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書店革命に挑む不思議な魅力の人(その5)

ジュンク堂書店社長・工藤恭孝――専門書の専門店、開店

  • 高橋 三千綱

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2007年9月7日(金)

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 その後、「ジュンク堂・サンパル店」となるビルの、3つのフロアーを借りてくれないか、と頼んできたのは、工藤恭孝さんの中学時代の同級生だった。店は5年目にして、ようやく黒字化が予測できるところまで、たどりついたばかりである。2号店など出す資力などなかった。

 それでも、もともとは書店のチェーン店化を理想としていた恭孝さんには、うずうずするような野心が芽生えていた。

 それで試しに、「どこのビルや」と恭孝さんは訊いてみた。

工藤 恭孝(くどう・やすたか)氏

工藤 恭孝(くどう・やすたか)氏
1950年兵庫県出身。72年に立命館大学法学部を卒業後、父親が経営していた書籍取次店のキクヤ図書販売に入社。76年にジュンク堂書店を設立し、社長に就任。現在、大型店舗を中心に鹿児島から盛岡まで全国で27店舗を展開している。

 「サンパルや」

 「あそこはあかん。絶対ムリや」

 さすがに恭孝さんは、がっかりした。

 そこは、神戸三宮の東口、雲井町にあるビルだったが、いわば荒涼とした野原に、ポツンとひとつ建っている10階建てのビルだった。そのあたりは現在でも空き地が目立つ程の地域で、戦後すぐの頃は、国際マーケットという名の闇市があったところで、土地を不法占拠する者があとをたたなかった。

 このあたりを神戸市は再開発する目的で、まず都市整備公社という外郭団体をつくった。その公社が1981年にパイロットビルを建てた。1、2階は古くから店を開いていた地権者が入った。酒屋、文房具屋、串カツ屋、人形屋などの店が並んでいて、雑居ビルの様相を呈していた。

 5、6階は公益法人などの官庁がらみの事務所が使い、7、8、9階はダイエーが入ってフィットネスクラブにしていた。

 しかし風紀が悪く、夜ともなると、周囲に怪しげな女が立った。その女には濃い臑毛が生えていた。女装した男たちだった。

 「各フロアーは100坪で、3、4、5階全部で300坪や。ここががらんどうでは、始末におえんねん。どうしても大型店に入ってもらわなあかんねん。なんとか考えてくれへんか」

 「山口よ、うちなんかに頼むより、紀伊国屋さんとか、旭屋さんにいったらどうや」

 嫌みだと分かりながら、恭孝さんは公社の社員になっている友人にいった。彼は情けなさそうな顔をした。

 「実はもう話をしにいったんやが、どこも断られたんや」

 「おまえ、他に断られた話を、よくうちに持ってきたもんやな」

 「なあ、工藤、友だちのよしみで頼むよ」

 「ただやったら、入ったるわ」

 ただというわけにはいかんけど、と呟いた彼は、意を決したようにいい放った。

 「倉庫代程度だったら入ってくれるか。上司に交渉したるわ」

 「まあ、倉庫代程度やったら、ええかな」

 半分不安、半分腹の中で薄笑いを浮かべながら、恭孝さんは答えた。

 その倉庫代程度の家賃が、友人の熱意によって、稟議が通ってしまったのである。約束は約束である。すぐに契約となり、恭孝さんは、たいした覚悟も目算もないうちに、2号店をやるハメになった。

 「というわけで、サンパルに店を出すんだが、なにか知恵はあるかな」

 恭孝さんは、開店以来ずっと勤めている6人を集めて、そう切り出した。実は、こういう定例会議は、「ジュンク堂」では、ほとんどすることはない。そう決めたのには訳がある。

 父が健在の頃の「ブックローン」では、毎日のように会議が行われていた。そこでは役職がものをいっていた。急成長した会社にありがちな、上にへつらい、下には偉ぶるという風潮が蔓延していた。

 ぺえぺえの恭孝さんに対しては、きつい言葉を放つのだが、兄の俊彰氏に対してはお追従をいう。そんな社員の態度に嫌気がさしていた。

 そんな反発もあって、自分の会社では、会議などしなくてもいいと決めた。半分は会議などしたって、何も進展しない。それに自分でもよく分からないものに対して、どうのこうのいっているだけでは、会議にならないと思っていた。

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