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書店革命に挑む不思議な魅力の人(その4)

ジュンク堂書店社長・工藤恭孝――5年目の黒字

  • 高橋 三千綱

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2007年8月31日(金)

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 神戸三宮に、343坪の大型書店「ジュンク堂」が開店したのは、1976年の12月24日だった。賃借契約をしたのが7月、工藤恭孝さんが、「キクヤ図書販売」から独立した形になって、株式会社として出発したのが9月。それから6人の社員を集め、模索しつつ、ようやく開店までこぎつけたのである。

 「でも、誰も本屋の経験がないものだから、まったく雲をつかむような話でした。なんせ、本棚ってどこでつくるの、という低レベルのところから始めたんですから」

 社長みずから、当時のことを、あきれかえった顔で述懐するのである。

 棚は、業界の問屋さんが連れてきた棚屋に頼んだ。すべておまかせだったが、平面図がない、といわれて、またあわてた。

 社員のひとりに、1級建築士の資格を持つ者がいたが、彼にしても本屋の平面図など扱ったことがない。助けを呼んでようやく平面図らしきものをつくったが、今思うと、単なる思いつきで書いたものだった。

工藤 恭孝氏

工藤 恭孝(くどう・やすたか)氏

1950年兵庫県出身。72年に立命館大学法学部を卒業後、父親が経営していた書籍取次店のキクヤ図書販売に入社。76年にジュンク堂書店を設立し、社長に就任。現在、大型店舗を中心に鹿児島から盛岡まで全国で27店舗を展開している。

 100坪の店を3倍の広さにすれば、それでいいと思っていた。それだけの広さがあれば、神戸の書店には置いていない、医学や法律、建築、理工書さらに宗教、哲学などの専門書が置けるスペースが充分にあるのに、そちらまで頭が回らなかったのである。

 とにかく店は開店した。店の入り口には、当時人気のあった「週刊プレイボーイ」や「月刊明星」をそれぞれ300冊ずつ、ドーンと積み上げた。

 それには理由がある。「キクヤ」が雑誌を卸している得意先の小書店があった。神戸の新開地にあり、立地がいいので、店舗が小さいわりに週刊誌の売れ行きがよく、週に200~300冊売れる。

 それを知っていたので、「ジュンク堂」でも、地下を下りた入り口に週刊誌を積み上げたのだが、これがさっぱり売れない。1冊しか売れない週もあり、3冊売れたらいい方だった。

 これには恭孝さんも頭をかかえた。

 「なぜ、売れないんだ」

 社員に訊いても、だれも答えられない。手軽な週刊誌が売れないようでは、他の本が売れるはずがない。事実、開店1カ月の売り上げは目算の6割にも満たなかった。

 「これでは潰れてしまう」

 憔悴している恭孝さんをみかねて、版元さんが、

 「毛利さんを紹介してあげるから、一度訪ねてみなさい」

 そういってくれた。毛利さんとは、当時梅田の紀伊国屋書店で店長をしていた毛利四郎さんである。その後、副社長までのぼりつめた人だ。伝説の人、田辺茂一さんから直接指導を受けた人でもあり、大型店の店長として才腕を振るっていた。

 恭孝さんは、意を決して、毛利さんを訪ねた。大型店の運営のノウハウを教えてくださいと、門を叩いたのである。

 毛利さんは「ジュンク堂」のことをよく知っていた。そして、まず、こういった。

 「君んとこは、入り口に週刊誌を積み上げてあるやろ」

 「ええ。一番売れると思いまして」

 アホとちゃうか、とは毛利さんはいわなかった。かわりにもう一度質問してきた。

 「きみは週刊誌を買うたことがないのか」

 「はあ、本屋なもので」

 「お客はんの立場になって考えてみなはれ。駅の売店で買えるもんを、わざわさエスカレーターを下りて買いにくる人があると思うかね」

 そういわれて、恭孝さんはギクッとした。週刊誌の発売を待って、朝早くから、うちの店の前に客が並ぶはずはない、と気づいたのである。

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