成功体験を経て、初めて学習は完結する。それは脳科学的にみて事実である。今回お話を伺った盲導犬訓練士の多和田悟さんが言われていたように、盲導犬の訓練の過程で「No」は最後に「Yes」と言うための1つの段階として使うというのは、脳の強化学習のメカニズムから言うと納得のいくことだ。
最後に褒められてドーパミンが出て、それで強化学習が完結する。このメカニズムというのは、それこそラットあたりから人間まで基本は変わらない。犬もそこは全く同じだなと思った。
多和田さんがおっしゃっていたことで面白いのは、盲導犬にとっては仕事が褒められる「ゲーム」になっていることだ。人間の脳で言うと、前頭眼下皮質というところが、オンとオフというか文脈の切り替えをやっているのだが、当然進化の中でその原型は犬の脳の中にもある。目の不自由な人をガイドをするためのハーネスという器具を装着することで、まさにオンとオフが切り替わっている。
ある方向へ行くことが、そのひと自身の喜びであるようにする。しかも科学的に。それが学習において大事なことである。そういう面では、案外人間と犬とはそう距離はない。特に犬と人間の共通点というのは、どちらも社会的な動物だというところだ。
人間も案外シンプルなんだ。言語という面では複雑だけれども、感情とか記憶とか行動とかがどう決まっているかというと、案外シンプルな規則で行動が決まったりしている。それを後付けで複雑な言語で説明しているというところがある。お互いに人間同士が相手をこういうふうにしたいと思っている時には、案外通じるところがあると思う。
動物のことをよく知っているというのはそれだけ、自分の道具箱の中に道具が増えるということだ。理屈とか規則とかだけで人をひっぱっていこうとすると、やはり無理がある。なぜなら人間も動物的なところがあるわけだから。
上司に人望があるかどうかは、動物的にその人が好きかどうかで決まっている部分が多い。それが分かっていないとダメで、案外人間ってそういうふうに動いているところがある。人間の中の動物というか。それは大事なポイントだと思う。
組織論にしてもマネジメントにしても、どれくらい思考のツールを持っているかで、その人の豊穣さが決まってくる。
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