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公的サービスに「お客さま」はいますか?

  • 渡邉 美樹

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2007年7月12日(木)

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 学校教育、病院、福祉・介護、そして農業。ここ数年で私は日本の主な公的サービス分野で事業を展開してきました。

 それぞれの分野で既得権益を持っているインサイダーからすると、私は一種の“破壊者”に見えるようです。というのも、私が、各分野の抱える構造的な問題点について何の遠慮もなく情け容赦なく批判し、そして改革を実践しているからです。

 なぜ、実践できるのか。それはおそらく、私が経営者としてのキャリアを外食産業からスタートさせたことと無縁ではないかもしれません。

ワタミ代表取締役社長・CEO 渡邊 美樹氏

ワタミ代表取締役社長・CEO 渡邊 美樹氏

 外食産業の市場は行政産業が幅をきかせる公的サービス分野とは対極にあります。
何の規制もない。役所が出てくることもない。徹底的な自由競争、究極の市場経済、そんな環境下でライバル同士がノーガードで殴り合いをしている。これが外食産業の現実です。

 ヒットした先行者がいればすぐにライバルが真似をして、後を追う。看板もそっくり、内装もそっくり、メニューもそっくり、というのが当たり前。

 また、外食産業は歴史が新しいせいか、お役所や政治家の出る幕がほとんどない。「もの真似ビジネスが横行して、あまりに過当な競争が起きている。何らかの規制が必要ではないか」という話が「官」や「政」のサイドから出たこともない。これはこれで問題なのですが、このノーガードの殴り合いの自由競争のおかげで、日本が世界でダントツの外食王国になったのは間違いありません。やはり「官」だの「政」だのが余計な手出しをしないほうがいいのです。

 というのも、外食業界がこの自由競争で得た恩恵は、そのまま消費者にもたらされる恩恵でもあるからです。ライバル店より1人でも多くのお客さまにご来店いただきたい。1円でも多く売り上げたい。1店でも多く出店したい。その飽くなき競争心が、メニューの種類を増やし、料理のクオリティを上げ、接客を向上させ、店内をぴかぴかにし、そして価格を下げ、チェーン展開をスピーディにさせました。

ちょっとの味の変化が、敏感に数字に出る

 何の規制もない市場では、イノベーションが非常に出やすくなります。消費者の要求水準がどんどん高くなり、それに合わせて企業が工夫を重ね続けるからです。結果、お客さま自身が消費者として成熟し、さらに高い水準の商品やサービスを企業に求める。企業はそれに応えるべく、必死に企業努力をする。このサイクルがイノベーションを生み、新しい商品、新しいサービス、新しい業態を生むのです。

 何がいいたいのか。自由競争の市場経済で企業を育ててくださるのは、そして、よい商品・よいサービスを生む原動力となるのは、結局、お客さま=消費者なのだ、ということです。

 ワタミの例でご説明しましょう。

 創業当時、「つぼ八」のフランチャイズとしてスタートしたとき、私は、居酒屋業界で先駆けて、お店のスタッフがおしぼりを両手で持ってお客さまにお出しする、ひざまずいてオーダーを聞くというサービスを始めました。ほんの小さな工夫です。お店にいらしたお客さまに対する感謝の心をサービスで体現したかったのです。ところが、この小さなサービスを始めたと同時にすぐに売り上げが伸びました。ワタミの「つぼ八」がやっているこのサービスを知ったリピーターのお客さまが増えたからです。

 お客さまはメニューについても敏感に反応します。

 ワタミグループのお店には毎日10万人以上のお客さまが来店しますが、お客さま100人につきどのメニューが何食出たかを私たちはすべてデータに取ってあります。すると、こちらのメニュー改善が、そのまま数字に反映されることがすぐにわかるのです。

 たとえば、それまで普通のかつおだしの素を使っていたのを、ちょっと頑張って枕崎のかつおぶしにしてみたとする。すると、そのだしを使ったメニューの数字が確実に上がっていく。特にお客さまに知らせてなくても、です。「前より、何かうまくなってるぞ」と、お客さまの舌がかつおだしの素と高級かつおぶしのだしの違いを見抜くのです。

 日本の消費者の舌はここまで進化しているのです。信じられないでしょう? でも、ほんとうなのです。こんなこともありました。冷凍した鶏肉を使っていたフライドチキンをフレッシュな鶏肉に代えたときのことです。揚げ方によってはたいして味に差は出ないはずなのに、売り上げはやはり確実に伸びました。

 こうした数字を見て私は確信しました。お客さま相手に、絶対に手を抜くことは許されない。手を抜いたらそのときうちの商売は終わる、と。

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