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ものづくりに斬り込む意志強固な人(その6)

サキコーポレーション社長・秋山咲恵――大手からの誘い

  • 高橋 三千綱

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2007年6月22日(金)

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 サキコーポレーションが最初に開発した、プリント基板の検査装置の試作機は、ソニーボンソンに持ち込まれた。

 この会社は、ソニーの100%子会社で、埼玉の製造工場では、当時若者の間で絶大な人気のあった、ウォークマンをつくっていた。

 ここの工場での製造ラインは、完全なオートメーションだった。ウォークマンの心臓部門である、微少な部品が載ったプリント基板も、30秒に1枚のスピードでできてくる。

 ところが、この基板の品質検査だけは、1個1個、人の目で行われていた。しかも、それは、できあがった基板を、いったん別室に運び込んで、テーブルに並んで座った人たちが、いっせいに検査するというやり方だった。

 それに別室で後から検査しても、不良品を選別する仕事しかできず、場合によっては、生産ラインのある箇所で、全部同じミスが発見されて、全てがやり直しになることも発生する。それでは、検査の意味がない。生産ラインと同じスピードで検査できる、自動検査機を設置できれば、不良品の生産を未然に防ぐことが可能になる。

秋山 咲恵氏

秋山 咲恵(あきやま・さきえ)氏

1962年生まれ。奈良県出身。87年京都大学法学部卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。94年、松下電器産業の研究者だった夫の秋山吉宏とともにサキコーポレーションを設立。代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)に就任。政府税制調査会委員、経済産業省の「中小企業政策審議会」委員などを歴任。

 当時、既にほかのメーカーの自動検査装置はあったが、スピードが遅かった。具体的には、エリアセンサーカメラでプリント基板の1センチ四方のエリアをコマ撮りし、その画像を解析していく作業なのである。この検査に基板1枚当たり1分かかった。オートメーションでつくり出される基板は30秒でできても、その検査には1分かかっていたのである。それでは、オートメーションの生産ラインに検査装置を組み込めない。そこでラインが滞ってしまうからである。

 「検査機のスピードを生産ラインと同じ、1個30秒にする。それは、不良品を見つけるのではなく、不良品をつくらない検査装置につながる」

 サキコーポレーションの事業コンセプトは明確になった。

 だが、企画書は書けても、それを商品化する方法が分からない。たったひとりの技術開発担当の吉宏さんは、ロボット研究や、コピー機の画像処理技術に携わっていたが、産業用機器を手がけた経験はなかった。

 「センサーカメラでコマ撮りしていくやり方ではなく、ラインスキャン機構で、一括して撮像し、処理すれば、画像を取り込む時間は劇的に短縮する」

 理屈では可能のはずだったが、それを製作して、しかも商品化するのは、容易なことではなかった。それに、12年前のその頃は、まだパソコンの処理能力も高くなく、メモリー能力も乏しく、プリント基板をスキャンするときの照明にも指向性の問題があって、外観検査には向いていないといわれていた。

 だが、吉宏さんに撤退は許されなかった。

 「プリント基板の検査速度を、半分に短縮する検査機の完成」

 をめざして、技術開発に没頭した。競合する企業は、オムロン、松下電器産業、日立製作所、NECなど、世界に名だたる一流企業だ。そのジャイアンツ群に向かって、吉宏さんの孤独な作業が始まった。

 15平方メートルのオフィスで眉間に皺を寄せて、設計図を見つめる日々が続いた。ときには、咲恵さんに手伝わせて、装置のネジを締めてもらったり、油をさすようなこともさせた。

 この間、それまでやっていた、受託設計の仕事はすべてやめた。吉宏さんの収入はなく、社長である咲恵さんに、一切をゆだねていた。

 夫が製造開発に没頭する間、咲恵さんは資金繰りをする傍ら、会社の事業計画をもって投資会社を回り、企画書を携えて企業を訪れていた。プリント基板の自動検査装置のマーケットは必ず大きくなるし、自分たちが開発に成功したとき、どう会社を発展させていくか、その先行きを見据えて、根回しに奔走していたのである。

 吉宏さんの開発した、検査装置のプロトタイプは、1年もかからずにできあがった。画像処理するためのソフトウエアもつくった。

 「フィールドテストは、うちの工場でやればいい」

 そうソニーボンソンの工場長からいわれていた。咲恵さんは夫とともに、200キロある試作機を、ソニーボンソンの工場に運び入れた。そこで吉宏さんは検査機を組み立て、設置した。

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