• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

人も小鳥も“居場所”を探して

「鳥トウ商店の巻」(後編)

  • 双里 大介

バックナンバー

2007年7月31日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

前編から読む)

 勝康は高校を中退している。特別にワルだったわけではない。高校1年生の時は無遅刻無欠席。2年生では進学クラスへ。数学や生物といった理数系が大好きな高校生だった。

 ただ、生活指導の教師との折り合いが悪かった。学校の行き帰りに呼び止められては、引っ張られ、叩かれた。今でも殴られた理由はよくわからない。理由がわからないから、その教師と顔を合わせることが怖かった。次第に学校から足が遠のいていく。高校3年生の新学期を迎えることはなかった。

 その後は、喫茶店でコックを5年、パブの店長を10年以上勤めた。結婚して子どもも生まれた。35歳のとき、夜の仕事から昼の仕事へ変わることを決意した。しかし、何度も書類選考ではねられた。学歴を持たない35歳の男が居場所を見つけるのは、想像以上に厳しかった。

 働かないわけにはいかない。父の店に入ったのは、ある意味「仕方なく」だった。数年ぶりに足を運んだ鳥小屋には、自分と同じように居場所を見つけられないでいる小鳥たちがいた。

 勝康にとって、小鳥は同じ境遇に暮らす同志なのかもしれない。時代に取り残された。社会の最後方で食うだけで精いっぱいの生活を続けている。それでも、確かに生きている。命が宿る。

 競争に負けたものは、その命までも切り捨てられなければならないのか。

ヒナにとって人間は親代わり。1日数回に分けて餌をやり、手乗りにする

ヒナにとって人間は親代わり。1日数回に分けて餌をやり、手乗りにする

 採算ギリギリの八方塞がりの商売。餌さえも切り詰めて商売を営んでいる繁殖家がほとんどだ。当然、ヒナの間引きも行われる。育つ見込みのないヒナは、生まれてすぐ容赦なく殺される。1円にもならない鳥を育てる余裕はない。情け容赦は、自分の首を絞めることになる。

 でも、勝康にはできない。殺せない。間引きした後、商品にならないと判断したヒナを小さな箱に取り分け、育てる。知人の繁殖家から言われた。「餌ひと粒も大切な金だ。わかっているのか」。わかっていないわけじゃない。自分は甘いのだろう。でも、殺すことにはどうしても意味を見いだせない。人は何かを生み、何かを育てるために生きているのではなかったか。

 殺すことよりも生かすことを。命ある物へのやさしさを。未熟に生まれたヒナは、たぶん、それほど長くは生きられない。せめて与えられた生涯をまっとうするまでは、他のヒナたちと同じように、餌を食べさせてあげたいと勝康は思う。

コメント10件コメント/レビュー

私も以前は小鳥が好きでしたが、いつの間にか犬や猫ばかり意識するようになって小鳥に興味を持たなくなっていることに、この記事を読んで初めて気付きました。そんな人、結構多いのではないかと思います。手がかかるとか、余裕が無いと変えないのは犬や猫も同じです。どうして小鳥が飼われなくなったのか、もっと深い分析を読んでみたいと思いました。(2007/11/29)

「ニッポン“働き者”列伝」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

私も以前は小鳥が好きでしたが、いつの間にか犬や猫ばかり意識するようになって小鳥に興味を持たなくなっていることに、この記事を読んで初めて気付きました。そんな人、結構多いのではないかと思います。手がかかるとか、余裕が無いと変えないのは犬や猫も同じです。どうして小鳥が飼われなくなったのか、もっと深い分析を読んでみたいと思いました。(2007/11/29)

ほんの十数日、丁寧に育てるだけでこんなになつくとは・・子供のために飼いだしたのですが、二ヶ月目になって、つい子供が7月に逃がしてしまいました。かごから出してほしくて芸を繰り出す姿や、呼べば指まで飛んでくるのが可愛くて、ゴメンなさい。もう、今日注文したら明日届くようなインターネット通販で、しかも1500円でとても安価で購入してしまいました。これでは、業者はまったく儲かりませんね。でも、親ばかりなついていた先代のを見て、うちの子供たちは図書館から4冊も関連本があるぐらい研究熱心です。近いうちにブームになるような途方もない価値があると確信しています。(2007/08/06)

子どもの頃飼っていたセキセイインコのことを思い出しました。家族でヒナから育て、手乗りにし、家族の一員として一緒に過ごした日々。2羽以上で飼うと人間の言葉を覚えないと言われ、ずっと1羽で飼い続け(今思うと人間の勝手なエゴですが・・・)、その1羽が死んでもまた新しい1羽を飼い、代々「ちーちゃん」という名前で可愛がっていました。兄とのケンカの最中、籠から出ていたその鳥を誤って踏みつけてその命を奪っていまい、一晩中泣き明かしたこともありました。いつしかそんなことも忘れてしまっていましたが、この記事を読み、懐かしい日々が蘇ってくると同時に、その経験が私に「命の尊さ」を教えてくれた大切な「学びの場」だったのだと、痛切に感じました。人間に弄ばれてしまう「命」の数が年々増えているように感じます。今はその「命」の中に別の人間の「命」も多く含まれてきている・・・。私が経験できたような「学びの場」が失われつつあるのでしょうか。(2007/08/01)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

リクルートは企業文化そのものが競争力です。企業文化はシステムではないため、模倣困難性も著しく高い。

峰岸 真澄 リクルートホールディングス社長