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I:「日経ビジネス」では売れなかったスーツ

  • 伊藤 美恵

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2007年3月2日(金)

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 私の仕事は、「アタッシェ・ドゥ・プレス」です。この職業をお聞きになったことはありますか?

 私が考える「アタッシェ・ドゥ・プレス」は、この短い連載の最後にお話しすることにして、まずは私の昔話をお読み下さい。この仕事が「あ、こういうものなのか」と、初めて自覚した瞬間のお話です。

山本耀司とダーバンの新ブランドをPRする

エファップ・ジャポン 学長 ワグ 代表取締役社長 伊藤美恵氏 (写真:峯村 隆三)

エファップ・ジャポン 学長 ワグ 代表取締役社長 伊藤美恵氏 (写真:峯村 隆三)

 友人であるデザイナーの山本耀司さんが、あるとき私に向かってこんな話をしました。

「美恵さん、僕は今まで仕事をしてきて“直球”というものを投げたことがないんだ」

 何を言っているのか、私にはすぐには分かりませんでした。

「いつも変化球で生きてきた。このあたりで、世の中に対して直球を投げてみたい」

 耀司さんの言わんとするところは、こういうことでした。

 ――これまで僕は、男物のスーツというものを否定してきた。デザイナーとしてスーツを手がけることは生涯ないと思っていた。ジャケットとパンツは作るけれど、それはあくまで“変化球”、普通の会社員がそれを着て仕事に向かえるようなデザインではなかった。しかし、ここでまっすぐの球を投げて勝負したい。

 耀司さんの目指すところは、本格的なスーツブランドの立ち上げでした。すぐさま私はスーツメーカーとして最大手のダーバン(現・レナウン(3606))にこの話を持って行き、耀司さんとの間を取り持ちました。

必勝メンバーが揃ったはずのA.A.R

 当時、ダーバンでは、大学生をメインターゲットとするスーツブランドの立ち上げを画策していたことから、スムーズに事は運び、山本耀司の新ブランドはスタートしたわけです。

 その名もA.A.R(アール)。Against All Risksの略。名づけ親は耀司さん。もともとは保険業界での用語のようですが、耀司さんの中ではもうひとつの意味があったようです。

「今まで変化球を投げてきた男が直球で挑むということは、とても大きなリスクだ。しかし、自分はそこに立ち向かっていく。すべてのリスクは承知のうえでね」

 でも、後に取材などでその名前の由来を聞かれると、「僕は今までヨウジヤマモト=YYで、(50音順でもアルファベット順でも)いつも最後の方に名前が載るので、たまにはAで始まる名前にしたかった」なんてはぐらかしていましたけど。

 A.A.Rがいよいよスタートする段になり、専任のPR担当は誰にするかという話になりました。すでに耀司さんの会社には有能な「アタッシェ・ドゥ・プレス」がおり、セクションも充実していましたが、このダーバンとの「A.A.R」ブランドのようなライセンス仕事の場合、「ヨウジヤマモト」ブランドや「ワイズ」ブランドのアタッシェ・ドゥ・プレスに動いてもらうわけにはいきません。

 さて、どうしようかとなったとき、耀司さんはこう言ってくれました。

「美恵さんに任せたい」

 この話をまとめたのは私ですし、企画の段階から契約に至るまでそのすべてに立ち会ってきました。そこに耀司さん直々のご指名です。断る理由は見つかりませんでした。

 スーツ市場で圧倒的な力を誇るダーバン、日本のデザイナーズブランドブームの牽引者であり、世界のファッションシーンでも高い評価を勝ち取っている山本耀司が、共同で若い世代向けのスーツを展開する――、業界関係者はもちろん一般メディアでも非常に注目を集めたA.A.Rでした。

問題はないのに、成果が出ない!

 が、実は最初の2年間は正直申し上げて、これといった販売実績を上げることができなかったのです。

 私も関係者も頭を抱えました。販売不振の原因がよく分からないのです。

 耀司さんがデザインしたスーツの出来は素晴らしいもので、しかもこれまでの彼のブランドに比べればはるかにお値打ちで手の届きやすい価格帯に抑えられていました。広告宣伝費も潤沢に用意し、新聞や雑誌などに大量出稿しました。

 商品にも、広告宣伝戦略にも問題がない、とするならば、ダーバンのスタッフとの組み合わせがまずかったのか。いえいえ、むしろ逆でした。ダーバンの方々は、山本耀司のデザインにおける思想を非常に正確に理解し、山本耀司のイメージを壊さずにライセンス製品を作り、メディアに露出させていました。

 チームとしてのまとまりも申し分ない。まさに問題のかけらも見えなかったのです。

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