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書店革命に挑む不思議な魅力の人(その3)

ジュンク堂書店社長・工藤恭孝――343坪の書店って、何?

  • 高橋 三千綱

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2007年8月24日(金)

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 父親に、半ば命令、半ば助けられる形で「キクヤ図書販売」に入社した工藤恭孝さんだったが、働きだしてすぐに、会社の先行きが決して明るいものではないことに気がついた。

 仕事は版元から卸された雑誌、書籍類の梱包をといて、軽自動車に乗せて兵庫県内の書店に配達する、というのが主なものだった。

 その相手先の本屋は、薬局や駄菓子屋を兼ねている兼業小売り店で、ほとんどが中高年の夫婦だけで商いをしていた。

 そこへ月末に集金にいくと、

 「息子はあとを継ぐ気はないようだし、そうなると、いずれ、この店はたたむことになるねえ」

工藤 恭孝氏

工藤 恭孝(くどう・やすたか)氏
1950年兵庫県出身。72年に立命館大学法学部を卒業後、父親が経営していた書籍取次店のキクヤ図書販売に入社。76年にジュンク堂書店を設立し、社長に就任。現在、大型店舗を中心に鹿児島から盛岡まで全国で27店舗を展開している。

 と、店主が溜息混じりにつぶやく。都会に出た息子にしてみれば、こんなところでは、食っていけへん、と見限っているのである。

 書籍の卸問屋をしているキクヤ図書販売にしても、本音は小さな兼業書店を相手にするのではなく、100坪程度の大きな書店と取引をしたいのである。だが、そういう大書店や紀伊国屋などの全国にチェーン店を持っている書店は、東販、日販、そして関西なら大阪屋などの大手の取次店が押さえている。2次問屋であるキクヤ図書販売には手がだせない。卸し価格の競争になったら、とても太刀打ちができないのである。

 たとえば、大手なら、価格の77%の建値で卸せるものを、2次問屋ならば、東販などを通すので、85~90%でしか、卸せない。取り次ぐ書籍の量の違いが、そういう差を生み出すのである。

 兼業書店の先行きの暗さは、ストレートにキクヤ図書販売にはねかえってくる。

 「自分が50歳でその仕事を始めていれば、あと10年もてばいいと思ったかもしれませんが、22歳の将来ある身にしては、10年では困ると思った」

 恭孝さんが入った頃の会社の年商は、20億円に達していたが、利益となると数千万円だった。一方、兄・俊彰さんの入社した「ブックローン」の方は、毎年250億円の売り上げをあげていて、孫の代まで従業員みんなが食える程の金を溜め込んでいるといわれていた。実際、設立から8年目のその頃までには、すでに、相当額の資産を築いていた。

 「それだったら、私が遣ってやろうと思ったわけです。本屋の開店資金が必要になったからです。つまり、キクヤでは大書店に卸せない。それなら、うちの会社で書店をだして、チェーン店化してキクヤから卸せばいいじゃないかと思ったんです。目標は10店舗。単純な発想なんですよ」

 さっそく、1号店にふさわしい場所を探しだした。入社1年後のことだった。もっとも、それも資金の裏づけがあるからできることだ。入社して半年後に父が倒れ、会社は叔父が仕切っていたので、反対はなかった。

 「小売り書店は儲からないようにできている」

 が持論の父が元気だったら、その企画は恐らく通らなかっただろう。

 30坪が書店の全国平均の広さだったが、恭孝さんは、100坪の店舗を考えていた。モデルとなったのは、当時神戸元町にあった「日東館書林」のような書店だった。こうした本屋は駅前にあり、相当繁盛していた。

 「独特な店をつくろうという思いも、本屋のイメージもまったくなくて、駅前に本屋をつくれば売れるんだという程度の発想しかなかった。そんなレベルでした」

 ところが、捜してもなかなか見つからない。いい場所は、地元と密接に結びついている企業が押さえている。空きがあっても、なんの実績もない新規の本屋に貸すところはない。

 探しだして3年近くたって、ようやく神戸三宮に、「本屋くらいにしか、使いようがない場所があるが、どうか」と声がかかった。

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