仕事の現場では、予想もしなかった様々なことが起こる。今回お話を伺った指揮者の大野和士さんの場合、歌手の声が出なくなったり、オーケストラがストライキしたといったことがあった。そういう時にどんなことがあっても動きを止めない、投げ出さないことがすごく大事なんだ。
危機管理において大野さんは素晴らしいものを持っている。常に代替案を出し、出した瞬間に行動している。それがまたダメになった時はすぐ別のことを考える。
大野さんの場合、音楽家として最善の演奏というものは頭にあるのだろうが、最善の演奏と言えないものになってしまったとしても決して投げないで、できる範囲の中で最善を尽くす。それが信頼を得る秘訣なのだろう。
指揮者というのはある意味でカリスマ性が必要で、皆がその後についていかなければならない。危機的な状況で何をして何を自らの責任として生き抜けるかを人は見ている。そういうことは付け焼き刃ではダメで、生き方自体の説得力がないとダメなのだろう。大野さんのカリスマ性はそんなところからきている。
あと、西洋音楽というのは向こうのものだから、ヨーロッパへ行って、日本人がどうやっていくかは難しいことだと思った。だからこそ圧倒的な力を見せつけるという意志を強く感じた。向こうの人と同じくらいではダメだから、日本人だからどうだとか言わせないくらいの、圧倒的な実力を身につけ、圧倒的に卓越しているべきだ。大野さんは、それを自分の1つの倫理として持っている。
これは、以前登場していただいたカーデザイナーの奥山清行さんとも共通していた。言い訳の利かない実力の世界で勝負している人が持つ、非常に厳しい共通感覚を見た気がした。
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とかく他人事のように考えてしまうことが多い中では、真剣に考えるべきことですね。自分も心がけて行きたい。(2007/01/30)