(文中敬称略)

(上)「高瀬鉄工所」を営む高瀬社長。いつもジャンパーにジャージ姿だ (下)「高瀬鉄工所」と「三重エスカルゴ」の看板が並ぶ
昨年、高瀬俊英(60歳)はガンを患い、胃を全摘出する手術を受けた。術後も抗ガン剤による治療を受けなければならず、絶対安静の毎日が続いた。しかし、高瀬はドクターや家族の目を盗み病院を抜け出し、抗ガン剤治療で意識も朦朧とする中、時間の許す限り「森」に向かった。自らの時間と財産を注ぎ込んで作りあげた「エスカルゴの棲む森」へ。
高瀬は、三重県松阪市で鉄工所を営んでいる。いつもジャンパーにジャージ姿。どこから見ても由緒正しい「鉄工所のおやじ」の風情だ。しかし、彼こそが世界で初めて「ポマティア(ブルゴーニュ種エスカルゴ)の養殖」に成功した人物である。
フランス料理に使われる高級食材として知られるエスカルゴ。本場フランスでは年間3万〜4万トン消費されており、日本でいう“マグロ”のような存在だ。中でもブルゴーニュ種のポマティアは最高級のエスカルゴとされており、本来「エスカルゴ」とはフランス原産のポマティアのことを指していた。
しかし、その現状もマグロと似ている。いや、マグロがエスカルゴと同じ道筋をたどり始めていると言うべきか。乱獲の度が過ぎたこと、自然破壊で棲息する森が少なくなったことなどが重なり、ブルゴーニュ種はほとんど絶滅してしまった。養殖に挑んだ農家もあったが成功には至らず、アフリカ東部原産の「アフリカマイマイ」などを代用品として食すようになった。

(左)これが世界初で養殖に成功した「ポマティア」。生後4カ月で出荷されている。殻は約縦4センチ、幅4センチほどの大きさ (右)これは孵化1カ月後
現在、フランス料理で出されるエスカルゴは、ほとんどがこのアフリカマイマイであり、本場フランスでも、「本物」のエスカルゴであるポマティアがテーブルに並ぶことはない。
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