今回、お話を伺った装丁家・鈴木成一さんの、「ブックデザインには正解があるはずだ」という信念に感銘を受けた。本来、「価値」といういうものは相対的なものだと思う。ある本の装丁にしても、人によって評価は違うし、好き嫌いの違いもある。Aさんにとって良い本の装丁が、必ずしもBさんにとって良いとは限らない。
しかし、作る側がそういう相対的な価値観で作っていてはいけない。何か正解があるはずだ、何か絶対的な基準があるはずだ、究極のターゲットがあるはずだと信じてやるということが、結果としてクオリティの高い仕事につながる。
ものを作る人にとって、座右の銘とすべき、大きなことだったと思う。
得られるお金と仕事の質は比例しないということが分かっていながらも、仕事の質を最高のものにしようとする人がプロフェッショナルなのだろう。そうせざるを得ない衝動のようなものが、人間の中にある。適当に済ませるのがイヤだという気持ちがある。これは不思議なことだ。
どんなに1つの仕事にエネルギーを費やしても、時間を費やそうと、貰うお金は同じ。あとは目的を達するに必要なだけの時間と労力を使うのがプロフェッショナルの基本的な構造だ。波頭亮の「プロフェッショナル原論」に書いてあることと全く同じだ。
本の装丁というと、どうしても包装紙というかパッケージのような気がしてしまう。実はそうではなく、作品の本質を理解して、それを一般読者と仲立ちする形で表現するものだと鈴木さんは言う。以前に話を伺った佐藤可士和さんも全く同じことを言われていた。
おそらく一人ひとりの生き方においてもそうなんだろう。自分を飾ったりするのではなくて、自分自身の本質を見つけ、それを社会との接点において表現していく。このことが、結果として、最終的には自分を生かす道なんだと思って聞いていた。
逆に言うと、奇をてらわないで自分の本質は何かをよく理解しないといけない。
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