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II:ミーハー心こそ、伝えるカギ

  • 伊藤 美恵

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2007年3月9日(金)

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 山本耀司さんとダーバンが組んで立ち上げた新ブランド「A.A.R」のPRと広告を任された私。しかし、スタートしてから2年間は思うような実績がまったく上げられませんでした。

 このブランドが対象としていたのは若いビジネスマンであり、何と言っても一番最初にターゲットとすべきは就職を控えた大学生、でした。ところが、いざPRや広告を展開しようとする段になって、もっと上の層が中心読者である「AERA」や「日経ビジネス」に出稿してしまったのでした。

デザイナーにとっては想定外の媒体

 そこまで分かれば、やるべきはPRや広告をお願いする雑誌を変えることです。私が選んだのは、マガジンハウスの若者向け情報誌「POPEYE」でした。しかし、その提案は、すんなりと受け入れられたわけではありません。

「何で僕が『POPEYE』なの?」

エファップ・ジャポン 学長 ワグ 代表取締役社長 伊藤美恵氏 (写真:峯村 隆三)

エファップ・ジャポン 学長 ワグ 代表取締役社長 伊藤美恵氏 (写真:峯村 隆三)

 耀司さんの最初の反応は思ったとおりでした。「POPEYE」はメジャーな雑誌ですが、掲載されているファッションのテイストや内容からすると、これまでの山本耀司の世界と重なる部分はほとんどありません。同じマガジンハウスの媒体だったら、圧倒的に「BRUTUS」が掲載媒体として適切だったわけです。だから私も最初は「BRUTUS」を掲載誌に選んでいたのでした。

 しかし、今、A.A.Rが開拓しようとしている顧客と市場を考えたら、ここはぜひ「POPEYE」に広告やPRを掲載しなければなりません。なんとか耀司さんを説得しなければ…。

 とはいっても、他のスタッフたちは、頭の中では私の提案を受け入れていたものの、直接耀司さんにもの申せる人はいません。私がなんとか説得するしかない。耀司さんとは古い仲ですが、このときばかりはかなりの時間を説得に費やしました。

 最後には「分かった。美恵さんに任せるよ」という耀司さんの言葉があり、ようやくGOすることができました。私の言葉にどれだけの説得力があったかは分かりません。それまでに築いてきた耀司さんと私の信頼関係によるものが大きかったのではないかと思っています。

 「POPEYE」の編集タイアップページは、それまでA.A.Rが使っていたモデルのイメージではなく、いわゆる「POPEYE」的な、新卒と同世代の若いモデルを配して、スタイリストもそれに見合った人を起用して構成されました。

 そして発売日。正直言って、賭けでした。「POPEYE」読者に山本耀司とダーバンが組んだこの新ブランドの魅力が伝わるだろうか? 不安が頭を何度もよぎりました。

PR戦略を変えただけで、2年の不振を一気に挽回

 しかし――。ふたを開けてみれば、なんといきなりの大ヒットです!

 A.A.Rのスーツは、店頭で見る間に売れていきました。商品そのものは、何も変えず、変えたのはPR戦略のみ。見せるメディアと見せ方が変わるだけでこれほど売り上げも変わるのか! 自分自身、びっくりでした。なんと2年間でクリアできなかった売り上げ目標を一気にクリアしたどころか、予想を大幅に上回る成績を残したのです。

 ずいぶん遠回りしましたが、かくしてダーバンと山本耀司のコラボレーションによるブランドA.A.Rは、本来獲得したかった顧客と出会うことができたのです。

 なぜこんな遠回りをしてしまったのか。それは皮肉にも、ダーバンの方々があまりに「優秀すぎた」ところに原因の一端がありました。

 スタッフは、みなさんファッションのプロ、スーツのプロですでに大きな実績を上げてきた優秀な方々ばかり。当然、山本耀司の発する提案を素早く理解するセンスと、実現できる技術を持っていました。しかしその結果出来上がった商品を、これまでの「孤高」のイメージを崩さぬように、山本耀司的世界から発信されたものである、という点を強調してPRしたがために、肝心のユーザーとの間に見えない溝ができ、彼らに商品情報が届かなくなってしまったのです。

 それを気づかせてくれたのは、私の内なるミーハー心でした。すなわちお客の視線です。

 売れない理由をいろいろ考えているうちに、自分が一消費者の視点でA.A.Rを見たときに、魅力的なブランドとして映っているだろうか。届いていないとしたら、それはどうしてなのか……。

 そう、山本耀司とダーバンという「プロ」の間に立った私は、あえて「ミーハー=一消費者」に立ち返って、考えてみたのです。そこで気づいたのでした。せっかく山本耀司が一般向け商品を作ったのに、お客さんになるべき人にこの商品の情報が届いていない、と。

 プロの魂と、お客さんのミーハー心の間に立つ――。私が「アタッシェ・ドゥ・プレス」の仕事の意義を自覚したきっかけとなる仕事でした。

単なる「広告」「広報」では伝わらない

 ここまででお話ししたとおり、「アタッシェ・ドゥ・プレス」は、単なる広告、広報やPR担当だけにはおさまらない仕事です。

 消費者側のミーハー心と、作り手のプロの魂の両方を理解して、双方を結びつけること…。

 ただ、そうは言っても言葉としては「PR」「広報」「宣伝」「プレス」などの方がなじみがあるし、そのイメージに引っ張られますよね。そこで、日本で普通に使われている「PR」や「広報」「プレス」と、私が考える「アタッシェ・ドゥ・プレス」がどう違うのかを、お話ししてみたいと思います。

コメント1件コメント/レビュー

私はNYでハイファッションのPR会社をやっているものです。とても参考になりました。NYのPRは日本と違ってやりがいがありますが、日本の企業(特に大きければ大きいほど厚い壁)の日本の固い上下関係などの見えないものがありそうで、大変だと思います。NYは逆に人種差別があります。日本とNYとのビジネスの差は国際PRをするにあたって、面白いテーマになっています。では。また購読させていただきます。www.blackandwhitefashion.net(2007/11/20)

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いただいたコメント

私はNYでハイファッションのPR会社をやっているものです。とても参考になりました。NYのPRは日本と違ってやりがいがありますが、日本の企業(特に大きければ大きいほど厚い壁)の日本の固い上下関係などの見えないものがありそうで、大変だと思います。NYは逆に人種差別があります。日本とNYとのビジネスの差は国際PRをするにあたって、面白いテーマになっています。では。また購読させていただきます。www.blackandwhitefashion.net(2007/11/20)

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