クオリティーの高い作品を絶え間なく生み出し続けている漫画家の浦沢直樹さんは、アイデアを生み出す時や非常に大切な1本の線を描く時に、座禅で言う「半眼」の状態に自分を置くと言う。
物を「見る」ためには脳を使う。外から入ってくるものだけを見るのではなくて、自分の内側にあるものを見るのも脳の大事な役割だ。それはなかなか難しいことで、外を見ることとなかなか両立しない。しかしクリエーターはそれができる。
これは危ういバランスの中に自分を投げ込むことだ。半ば現実を見ていて、半ば自分の内面、内なるイメージを見ている。それが浦沢さんの絶妙なバランス感覚だと思う。
浦沢さんは、アイデアを生み出すときに一切のメモを使わず、脳だけで考えている。
僕の経験でも、KJ法やアイデア創造を支援するソフトなどは、本質的に人と情報をシェアするといった場合には役立つが、核となるアイデアを生み出すことにはほとんど役に立たない。むしろ邪魔することの方が多いんじゃないかと考えている。
以前、アートディレクターの佐藤可士和さんに聞いた時も、コンセプトが決まるまでビジュアルは書かないと言っていた。ビジュアルに頼らないのはクオリティーの高いものを作っているクリエーターに共通の流儀だ。
その理由はこうしたツールが起こすダイナミックスよりももっとすごいことが脳の中で起こっているからだ。無意識の中でメモ帳のようなものがあるとすれば、もっと何千という数がうごめいているのだと思う。アイデアが生み出される時は、それを一気にセレクトして意識の中に出てくる。こうした脳のプロセスをツールに置き換えるのは無理だと、超一流のクリエーターが言うから説得力がありました。
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