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学校の生徒は「お客さま」なのか? 投資とサービスの違い

  • 渡邉 美樹

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2007年7月19日(木)

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 自分の考えはできるだけ直接、自分の言葉で伝えたいと考えている私ですが、しばしば曲解されている、と思うことがあります。

ワタミ代表取締役社長・CEO 渡邊 美樹氏

ワタミ代表取締役社長・CEO 渡邊 美樹氏

 実は、とりわけ学校教育において、私の言葉がやはり曲解されている、と感じる部分があります。それは、私が使う、「生徒は学校にとってお客さま(消費者)である」という言い回しです。

 これに対し、学校の生徒を「お客さま」と呼ぶことに違和感がある、いやはっきり不適切ではないか、という意見があります。その心は、「生徒を“お客さま”と定義してしまうと、教育現場で教師が生徒にへつらってしまうのではないか。表面的な人気取りに走ってしまうのではないか。それは結局、生徒のためにならないし、本質的な教育とはかけ離れてしまうのではないか」ということでしょう。

 おっしゃるとおりです。未熟な子どもたちにこびへつらい、「お客さま扱い」するような学校教育に未来はない、と私も思います。

説明不足を反省します

 おや、渡邊はまさに「お客さま扱い」しろといった意味で「生徒は学校にとってお客さまである」と発言してきたのではないのか? 違います。私がいう「お客さま」とは、「お客さま扱い」しろ、という話とはまったく異なるのです。

 私は、外食事業であろうと、学校その他の公的サービスであろうと、すべてはお客さまのためと考え、お客さまを幸せにし、より多くの「ありがとう」をいただくべく努力するという姿勢に、何の違いもないと考えています。

 けれども、居酒屋の「お客さま=消費者」と、学校の「お客さま=生徒」には、「サービスの性質」と「幸せのかたち」において、大きな違いがあるのも事実です。この点をこれまできっちり説明してこなかったことに関しては、素直に反省したいと思います。

 では、ここで改めて、私が考える「生徒=お客さま」の定義について説明します。

 最初に、お客さまの立場について考えてみましょう。
 居酒屋の場合はシンプルです。お客さまは店内にいる時間、気持ちのいい飲食のサービスを受け、楽しい雰囲気を味わう。そして対価を支払い、店を出る。そこでお店のサービスに対する消費活動は完結するわけです。つまり、居酒屋のお客さまが受けるサービスはその瞬間で完了し、お客さまの立場は一方的にサービスを享受するという意味で受け身であり、客体的な立場であるといえます。通常の消費活動における「お客さま」の立場は、いずれも同じでしょう。

 対して、学校の生徒はどうでしょう。
 学校教育サービスを受ける、という意味では、学校にとって生徒は「お客さま」かもしれません。けれども、居酒屋のお客さまと異なるのは、生徒の場合、学校から受けた教育サービスを元手に、自らが成長することが目的であるという点です。そう、生徒は本来、学校教育を客体的立場でただ「消費」するのではなく、学校教育を主体的立場で「吸収」し、自らの未来に生かしていく。そのために学校で教育を受けているのです。

 それに居酒屋で飲食するのと異なり、学校教育のサービスの結果が出るのは、学校で授業を受けたその瞬間ではありません。教育の効果が子どもたちに現れるのは、いつかわからぬ自分の未来においてです。

教育は「消費」ではなく「投資」

 その意味で、教育を受ける、という行為は「消費」より、むしろ「投資」に近いと思います。消費はお金を払ったその瞬間に完結しますが、投資の結果が出るのはあくまで未来においてですから。

 では、なぜ私は生徒を「お客さま」と呼ぶのか。それは、学校と教師に、自分たちが教育サービスに従事する仕事についているんだ、ということを自覚してもらうためです。あなたたちの仕事は生徒という「お客さま」を幸せにするためにあるんだ、ということを心の底から理解してもらうためです。

 私は、学校と教師に、自分たちの生徒にこびへつらい、「お客さま扱い」しろ、といったことは一度もありません。そんな扱いは結局生徒たちのためにならないし、生徒たちの幸せにつながらないからです。

 ですから、生徒を「お客さま」と考え、彼らが将来幸せになるため最高の教育を届けよう、というのと、生徒を「お客さま扱い」し、甘やかしスポイルする、というのは、言葉面は似ていても180度逆のお話なのです。そして私が進めている教育改革は、もちろん前者のほうなのです。

コメント38件コメント/レビュー

たとえば一人前の社会人を育てるのか、個性あふれる社会人を育てるのか、など学校教育に対する期待は様々です。その現場の基本的な考え方を「お客様」という言葉で表現されたと思います。それまでと違う概念で言葉を使えば真意を伝えるのはかなり難しく誤解がでるのは当然のことです。それを承知で議論の場を提供されたのだと思います。やるならとことんやってください。ぜひ私立学校を全国に増やしその精神を受け継いだ若者が増えることに尽力ください。表現は違いますが、同じような信念で学校を経営されている方も多いと思います。国に頼らないなどと言わないで、その方たちの力を併せて文部科学省の役人の政策を変えないと不毛の戦いが続くでしょう。使った言葉の言い訳より、そちらの意見をお聞きしたいと思います。(2007/08/23)

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いただいたコメント

たとえば一人前の社会人を育てるのか、個性あふれる社会人を育てるのか、など学校教育に対する期待は様々です。その現場の基本的な考え方を「お客様」という言葉で表現されたと思います。それまでと違う概念で言葉を使えば真意を伝えるのはかなり難しく誤解がでるのは当然のことです。それを承知で議論の場を提供されたのだと思います。やるならとことんやってください。ぜひ私立学校を全国に増やしその精神を受け継いだ若者が増えることに尽力ください。表現は違いますが、同じような信念で学校を経営されている方も多いと思います。国に頼らないなどと言わないで、その方たちの力を併せて文部科学省の役人の政策を変えないと不毛の戦いが続くでしょう。使った言葉の言い訳より、そちらの意見をお聞きしたいと思います。(2007/08/23)

内容を拝見して、やはり「お客様」という言葉遣いは不適切であろうと思いました。言葉は得てしてひとり歩きするものであり、それは「原爆しょうがない」がひとり歩きしたのと同じ事です。久間前防衛大臣の発言が不適当だと思うのなら、「生徒お客さま発言」も撤回すべきではないでしょうか。(2007/07/30)

ワタミのことほとんど知りませんでしたが、この記事を読み、強く心を動かされました。連載してくださった日経ビジネスに感謝。(2007/07/27)

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三品 和広 神戸大学教授