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小鳥たちが消えていく国、日本

「鳥トウ商店の巻」(前編)

  • 双里 大介

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2007年7月30日(月)

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 小鳥たちはどこへ行ってしまったのだろう。


 ペットショップの主役は犬や猫になり、小鳥を置いていない店も多くなった。軒先に鳥カゴを吊り下げている家も、今ではめっきり見かけない。

父・富男は小鳥の餌となる小松菜をきざむ

父・富男は小鳥の餌となる小松菜をきざむ

 今日も藤松勝康(39)のもとに電話が入った。遠く離れた九州からの問い合わせ。母親であろうその女性は言った。「子どもに小鳥を買ってあげたくても、近所には売ってなくて」。

 誰にも気に留めてもらうこともなく、知らぬ間に小鳥たちは“売れないペット”になっていた。「もう小鳥では食べていけない」。多くの繁殖家が廃業し、町の小さな鳥獣店は次々とシャッターを降ろし始めている。

 「ウチも食べていくだけで精いっぱいです」と勝康は苦笑する。小鳥のヒナは1羽500円程度。高くて1000円に届くか届かないか。1匹10万円を超える売り値の犬や猫に比べたら、儲けは微々たるものだ。それでも、勝康は時代の片隅に追いやられようとしている小鳥を懸命に育てていこうと決めている。

 国道155号線は、愛知県西部を縦横断する幹線道路だ。交通量の多いこの道路沿い、愛知県津島市に「鳥トウ商店」はある。行き交う車の陰に隠れるかのように、古びた木造の鳥小屋が建っている。車の音をかき分けて耳を澄ませば、文鳥、セキセイインコ、オカメインコ、ジュウシマツ、錦華鳥、カナリア…1000個以上並ぶ鳥カゴの中からは、さまざまな種類の小鳥たちのさえずりが聞こえてくる。

 勝康が鳥トウ商店で働くようになって5年が過ぎた。小鳥の繁殖から販売までを手がけるこの店は、1969(昭和44)年に父の富男が開いた。当時、ペットショップの主役は文鳥やインコといった小鳥たちであり、多くの家庭の軒先に鳥カゴが吊り下げられていた。“鳥は儲かる”。脱サラしての挑戦だった。

 高度経済成長で少しずつ豊かになっていく毎日を実感できた時代。小鳥を飼うことは、豊かさの象徴だったのかもしれない。テレビがきた。冷蔵庫がきた。ボーナスが増えた。食卓のおかずが1品増えた。子どもたちのためにと父が買ってきた小鳥のさえずりが、小さな幸せを祝福してくれていた。

 しかし、その後、小鳥たちは時代や社会の変化に翻弄されていくことになる。

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