈴木はこの体験でそのことを痛感した。(次のページに続く

 鈴木大山氏と梅沢由香里プロの師弟対決を映像でお届けする第3弾。中盤に差し掛かって好手が出た鈴木氏は、ハンディをもらったとはいえ、プロ棋士を相手に互角以上に渡り合った。だが、もちろん梅沢プロも、プロ棋士の威信を懸けて応戦する。負けず嫌いの2人の意地がぶつかり合う白熱の戦いとなった。

 終盤を迎える段階で、観戦していた囲碁仲間の見方は「ほぼ互角なので、このまま行くと大山が不利ですね。これまでの経験から彼には最終段階でポカが出ることが多いですから」。果たして、鈴木氏は有利な局面を生かして逃げ切ることができるのか。手に汗握る攻防が続く――。

 梅沢由香里プロの紹介映像はこちらへどうぞ。

(写真:山下 裕之)

コメント0

「囲碁上手は仕事名人」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「絶対これしかありません」というプランが出てきたら、通しません。

鈴木 純 帝人社長