(前編から読む)

伊藤ウロコ 専務取締役の伊藤嘉奈子さん(写真:山田 愼二)
商品開発に向けて伊藤ウロコの伊藤嘉奈子さんが着目したのは、伝統を引き継ぐゴム長靴という製品を、今の時代の築地にフィットしたものにすることだった。「まずはサイズ展開です。多くの人に履いてほしいので、お客様の声を聞きました。十文半(25.5センチ)という標準サイズから、29~30センチまで幅広いサイズの商品を揃えました」と伊藤さんは言う。
もともとウロコ印の長靴はやや細身で格好がいい。しかし体格のいい今の男性からは、「俺は足が太くて入らないんだよ」と言われることもある。こういう声を聞くと、デザインを損なわないように「太型」「極太」のサイズも作った。
かつてはぬかるみを歩いたゴム長が、今はコンクリートの上を歩く。脂にも強い素材でないといけないので、当然ゴムの配合も以前とは違ったものになる。マグロ屋の現場で使えるように、先に芯を入れてつま先を保護する「安全大長」も工夫した。
「祖父の時代のゴム長は、1種類か2種類でもよかった。でも今は、それだけではやっていけない。『なぜ俺のサイズがないの?』と言われれば、それを解決していくしかないんです」

祖父の時代、会社が「伊藤ゴム」だった頃
幸いにもゴム長の開発をしている時、協力者たちに巡り合えた。しかし、すべてを人任せにできない伊藤さんの性分は昔から。技術者やお客の生の声を自ら聞き、自分で動くのが跡取り娘のやり方だ。伊藤さんが意見を言うと、「それじゃあ、工程に無理がある」と、製造担当からダメ出しが出ることもある。ゴム長の屈曲テストは、伊藤さん自ら何度も履いてみて、工夫を重ねた。
特に、衛生管理対策が厳しくなってきた現状に合わせて開発した白のゴム長には苦労した。「ビニール製の白ではなく、ゴムでいいものを作りたい」。しかし、コストが高くつく。
しかし「白のゴム長はいつか作らなければと思っていたし、白が欲しいという相談も受けていたので、思い切って生産に踏み切りました」と伊藤さん。幸い市場の大卸の会社が「うちは全部白にする」と一括注文してくれたので、今は受注生産をしていると言う。
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