「珠玉の人生」

時代を超えた会社を造る人(その4)

サイバーエージェント社長・藤田晋 ―― 最初の恩人

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2007年2月9日(金)

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 藤田さんにとっての恩人は、まず、独立したときの資金援助をしてくれた、現USEN社長の宇野康秀さんである。そして、独立後、サイバーエージェント初の自社商品である、クリック保証型のインターネット広告サービス「サイバークリック」のシステムを開発した、当時オン・ザ・エッヂの堀江貴文さんであり、さらに、さまざまな面で支援をしてくれた、楽天の三木谷浩史さんであろうことは、容易に想像がつく。

 だが、藤田さんの胸の底には、いまだに熱い恩義とともに、生涯拭うことのできない痛みを感じる人物がいる。痛みというのは、その人に対する裏切りである。

藤田 晋氏
藤田 晋(ふじた・すすむ)氏

1973年福井県生まれ。97年に青山学院大学経営学部を卒業後、人材紹介・派遣事業を展開するインテリジェンスに入社。98年に同社を退職し、サイバーエージェントを創業。社長に就任。クリック保証型のインターネット広告などを柱に売り上げを急拡大させ、2000年3月に東証マザーズ上場

 藤田さんは、学生時代にアルバイトをしていた「オックスプランニングセンター(現オックスプランニング)」で、『ビジョナリーカンパニー』(日経BP社)という本に出会うと同時に、ある人と幸運な出会いを果たした。彼の自著『渋谷ではたらく社長の告白』(アメーバブックス)の中で、こう書かれている人物である。

 「私はバイトでありながら経営的な視点を持って仕事をし、会社に接していました。それができた理由はオックスプラニングセンターの創業メンバーである渡辺義孝専務に、人一倍目をかけていただいたからでした」

 入社後、渡辺さんとは、映画にいったり旅行にいったり、プライベートなつきあいもするようになった。この間に、藤田さんは渡辺さんの言葉の中から、将来忘れ得ぬ感動を得ている。それは知名度のない会社が、どんな実績があるのか、と営業先の会社から訊かれたら、どう答えるかと渡辺さんが藤田さんに話す場面である。

 「ハッタリでもいいから、とりあえず実績を口に出して言ってしまって、次に会うときまで本当に実績を作ればいいんだ」

(中略)

 実績を馬鹿正直に言っていたら、実績自体が作れない。苦しいベンチャー企業が、ゼロから何かを生み出すことができる理由を知った瞬間でした。

(中略)

 「おれは営業時代『渡辺くんは口下手だから信頼できる』と言われて受注をもらったんだ。うまく話そうと思うな。自分の言葉でしっかりと考えていることを伝えろ。自然体でいろ。それが自分と商品に対する自信の裏返しなんだ」
 この言葉にはっとさせられました。同じく口が達者なわけではない私は、営業活動において、仕事の交渉において、自分が救われたような気がしました。

(『渋谷ではたらく社長の告白』より)

 このとき渡辺さんから助言されたことを、独立後の藤田さんは、さっそく実行に移している。それは「ウェブマネー」というプリペイドカードによる決済システムの販売代行を始めたときのことである。

 インターネットに詳しくない営業マンである彼らは、雇い主から「これがCGIの組み込みマニュアルだから、(お客さんに)聞かれたらこれで対応して」といわれて営業初日を迎える。

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著者プロフィール

高橋三千綱
(たかはし・みちつな)

高橋三千綱(たかはし・みちつな)

1948年生まれ。74年『退屈しのぎ』で第17回群像新人文学賞、78年『九月の空』で第79回芥川賞受賞。83年『真夜中のボクサー』映画製作。青春小説、恋愛小説、経済小説、ゴルフ小説、時代小説などのほか、漫画の原作もてがける。現在は『週刊パーゴルフ』で「倶楽部チャンピオン物語」を連載中。『ハローマイラブ』『こんな女と暮してみたい』『フェアウェイに見る夢』『明日のブルドッグ』など50冊以上の著書がある。『お江戸の用心棒』(上下巻、双葉文庫)を2月に発売した。公式ホームページはこちら (写真:後藤 究)



このコラムについて

珠玉の人生

人間の本質を観察し続けてきた純文学作家による経営者列伝をお届けします。芥川賞作家のフィルターを通した経営者の「珠玉の人生」。そこから見えてくるのは、これまでの経済ジャーナリズムとはひと味違う、新しい世の変革の姿です。

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