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V:ファッション業界に見るアタッシェ・ドゥ・プレスの功罪

  • 伊藤 美恵

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2007年3月30日(金)

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 私は、ファッション業界を中心に「アタッシェ・ドゥ・プレス」の仕事をやってきました。もともとファッションデザイナーでありブティックの経営者であったというのも大きな理由ですが、もうひとつはファッション業界が特別アタッシェ・ドゥ・プレスの仕事を広げやすい分野だった、ということもできます。

エファップ・ジャポン 学長 ワグ 代表取締役社長 伊藤美恵氏 (写真:峯村 隆三)

エファップ・ジャポン 学長 ワグ 代表取締役社長 伊藤美恵氏 (写真:峯村 隆三)

 企業がメディアに情報を載せてターゲットの消費者に届ける方法は、2種類あります。ひとつが、アタッシェ・ドゥ・プレスが行うPRであり、もうひとつが、宣伝部がお金を出してメディアの枠を買い取る広告です。

 日本の企業社会においては、PRよりも広告の方が、メディアを通した告知手段としては圧倒的に主流でした。それは、外部で業務を受託するPR会社と広告代理店の規模の差を見れば一目瞭然です。

 ただし、唯一、アタッシェ・ドゥ・プレスによるPRが広告に負けないほどメディアを活用した告知手段となっている産業分野が、日本にもあります。ファッションの世界です。

日本はファッション誌の数で世界一

 ファッション雑誌をご覧ください。売れ行き好調の雑誌には広告もどっさり入っていますが、雑誌の大半を占めるのは、さまざまなブランドを紹介した「編集」のページです。潜在顧客が手に取る雑誌の編集ページに自社の商品を魅力的なかたちで紹介してもらえるかどうか。各社のアタッシェ・ドゥ・プレス担当者の腕の見せどころ、です。

 なぜファッション業界だけがアタッシェ・ドゥ・プレスの活躍の場が大きくなったのか。それは、世界にも類を見ないほど、日本でファッション雑誌市場が発達したことが大きいでしょう。

 ファッション業界において、アタッシェ・ドゥ・プレスの仕事の主戦場は、数多くあるファッション雑誌です。日本のファッション雑誌の種類の多さは世界に類を見ません。世代別で見ても、ジャンル別で見ても、数え切れないほどの雑誌が存在します。そのうえ、プロの私たちでもフォローできないほどの新刊雑誌が今でも毎年創刊しています。

 ちなみにファッション先進国のイタリアでもフランスでも、日本ほどファッション雑誌の種類はありません。ちなみに、フランスの「madameFIGARO」はファッション雑誌ではなく、女性向けの情報誌ですが、同誌の日本版である「madameFIGARO japon」はバリバリのファッション雑誌です。

 日本でファッション雑誌が発達したのは、おそらく1970年前後からでしょう。「an・an」や「non・no」が創刊された頃です。それから日本も豊かになり、ファッションに敏感な若い人々がたくさん現れ、新進気鋭のデザイナーも次々に世に出てきました。

雑誌と業界の利害関係が一致した

 この頃から、メディア=雑誌と、ファッション業界の“共犯関係”が生まれます。雑誌の方では、読者が注目してくれる新しいブランド、新しい商品を記事のかたちで一刻も早く紹介したい。ファッション業界の方でも、消費者に自分たちのブランドや商品を一刻も早く、しかも広告のようにお金をかけずに告知したい。

 かくして両者の利害関係は一致し、ファッション雑誌には、各ブランドのアタッシェ・ドゥ・プレスが貸し出した洋服が載って記事になる、というのが定番となったのです。その後、ファッション雑誌とファッション業界は相互補完しながら発達してきます。

 結果、日本は世界に冠たるファッション大国となり、年代別そしてジャンル別に実に細かくセグメントされた無数のファッション雑誌が書店を飾るようになりました。

 こうなると、ファッション業界のアタッシェ・ドゥ・プレスの仕事は実に楽です。

 なにせ、自分のブランドと傾向の似た雑誌と仲良くして定期的に商品を貸し出して記事にしてもらうだけで、ターゲットと定めた消費者に商品の告知ができるからです。メディア(ファッション雑誌)の多様化が究極まで進んだおかげです。

 ただし一方で、問題が起きました。ファッション業界のアタッシェ・ドゥ・プレスが、「頭を使わなくてもこなせる仕事」になってしまったのです。

 ファッション業界ほどメディアの多様化が進んでいない世界では、企業は、自社商品をターゲットと定めた消費者にどうやって告知し、魅力を理解させ、購入行動に結びつけてもらうか、独自にマーケティングを行い、商品開発に結びつけ、最適のPR手法を編み出そうと知恵を凝らします。メディアの選定からニュースの出し方まで、さまざまなノウハウが必要となります。

日本のプレス担当者の力はこうして失われた

 ところが、日本のファッション業界のアタッシェ・ドゥ・プレスは、あまりにファションメディアが多様化し、しかも各ブランドと各メディアとの関係が強固になったがために、自分自身でマーケティングしたりPR手法を編み出したりする機会がどんどん減ってしまったのです。

 その結果――。前にもちょっとお話ししましたが、今の日本のファッション業界のアタッシェ・ドゥ・プレスというと、自社のプレスルームに新作の洋服を並べ、関連雑誌からオーダーがあるとその洋服を貸し出す、ただの「洋服貸しのお姉さん」と化しているケースが少なくありません。

 私の主宰する学校「エファップ・ジャポン」の生徒の中にも、そんな「貸し出しのお姉さん」になりたくて学校に入ってきた、という人がいたりします。

コメント1件コメント/レビュー

ファッション誌がどれも同じに見える、わかります。だってどの誌も購買層の設定がほぼ一緒でしょう。これから少子化だし本も売れなくなっているし、ファッションwebもありますから、もっと競争が激しくなり多様化するかなと期待しているのですが、製造業とちがってニッチが商売にならないところが課題でしょうか。いま私は39歳ですが、同年齢の奥様と同じような服を着ると、オフィスで違和感があります。だいたい若い子の流行でない服を買うのも大変なくらいですから、流行っているもののうちオバサンが着ても許されそうなものを探して、手持ちと組み合わせる苦心の毎日です。40代でフルタイムで企業に勤めている人が着れるものを載せたファッション誌なんか、できたらうれしいのですが。もちろんGとかFとかみたいな息の止まるような値段じゃないものを。(2007/03/30)

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ファッション誌がどれも同じに見える、わかります。だってどの誌も購買層の設定がほぼ一緒でしょう。これから少子化だし本も売れなくなっているし、ファッションwebもありますから、もっと競争が激しくなり多様化するかなと期待しているのですが、製造業とちがってニッチが商売にならないところが課題でしょうか。いま私は39歳ですが、同年齢の奥様と同じような服を着ると、オフィスで違和感があります。だいたい若い子の流行でない服を買うのも大変なくらいですから、流行っているもののうちオバサンが着ても許されそうなものを探して、手持ちと組み合わせる苦心の毎日です。40代でフルタイムで企業に勤めている人が着れるものを載せたファッション誌なんか、できたらうれしいのですが。もちろんGとかFとかみたいな息の止まるような値段じゃないものを。(2007/03/30)

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