「茂木健一郎の「超一流の仕事脳」」

褒められることで「学習」は完結する

〜盲導犬訓練士・多和田悟〜

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2007年4月17日(火)

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 成功体験を経て、初めて学習は完結する。それは脳科学的にみて事実である。今回お話を伺った盲導犬訓練士の多和田悟さんが言われていたように、盲導犬の訓練の過程で「No」は最後に「Yes」と言うための1つの段階として使うというのは、脳の強化学習のメカニズムから言うと納得のいくことだ。

 最後に褒められてドーパミンが出て、それで強化学習が完結する。このメカニズムというのは、それこそラットあたりから人間まで基本は変わらない。犬もそこは全く同じだなと思った。

 多和田さんがおっしゃっていたことで面白いのは、盲導犬にとっては仕事が褒められる「ゲーム」になっていることだ。人間の脳で言うと、前頭眼下皮質というところが、オンとオフというか文脈の切り替えをやっているのだが、当然進化の中でその原型は犬の脳の中にもある。目の不自由な人をガイドをするためのハーネスという器具を装着することで、まさにオンとオフが切り替わっている。

 ある方向へ行くことが、そのひと自身の喜びであるようにする。しかも科学的に。それが学習において大事なことである。そういう面では、案外人間と犬とはそう距離はない。特に犬と人間の共通点というのは、どちらも社会的な動物だというところだ。

 人間も案外シンプルなんだ。言語という面では複雑だけれども、感情とか記憶とか行動とかがどう決まっているかというと、案外シンプルな規則で行動が決まったりしている。それを後付けで複雑な言語で説明しているというところがある。お互いに人間同士が相手をこういうふうにしたいと思っている時には、案外通じるところがあると思う。

 動物のことをよく知っているというのはそれだけ、自分の道具箱の中に道具が増えるということだ。理屈とか規則とかだけで人をひっぱっていこうとすると、やはり無理がある。なぜなら人間も動物的なところがあるわけだから。

 上司に人望があるかどうかは、動物的にその人が好きかどうかで決まっている部分が多い。それが分かっていないとダメで、案外人間ってそういうふうに動いているところがある。人間の中の動物というか。それは大事なポイントだと思う。

 組織論にしてもマネジメントにしても、どれくらい思考のツールを持っているかで、その人の豊穣さが決まってくる。

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イヌは人生のパートナー
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4月17日(火)午後10:00〜10:44
・再放送
 総合 毎週火曜 午前1:05〜1:49
     (月曜深夜)
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 世界的にも、その名を知られる一1人の盲導犬訓練士がいる。多和田悟(54歳)。映画にもなった盲導犬・クイールをはじめ、これまで200頭以上の盲導犬を育ててきた。国際盲導犬学校連盟が認めた世界で16人しかいない査察員の1人でもある。
 
 多和田は「魔術師」との異名をとる。どんなやんちゃな犬も、その手にかかれば、たちまち喜んで従う。秘密は、「犬語を話す」という多和田の犬への接し方。一瞬の表情の変化も見逃さず、犬の心を読み解く。そして「グッド」という褒め言葉を巧みに使い、犬を楽しませながら教えていく。
 
 現在、多和田は、横浜市郊外にある盲導犬訓練士学校で責任者を務め、学生の指導と盲導犬の育成を同時に手がけている。今年2月、多和田は、学生たちとともに、1人の視覚障害者に盲導犬を引き合わせる作業に臨んだ。期間は3週間。多和田たちは、無事、盲導犬を引き渡すことができるのか?
 
 人の命を預かる盲導犬を育成する多和田の現場に密着、その流儀に迫る。


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著者プロフィール

茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)

茂木 健一郎

1962年、東京都生まれ。東京大学大学院卒業。「クオリア(感覚質)」を手がかりに、脳と心の謎に挑む新進気鋭の脳科学者。現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。



このコラムについて

茂木健一郎の「超一流の仕事脳」

毎回、1つの分野で超一流の仕事をしている人物を追うNHKのテレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」。キャスターを務める脳科学者の茂木健一郎氏が、番組を通じてその人物から受けた刺激をさらに深く考察して語るコラム。

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