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【わかるかも中国人】(18)
中国ニューリッチのメンタリティ
~画商が語る新興富裕層20年史

  • 中村 正人

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2007年1月29日(月)

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 前回は、急激な経済成長によって沿海都市に呼び込まれた出稼ぎ労働者の世界を覗いた。今回はもう一方の極に目を転じてみよう。彼ら「農民工」が支える都市の表舞台を生きる主人公=ニューリッチたちの世界だ。

 中国「格差社会」の現実にさして敏感とは思えない新興富裕層の人たちはいま、どんなことを考えているのだろう。それを探るべく、ある上海人画商に中国の「お金持ちビジネス」の内情について聞いた。

 いま画廊に絵を買いに来る中国人はどのような人たちか。そもそも中国におけるアートビジネスとはどんなものか。こうしたポイントを窓口に、ニューリッチの実像や彼らが登場する時代背景を考えてみたい。

華雨舟さんは1963年上海生まれの改革開放世代
華雨舟さんは1963年上海生まれの改革開放世代

 華雨舟(Hua Yuzhou)さんは、1963年上海生まれの画商で、「華氏画廊」のオーナーだ。日本留学経験があり、改革開放以降の中国美術に関するNHKの特集番組や日本の美術雑誌などの取材を受けたこともある。彼自身が上海ニューリッチを代表するような人物だ。

―― まず、画廊オーナーとしてのいまの仕事についてお聞かせ願えますか。

「ぼくの場合、仕事の分野が結構広いんです。専門は中国の油絵の展示販売ですが、アールデコのポスターの販売や絵の額縁の制作なども手がけています。上海にはグランドハイアットやリッツカールトンなど外資系の高級ホテルが多いので、美術作品を飾る場所もたくさんあり、額縁の需要も多いのです」

―― 本業の画廊の仕事はどうですか?

「ぼくの画廊には専属契約の中国人画家が10人くらいいます。年に何点か作品を描いてもらう。ほかにも数年ごとに契約を更新する画家もいて、これから描く10~20点を丸ごと買い取る約束をし、作品ができたら展示販売をやる。それが本業です」

 中国では画廊オーナーが契約した画家の作品を青田買いするのが一般的だ。その際、投資家に資金を募ることもある。日本のようにアーティストの賃貸料などで画廊を運営するのではなく、オーナーやディーラー、投資家が一体となってアーティストを育て、売り出していくシステムがあるという。

―― 絵を買うのはどんな人たちですか?

「その答えは簡単です。中国でこの10年成功しているのは不動産と株、製造業でしょ。そういうビジネスの経営者たちです。彼らには大きな家があるし、オフィスにも絵を飾りたい。外国にもよく行くので、海外のお金持ちと同じようにやってみたいのです」

―― 彼らの絵の好みや買い方に何か特徴がありますか。

「ぼくは仕事柄よくヨーロッパに行きますが、中国人の文化の素養はまだ低いと感じる。ヨーロッパ人はそれぞれ自分の絵の好みを持っている。だから、絵を買うとき、それが自分の部屋やオフィスに合うだろうかと、じっくり考えて買う。ところが、中国人の場合、どれがいい絵なのか考える前に、財産、投資の一部と見ている」

―― それはどういうこと。

「要するに、絵は株と同じ。株にはリスクがあるが、美術品は持っていれば必ず値段が上がる。そういう意識です。それがいいか悪いかは一概にはいえないのですけれど」

不動産に比べて、リスクがない投資

 上海ニューリッチの美術品に対するいちばんの関心事は、そのアーティストに将来性があるかどうか。すなわち、作品の値段が上がるかどうか、ということだ。

 それは同時に顧客がアーティストとその作品への投資価値を厳しく見ることにつながる。株の銘柄選びと同じように、アーティストの過去の作品の実績(値動き)や将来予測などを詳しく知りたがる。そのためには相応の美術史の理解が必要だが、どこの世界にもコンサルタントはいるもので、華さんがその役割を担っているというわけだ。

 最近では、美術品投資に欠かせない基礎知識として、中国近代美術史を中国銀行の幹部にレクチャーすることもあるという。民間投資家の相談が増えたためだ。中国の金融マンも美術の知識が問われる時代になったのだ。

『一九二九年西湖』。当時の中国の西洋絵画には日本の画壇の影響があるようだ (C)上海国際商品拍賣有限公司
『一九二九年西湖』。当時の中国の西洋絵画には日本の画壇の影響があるようだ (C)上海国際商品拍賣有限公司

 たとえば、ここに1枚の油絵がある。中国人女流画家、關紫蘭の『一九二九年西湖』という作品だ。風光明媚で知られる杭州の西湖を描いたものだ。彼女は20世紀前半、中国近代美術の揺籃期に活躍した画家で、上海中華芸術大学西洋画科を卒業後、1927年に日本留学し文化学院に学んでいる。当時の日本の画壇と交流を持ち、二科展にも入選した。30年代に帰国し、数多くの作品を発表している。

 華さんは語る。「中国の油絵の歴史はわずか100年。新中国成立前、昔の金持ちは海外に西洋美術の勉強に行きました。そのうち3分の1が關紫蘭のように日本で学んだ。戦前の日本には中国にはない優れた美術教育システムがあったからです」

關紫蘭(1903-86)。広東省出身。日本では作家・有島武郎の弟、有島生馬ら油絵画家との親交があった
關紫蘭(1903-86)。広東省出身。日本では作家・有島武郎の弟、有島生馬ら油絵画家との親交があった

 新中国建国後、1960年代までこの国の美術界はロシアから専門家を呼んだ。ロシアの革命芸術、英雄像をいかに描くかが目標になった。そして、80年代。改革開放とともに新しい色彩感覚や感情表現が海外から持ち込まれた。ここから中国の新しい油絵が始まったといえる。

「だから、中国の油絵は描かれた時代によって、いい作品かどうか、ある程度判断できるのです」

政治に翻弄された美術史をふまえ、作品の価値を鑑定するのが彼の仕事というわけだ。

 上海ではいつ頃からこうしたアートビジネスが始まったのか。それは上海で不動産投資が過熱していく1990年代半ば以降のことだ。


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