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書店革命に挑む不思議な魅力の人(その1)

ジュンク堂書店社長・工藤恭孝 ―― 26歳の社長

  • 高橋 三千綱

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2007年8月3日(金)

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 ジュンク堂書店は、全国に27の書店を持っている。日比谷プレスセンター内にある書店だけ、例外的に小規模だが、ほかの店は、床面積が300坪を超す大型店である。池袋店などは、その最たるもので、地下1階、地上9階、床面積は2000坪で、そのビルが丸ごと本屋さんである。

 全国に2万店あるといわれている書店だが、そのほとんどは坪数が30坪程度の店で、経営は厳しく、毎年、1000店舗は店を畳んでいるといわれている。物書きを生業としているものにとっては、心寂しい限りだが、その中で躍進を続けているジュンク堂の奮闘ぶりは、頼もしい限りである。魂を込めて、声援を送りたい。

 その書店を率いている工藤さんは、昭和25年生まれの57歳。不思議な魅力を持った方である。

 大胆であるが細心な神経を持ち、無頓着そうだが、物事の背後に潜む本質を、冷徹な眼差しで見つめている。一見、腰は低いが、信念を曲げることはない。その魅力の中には、どこかとらえどころのない性格も含まれている。

工藤 恭孝氏

工藤 恭孝(くどう・やすたか)氏

1950年兵庫県出身。72年に立命館大学法学部を卒業後、父親が経営していた書籍取次店のキクヤ図書販売に入社。76年にジュンク堂書店を設立し、社長に就任。現在、大型店舗を中心に鹿児島から盛岡まで全国で27店舗を展開している。

 例えば、工藤さんが神戸三宮で開いたジュンク堂の1号店は、343坪あり、30坪程度が標準だった当時の書店の10倍の規模があった。相当な意気込みで開いたのだろうと思いきや、

 「それだけ広いところしか、貸してくれなかったのです。100坪程度の、駅前とか立地条件のよい店舗は、大手の本屋か、地元の実績のあるところが優先されて、うちのような本屋は初めてというところには、物件がまったくきませんでした。大型店だけが、ほかがやらなくて見つかったのです」

 それで、うまくいったのかというとこれが全然だめだったという。

 「私は社長ということになってましたけど、まったくの素人。本のことなど何も知らない。一緒にやり出した連中も、同年代ということもあって、遊び感覚でやっていた。『週刊プレイボーイ』が人気になっていたので、これを書店の入り口にドーンと積み上げて置いたけど、2冊しか売れなかった。広い本屋だったら、それだけ本が売れるだろうと思ったけど、まるで駄目でしたね」

 書店経営は3000万円の資金で始めたのだが、瞬く間に資金が足りなくなり、2億円を兄の会社から追加で融資してもらった。それも、最初の1年間で、1億円を使ってしまった。

 兄は、父の興した会社を引き継いでいた。26歳の工藤さんが独立する形で書店の社長になったとき、父の叔父が副社長として「キクヤ図書販売」を切り盛りしていた。書店を始めるにあたって、その叔父から、独立するようにすすめられた。

 「ぼくが父の会社に入社して半年後に、父が脳溢血で倒れたんです。最初の5年間は、会社には出てこられなかった。それでぼくは好きなようにやれたんですね。入社と同時に父がいないというラッキーな人生を送っているのです」

 すました顔で、人を喰ったようなことをいうので、どこまでが本心だか分からなくなる。この取材は、9階建ての、ジュンク堂・池袋店の隣にある、小さなビルの一室で、行われたもので、そこが東京のヘッドクォーターになっていた。女子社員が働く中に、社長の工藤さんも混じっている。社長室はなく、デスクも女子社員の横にあった。

 つまり、気取らない人なのである。父が脳溢血で倒れてラッキーだった、といういい方は、工藤さんのあっさりとした気質がいわせているので、父への情は厚くて深いものがあったと私は推測している。

 実は、私は三宮店に、自作の著書の売り込みにいったことがある。出てきた工藤さんは、歓談のあと、私と文芸担当の女子社員を、お好み焼き屋に連れて行ってくれたものだった。ジュンク堂・京都店ができたのはその後のことで、そこでは私の著作のコーナーを設けてくれた。工藤さんには、そんな一面がある。

 父親のことを話してもらった。

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