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その自信、本物ですか?

  • 遥 洋子

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2007年5月11日(金)

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 講演をしていると、そこに足を運ぶ人たちの思惑が見えて興味深い。基本的に講演は、ビジネス戦略や、体験記、もしくは市民啓発ものなどに分類される。私なりにそれらは、さらに「保守系か革新系か」に分けられると思っている。ここで言う保守系か革新系かはいわゆる政治的なそれとは関係ない。

 保守系は昔から言われ続けてきたことを自分なりの追体験でもって再構築する。やっぱり人を救うのは愛だ、とか、伝統文化の素晴らしさとか、健康の大切さとか。これらに反発を覚える人はほぼいない。

 だが革新系は違う。その人の人生において何か新しい発見をして、従来の常識に異論を唱える。例えば、ガンと戦うなという発想や、地球温暖化の嘘という視点などがその類だろうか。

 常識派にとってみれば、まったく新しい見方を提示されたようなものだから共感する人と反発する人に分かれやすい。私の場合は、人生ひとりも悪くない、とか、介護から逃げたっていい、という主張だから後者の部類だ。これは、夫婦が一番と思っている人や介護を真正面から背負ってきた人にとってみれば間逆の発想だから反発も必至だ。

 楽屋に現れたのは客席にいた60代の主婦だった。

 「私、遙さんの講演で胸がドッキーンといたしましてね」と甲高い裏声で喋り始めた。それはその女性の介護体験だった。姑は、娘よりも嫁である自分のほうに心からの笑顔をむけた。夫も、「母のお前への笑顔は心からのもの」というから、自分は介護を背負った。世の中にはこういう嫁もいることを、今後の講演内容に入れてほしい、と私に要求した。

 察するに、彼女が言った「ドッキーンとしましてね」は、つまりは「あなたの話に自己否定されたような気分になって傷ついた」ということで、彼女の要求とはだから、「そんな私を癒すために今後は話の内容を変えると約束してほしい」ということだ。

 私は「はいはい。そうしますね」と言って女性に早々にご退出いただいた。もちろん今後だって、話は一切ひと言たりとて変えるつもりはない。

 私の見方はこの女性の逸話ひとつでも違う。娘より嫁に笑顔を向ける姑がいたら、「人生最後まで嫁に気を使った姑」と読む。この笑顔は本物だと言う夫がいれば、「妻に老母の介護をさせるのにおだて上手な男性」と読む。そしてわざわざ楽屋にまで来て主張した女性には「あなたは素晴らしい、と常々言ってもらわないと容易に壊れる脆弱な自己評価」を読む。

 この女性は嫁の役割を引き受けたのだから、貞淑な“出来た”嫁だ。だが私には、他者批判を一切許さない高圧的な女性以外の何者でもなく映る。
私の「はいはい。そうしますね」とはだから、「はいはい。あなたは立派」ということだ。

 もちろん私はそういった生き方を“批判”したわけではない。それよりも、そんな“立派”な人間になれず自己嫌悪で苦しんでいる人に「落ち込まなくてもいいよ」と伝える。

 「あなたはあなたでいいんだよ」というちょっとベタで恥ずかしいほどのメッセージだ。

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