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岩崎宏美・紙ジャケCD×22枚、ヒットの理由
~限定BOXで売らなかったのはなぜ?

マニアに閉じず、ファンを裏切らないモノを作ろう

2007年9月14日(金)

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「そんなもん、限定BOXで出せばいいんじゃないの?」
我ながら情けない。最初に浮かんだ疑問はこれだった。

 今年(2007年)の2月から始まった、「岩崎宏美 オリジナルLP紙ジャケットコレクション」シリーズは、彼女のLP時代からのオリジナルアルバム、全22枚を発売当時の紙ジャケットで再販するという企画。価格は1枚2500円で、4期に分けて発売された。

全22枚、ちなみに私物(写真:大槻純一 以下同)

全22枚、ちなみに私物 (写真:大槻純一 以下同)

 編集者の趣味などどうでもいい話だが、ちょっとおつき合いいただくと、私はこの再販された彼女のLPをほぼ全点持っていた。そういう世代なのだ。結婚とか、結婚とか、結婚とかで、コレクションはステレオごと“処分”せねばならなかったが…。つまり、どんぴしゃ、発売元のビクターエンタテインメントが狙った購入層だ。

「いまさら…」と思っていたら、してやられました

オリジナルのLPレコードと比較。アートワークの再現度が高すぎて、単体の写真では紙ジャケットの「CD」と分かりにくいので、古レコード屋さんで探してきた

オリジナルのLPレコードと比較。アートワークの再現度が高すぎて、写真では「紙ジャケCD」と分かりにくいので、LPを古レコード屋さんで探してきた

 しかし、正直、(大変大変失礼だが)何といってもそれは20年前のこと。何枚か手元に残したCDも思い出以上ではなかった。この企画も横目に見ながら「どうせコアなファンしか買わないのに、なんで堅く投資回収できそうな、限定ボックスにしないんだろう(オレは買わないけれどね)」と思っていたわけだ。

 それが、ネットのブログを読んでいくうちに気が変わり始めた。「単にジャケットをCDサイズに縮小するだけではなく、LPの帯、ライナーや付属したオマケまでリサイズ」「音源はオリジナルデータからリマスタリング」「ボーナストラックにはファンですら幻扱いしていた曲を発掘」と、挙げればキリがないほどの過剰な作り込み。岩崎宏美本人によるライナーノーツも付くという(自分の気持ちを一気に変えてくれたブログの代表として、こちらをご紹介させていただく)。

 はっと我に返ると、22枚全点、オンラインで買っている自分がいた。

 この企画は大好評のうちに終わり(発売は継続中)、発売元のビクターエンタテインメントは「ビクターヴィンテージシリーズ」として、同趣旨の復刻版を次々にラインアップに加えていくこととなった。

ファン限定でなく、間口も奥も広い「たこつぼ」を

 どうやら、ビジネスとしてもうまくいったらしい。

 「日経ビジネス」で「5000人ブランドの作り方(※リンク先は定期購読の方限定)」という記事を書いて以来、「ファンの“生き血をすする”ことなく、収益を上げる方法」はないのかと、常々思っていた。

 ディープな作り込みやバージョン違いをわざわざ用意して、「限定品」にすれば、好きな人は買ってくれる。商売としての理屈は成り立つが、それはしかし、ファンに歯を食いしばらせてお金をもらうような側面がどうしても残る。できることならば、たこつぼを単に深くするのではなく、新しいファンも増やし、古参ファンの愛情をもそそるプロダクトを作ってほしい。

 限定版でボックス一括購入させても不満が出ないであろう、これだけの作り込みをした商品。それをアルバム1枚単位で購入できるようにして、きちんと実績を残したこの企画には、もしかしたら「間口の広いたこつぼ」への手がかりあるのではないか。そんな期待を持って、ビクターエンタテインメントの担当ディレクター、森谷秀樹氏を訪ねた。

―― 岩崎宏美さん(以下、敬称など略す場合があります)のこの企画、さっそくですが数字を教えていただけますか。まずは目標とされた枚数から。

森谷 旧譜の再販の場合、ひとくちに言って1枚につき1000枚が「まあ、よかったね」と言われる目安なんです。この企画の場合も、だいたいそのくらいでしたね。

―― 1000枚ですか。ずいぶん堅い数字に思えますけれど。

 でも、例えば堅く見て1000枚として、そうすると全22枚で2万2000枚じゃないですか。今は、2万枚も売るなんていうのはものすごく大変なことなんです。1アーティストで1作品のアルバムで2万枚売れる人なんて、社内でも数えるほどしかいませんから。業界を見回しても同じことが言えますね。

売れない時代に、目標のほぼ倍を売った

―― え、そうなんですか?

 本当のビッグネーム、音楽好きなら誰でも知っているぐらいの名前じゃないと2万枚は売れません。今は本当に、そのぐらい市場が悪くなっています。ですから、岩崎宏美さんの復刻版を合わせて2万枚、という(目標値)は、すごくいい数字なんですよね。

 実際に最初に出した2月の分は、目標の1.5倍以上売れてきていますし、4月に出した分はもともとCD化のご希望が多かったので、初回から軽くそれを超えました。

 ですから、こちらが当初堅く見ていた予想よりは、もうはるかに上に行っています。

―― 22枚出て、その中の凸凹はどうですか?

 強弱というのが多少はもちろんありますが、足並みを揃えてどれも売れています。どれかが全然ダメ、とか、これだけが飛び抜けて、というのがないのが非常に面白いですね。

―― 目立った売れ行きというのをその中で挙げていただくとしたら、どの辺なんですか。

 「ファンタジー」「飛行船」はすごいですね。ちょうど阿久(悠)さんとか、筒美(京平)さんとかの作品の再評価がされてきましたし。「ファンタジー」は、例えばタワーレコードの雑誌に載ったりとかしましたよ。ディスコサウンドの名盤として出されます。

―― そういえば近田春夫さんが「パンドラの小箱」を高く評価されていましたね。

 松尾潔(KC's)さんも大ファンみたいで、たまたま別の仕事で知り合う機会があったので、サンプルを送ったら、ものすごく喜んでいて。「筒美京平チルドレン」とまで自分のことを言っていました。

 4月発売分は「初のCD化」というコアファンの市場、2月、3月の初期の頃は、幅広い歌謡曲、音楽ファンの方に購入してもらって、5月はもともとCDでも出ていたものですが、リマスター()で音質を一気に引き上げています。これもコアなファンの需要が多いと。

注:リマスターについては【コラム1】をお読み下さい)

―― 改めて聴くと、80年代のも結構いいんですよね。

 やっぱり(岩崎宏美の)イメージとしては、70年代のアルバムの方が一般的なんでしょうけど。例えばLPの発売時にはそれほどでもなかった「私・的・空・間」が、今回のCDではすごく売れています。こういう動きも、やっぱり出してみないと分かりませんね。

―― で、実績としてはどこまで伸びそうなのですか。

 5月中旬で、すでに3万枚を越え、全点出そろってある程度時間が経った7月時点では4万枚くらい。当初予想の2倍です。

―― この好調を受けて、歌謡曲や邦楽ポップスの、紙ジャケット再販シリーズをプッシュしていくそうですね。

 紙ジャケシリーズには、飯島真理さん、杉真理さん。続いて阿川泰子さん、アン・ルイスさん、そしていよいよ8月から桜田淳子さんが登場しています。

なぜ限定BOXにしなかったのか

―― ところで、成功したという前提でおうかがいしたいことがあります。私が疑問に感じたのは「なぜ、『××個限定BOX』という形にしなかったのか」なんです。とてもよくありますよね、そういう売り方。ご商売として考えたら、それが一番効率がいいだろうと思うんですけど。

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「岩崎宏美・紙ジャケCD×22枚、ヒットの理由
~限定BOXで売らなかったのはなぜ?」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官