マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボで最先端を行く石井裕さんに話をうかがって、日米の競争に対する考え方の違いを強烈に感じた。MITでは「誰もやったことがない」というのを評価する。そういう競争の風土からノーベル賞が63人も生まれてくるというのは、すごく日本の社会にとっては分かりやすいメッセージだ。
これに対して日本では、先輩がやったことを改良するような研究が評価される。前例がある研究が許され、逆に人と違うことをやると批判する風土がある。さらに、論文を何本書いたといったようなことを数値化して評価する誤った成果主義がはびこっている。そういうことが、いかにバカらしいかということを、石井さんがちゃんと言ってくださったのがうれしかった。
石井さんの研究分野はIT(情報技術)だが、今までこの分野で日本は第5世代コンピューターもひどい目に遭ったし、トロンの時もダメだった。インターネットでもそうだが、何回も日本は負けている。その理由はイノベーションが生まれる風土がないということにならないか。
日本では学問の領域も「談合社会」だ。病の根は深い。
レールが敷かれ、分かりやすい目標ができると、皆一斉に取り組むことは得意だが、競争の新しいルールというか、土俵自体を作るたぐいの仕事は、日本からは本当に出にくい。その理由が、そもそも評価システムというか風土の違いである。今回の石井さんの話には、そのあたりが分かりやすく出ていた。
新しいアイデアは思いつくだけではダメ、人に伝えて影響を与えることが大事だ。アメリカという文明の特質もあるが、ヨーロッパの人はあそこまではっきりとは表現しない。もう少し日本人と同じように、ナイーブな感じがある。今までアメリカがそういう方法を取ってきたのだが、これからインターネットで世界中が結ばれるグローバルな時代だから、人に考えを明確に伝えるという態度を、皆が身につけなければならない時期に来ている。
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