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「官」のしあわせの行き着く果ては

  • 渡邉 美樹

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2007年8月30日(木)

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 私たち民間企業は、「お客さまは神様」と思って仕事をしております。

 少なくとも私はそうです。そのくらい真剣にお客さまの幸せを考えて、商品やサービスを開発し販売していかなければ、お客さまに喜んでいただけませんし、企業としても生き抜いていけませんから。

 では、「官」の仕事は? 自分たちの仕事はすべて国民の幸せのためにある、ということを前提として働く。それが「官」の仕事でしょう。「官」のことを「公僕」ともいいますね。公の僕である、という意味です。まさにこの言葉に「官」の仕事の本質が託されている、と思います。

ワタミ代表取締役社長・CEO 渡邊 美樹氏

ワタミ代表取締役社長・CEO 渡邊 美樹氏

 ところが実態はどうでしょうか。
「官」の仕事、そして「官」が仕切っている仕事の大半は、国民のためよりも、自分たちの権益を守るため、という側面が非常に強くなっているのではないでしょうか。

 学校組織は生徒より教師のため、病院と医療制度は患者より医師のため、農業政策は国民より農家のため、そしてそれぞれを束ねている「官」の息のかかった組織のためのものになってはいないでしょうか。

 最終的には、彼らを票田としている政治家のため、彼らの組織を天下り先としている役人のためのものになってはいないでしょうか。

 ここ数年、立て続けに明らかになった企業の業界ぐるみの不祥事を見てください。

 たとえば、原子力発電所の事故隠し。生命保険と損害保険の保険金未払い問題。どちらの不正も極めて悪質で、しかも長年にわたって行われてきました。片や国民の命にかかわる原子力の事故の隠蔽。片や保険金をお客さまに支払っていない、という自らの業態そのものを否定しかねない詐欺的行為。どちらも国民の立場に立てばれっきとした「犯罪行為」です。

 しかも、どちらにも共通するのが、「官」の世界にきわめて近い業界である、ということ。「官」が競争させずに保護政策をとり、その代わりに天下りも含め、手を握ってきた業界です。「官」の世界に近いのであれば、こうした不正を見抜くことはもっと早くできたのではないか、と思いたくなりますが、残念ながら、いまやこうした不正というのは「官」との癒着がセットだったりするケースが少なくないのです。

 ただし、本来国民のためにあるはずの「公的サービス」に属する業界や組織が、いつのまにか国民の幸福を犠牲にしてまで守られてきた、という現状がそのまま続くとは到底思えません。

 それに、私は思うのです。そんなところで働いていて、本当に楽しいのですか、やりがいを感じるのですか、と。

「公的サービス」に守られると、過重労働になる?

 実際、本連載や、書籍(『もう、国には頼らない。 経営力が社会を変える!』)で取り上げている教育、医療、介護、農業の現場で、仕事にやりがいを覚えている人はどれくらいいるのでしょう。

 いいんだよ、やりがいなんかなくても。楽で、お金が入って、ストレスもなくて。

 そうおっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。でも本当にそうでしょうか。官に守られてのんびりしていられたはずの、こうした「公的サービス」分野の仕事の現場は今、人手不足と過重労働で青息吐息、というケースが少なくないのです。

 大手病院では大変な医者不足、看護師不足に陥っているという話が珍しくありません。真面目な医師が過労死したり、自殺したりする。

 介護や福祉の世界では、施設の人間が障がい者を虐待して捕まった話がニュースになっていますが、裏にあるのはこちらもやはり低賃金と過重労働です。

 学校もしかり。教師の心身症問題は、現場でしょっちゅう耳にします。

 農家はといえば後継者不足と過疎化に悩み、そのうえ価格対策でせっかく実った作物を泣く泣く捨てたりしているありさま。農地は生産調整や後継者不在で、荒れ果てるばかり。

 皮肉な話です。「官」に保護されて、市場の暴力にさらされないはずの仕事の現場が、甘い汁をすすっているかと思えば、さにあらず。自分で自分の首を絞めてつらくなっているのです。

 なぜそうなるか。理由はふたつ。

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