• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「育てる」とは「時間を投資する」こと

~調教師・藤澤和雄~

  • 茂木 健一郎

バックナンバー

2007年5月15日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 競走馬の調教師である藤澤和雄さんのお話には、「人を育てる」「能力を引き出す」といったことがらについて深い示唆があった。藤澤さんの調教で特徴的なのは、それぞれの馬を目いっぱい走らせて鍛えるのではなく、実力の劣る馬も強い馬と一緒に走らせる「馬なり」の方法にあるという。

 それぞれの馬が競走しているのではなく、一緒に走っている。しかもその時に、実力が劣るものが強い馬と一緒に走ることによって、実力を引き上げてもらえる。強い方が先に行ってしまうと、弱い馬は走ることから脱落してしまう。人生でもそういうことはたくさんある。

 その視点から見れば、能力別学習(学級)などは問題がある。そこで脱落したものはオレはだめなんだとあきらめてしまう。一緒に走っていると思えば、実力の劣るものもそこで引き上げてもらえる。変に階層を作ってしまうのは危険だというのは、納得のいく話だ。それこそ公務員なんかは、1種、2種とか最初から階層を作ってしまう。それでは一緒に走れなくなる。

 「馬なり」というのは関係性と自発性に基づいて、能力を開発することである。だから「人なり」というのもあるはずだ。この方法は合脳的でもある。一緒に走ることで能力を引き出してもらえるというのはたいへん深い話だった。

 言葉がしゃべれない馬に対して、藤澤さんは、触ったり話しかけたりするアプローチを取る。実は言葉が通じていると思っている人間でも、頭では分かっているが体が動かないというようなことはよくある。

 人間も案外、馬と同じように言語化できない様々なところで、どれくらい成長できるかが支配されているという面がある。だから、馬を調教する時に必要な気配りと同じような気配りが、人間を育てる時にも必要なんだと考えさせられた。

 子供のことを考えてみると、こうした方法が有効だとみんな納得する。実は大人同士でもそんな感じがする。無意識や身体などがからむようなことは、無理もさせられないし、時期が来ないと開花しないし、強制しようとするとかえって悪いことになる。要するにやる気がなくなってしまうし、燃え尽きてしまう。

 我々は他の動物と人間の間に差があると思ってしまう。実は当然ながら共通点がかなりある。人間は「やれ」と言えばやるし、「態度を改めろ」と言えば改めると思う。実は、そうは問屋が卸さない。無理はさせられないというのは、生き物としては本質的なところで、できないことはできないのだ。

次ページ >>

未来を見据える者が勝つ
NHKの番組サイトへ
NHK総合テレビ
5月15日(火)午後10:00~10:43
・再放送
 総合 毎週火曜 午前1:05~1:49
     (月曜深夜)
 総合 毎週火曜 4:05~4:49
 BS2  毎翌週水曜 午後5:15~5:59
番組公式サイト
本・CD・DVD紹介サイト
 競馬界の革命児と言われる調教師・藤澤和雄(55)。その独自の調教術で、次々と競馬界の記録を塗り替えてきた。10年連続の年間最多勝、有馬記念3連覇、そして海外GI制覇……、その実績はまさに断トツだ。調教師は、馬主から預かった馬をトレーニングするほか、出走するレース選びや騎手の選択、レースの作戦にまで関わる。その強さの秘密は目先の「一勝」より、馬の「一生」を重視し、地道に練習を積み重ねること。一戦負けても、そこから馬の実力を見極め、将来に生かす。その結果が、毎年のトップクラスの成績となって表れると藤澤は言う。
 
 この春、藤澤のもとでは2頭の有力馬が大レースに挑んでいた。度重なるアクシデントが藤澤を襲う。だが藤澤は、大胆な決断で、勝負のレースに立ち向かっていく。勝つか負けるか。厳しい世界を生き抜いてきた藤澤、その最強の流儀に迫る。


「茂木健一郎の「超一流の仕事脳」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「タイム・トゥ・マーケット」で売らないともうからない。

栗山 年弘 アルプス電気社長