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CSR解体新書(5)米国の物まねから決別を

EUに徹底して学び、その盲点を突け!

2007年7月30日(月)

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 ネットバブルは危険な夢、その崩壊は近いと、EU(欧州連合)がほぼ見切りをつけた2000年春先頃、米国や日本は何をしていたのでしょうか?

 ほとんどのメディアが手放しで「ニューエコノミー」を礼賛していました。リスクへの真剣な取り組みが決定的に欠如していたのです。それからエンロンやワールドコムの破綻まで3年とかかっていません。

 そしてこれらの大型経営破綻を追いかけるようにして、日本にCSR(企業の社会的責任)がブームとして導入された。それが日本へのCSR導入の実際でした。それでもライブドアや村上ファンドの不祥事が表沙汰になるまで、まだ数年がかかっているわけです。どうやら日本の内外にはずいぶん温度差がありそうです。

EUの政策の主体的な役割を演じる「リスボン戦略」

 リスボン戦略発表当時の経緯は、とても印象深いものでした。というのも、この2000年の4月から、私はIT(情報技術)革命対応で作られた東京大学の情報部署に着任して、全科類の1年生向けに「情報処理」科目を教え始めたからです。

 法学部、経済学部に進む学生たちにもコンピューターを教えなければならないので、理工学以外の情報関連記事を細かにフォローし始めました。すると、講義を始めた4月早々に「IT革命は終わった」「EUはリスボン戦略で知識社会対応へ」ときたのです。

 東大のような腰の重い大学が、ようやく情報部署を立ち上げた頃には、「世界は第1期IT革命の終焉を迎えてしまったか!」。

 生ぬるい日本の情報環境対応に、頭から冷や水を浴びせられる思いがしました。

 日本側の、とりわけ大学セクターの無策と比べて、リスボン戦略は大変秀逸なものに映りました。

 ネット経済の膨張は危険なバブルでもあること、そうしたリスクを本質的に回避するための方策としての持続社会化。ポスト産業資本主義社会での知識構造化と知識価値社会化、恒常的なイノベーション、すなわち基幹競争力の確保と、そのための人材育成への本質的な取り組みの必須不可欠性…。

 リスボン戦略は、こうした時代の要請を、国ならびに企業の役割を明確にしつつ基本的にカバーする、品格ある危機管理意識を持ったものに見えました。

 これに対して、米国流のITマネジメントはNASDAQ急落後も「ニューエコノミー礼賛」に終始していて、美辞麗句があちこちで謳われ、日本でもそれに追随する論調が圧倒的多数を占めていたと思います。

 一言で言うなら、日本という国は、EUのリスボン戦略以後も、村上ファンドの商いが可能だった国なのです。こうした事例がすべてを端的に示していると言ってよいでしょう。

大学も企業も欧州型の危機意識に欠ける

 この2000年の夏から、私は大学内外でイノべーション政策の議論に参加するようになりました。私は小宮山宏・東大工学部長(当時)、松島克守教授、藤末健三・元助教授(現・民主党参議院議員)などに誘っていただいて、様々なタスクフォースのメンバーになりました。

 筋のよい情報を最初に得ていたので、私は問題の所在を容易に理解できて、ラッキーだったと思います。半面、改めて周りを眺めてみると、大学の先生も役人も企業人も、大半の人が欧州型の危機管理認識を持っていないのに、大変驚きました。

 自分自身が専門分野の技術開発力をお持ちの、大学の先生方は、ご自分の研究だけにもっぱらご執心です。イノベーション政策指導の重要性や、リスク回避の議論には興味が薄い。と言うか関心がほとんどない。

 自分の学部や研究グループに予算がつくか否かがもっぱら重要で、それ以外に首を突っ込もうという人すら、ほとんど存在していない。まあ、研究者は一般に人様のことには興味が薄い。当然と言えば当然です。

 かつて「専門のタテ穴」がどうとか「専門バカ」がどうした、と主張した世代の方が、みごとに蛸壺にはまっているのが観察できて興味深く思いました。良くも悪しくも大学とはそういう本質を持つ場所なのだと思います。

 またある種の官僚や企業担当者は、技術の中身を完全にブラックボックスにしたまま、経済効果の話だけでイノベーションを判断、評価しようとしていました。これには大変危険なものを覚えました。

 技術の実体を認識することなくITの美辞麗句を臆面なしに掲げてくるニューエコノミー礼賛。テクノロジーに立脚する「転ばぬ先の杖」がなければ、経済は転んで当然です。

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