「ニッポン“働き者”列伝」

ニッポン“働き者”列伝

2007年2月8日(木)

最高級エスカルゴは、三重の鉄工所のオヤジが作る

(高瀬鉄工所の巻:前編)

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(文中敬称略)

「高瀬鉄工所」を営む高瀬社長。いつもジャンパーにジャージ姿だ
「高瀬鉄工所」と「三重エスカルゴ」の看板が並ぶ

(上)「高瀬鉄工所」を営む高瀬社長。いつもジャンパーにジャージ姿だ (下)「高瀬鉄工所」と「三重エスカルゴ」の看板が並ぶ

 昨年、高瀬俊英(60歳)はガンを患い、胃を全摘出する手術を受けた。術後も抗ガン剤による治療を受けなければならず、絶対安静の毎日が続いた。しかし、高瀬はドクターや家族の目を盗み病院を抜け出し、抗ガン剤治療で意識も朦朧とする中、時間の許す限り「森」に向かった。自らの時間と財産を注ぎ込んで作りあげた「エスカルゴの棲む森」へ。

 高瀬は、三重県松阪市で鉄工所を営んでいる。いつもジャンパーにジャージ姿。どこから見ても由緒正しい「鉄工所のおやじ」の風情だ。しかし、彼こそが世界で初めて「ポマティア(ブルゴーニュ種エスカルゴ)の養殖」に成功した人物である。

 フランス料理に使われる高級食材として知られるエスカルゴ。本場フランスでは年間3万〜4万トン消費されており、日本でいう“マグロ”のような存在だ。中でもブルゴーニュ種のポマティアは最高級のエスカルゴとされており、本来「エスカルゴ」とはフランス原産のポマティアのことを指していた。

 しかし、その現状もマグロと似ている。いや、マグロがエスカルゴと同じ道筋をたどり始めていると言うべきか。乱獲の度が過ぎたこと、自然破壊で棲息する森が少なくなったことなどが重なり、ブルゴーニュ種はほとんど絶滅してしまった。養殖に挑んだ農家もあったが成功には至らず、アフリカ東部原産の「アフリカマイマイ」などを代用品として食すようになった。


これが世界初で養殖に成功した「ポマティア」。生後4カ月で出荷されている。殻は約縦4センチ、幅4センチほどの大きさこれは孵化1カ月後

(左)これが世界初で養殖に成功した「ポマティア」。生後4カ月で出荷されている。殻は約縦4センチ、幅4センチほどの大きさ (右)これは孵化1カ月後


 現在、フランス料理で出されるエスカルゴは、ほとんどがこのアフリカマイマイであり、本場フランスでも、「本物」のエスカルゴであるポマティアがテーブルに並ぶことはない。

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著者プロフィール

双里大介(そうり・だいすけ)

双里大介

1968年生まれ。愛知県一宮市在住。「働く」をテーマにしたルポを地道に執筆中。これまで取材した企業は約3000社以上。額に汗して働く名もなき人々の「生きっぷり」を追い続けている。日経ビジネスオンラインで「就活戦線異状なし」と「ニッポン“働き者”列伝」を執筆中


このコラムについて

ニッポン“働き者”列伝

こんな仕事があったのか! そこまで熱意を注ぐのか! 計算や効率からは到底理解できない「働き者」たちを、双里大介が日本中から探し出す。お金、名声、自己満足以外にも、働く理由はあることが、彼らの言葉から見えてくる。

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