「“アンチ天才”のボトムズ流仕事術」

「一番になれないと、不安かい?」

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2007年9月12日(水)

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高橋 宮崎(駿)さんや富野さん、押井さんがいて僕もいる。「あれもあれば、これもある」ということがいいんじゃないですかね。

「現場監督」 高橋良輔氏

「現場監督」 高橋良輔氏 (写真:大槻 純一、以下同)

 たとえば、僕は車が好きなんだけど、日本ではアルファロメオってやたらと人気がありますよね。クルマ雑誌を開けば載っている。だけど、総合的に言って、まぁ、どうでしょって車じゃないですか(笑)。どうでしょって車なんだけど、“味”があるんですよね。

 僕が中学ぐらいの時、落語が最盛期だったんだけど、僕はその時期が一番好きなんだね。当時は“伝説の”大師匠たちがいっぱいいたわけですよ。どんな伝説かというと、志ん生なんていうのは、酔っぱらって高座に入ってきて、語ろうかなと思ったら眠くなっちゃって……高座でスースー(笑)。でも、まあひいきの客が、いいから少し寝かせておけみたいな。今の感覚では、えっ? と思うんだけど、そういう落語家もいたから面白かったんですよ。

―― 今言われた“味”というのは、主流とか定型、数値化できる目標値とかとは違う方向にあるということですか?

 何でも規模を大きくして勢力を拡大していくのとは違う、ということですね。僕の理想は、規模は小さくても長くやっている「専門店の名店」。飲み屋さんでもお菓子屋さんでも何でも。味があるじゃないですか。積み重ねがあって、付加価値がある。

―― そうは言っても数値目標は、誰でも納得できる透明感があって、分かりやすいですよね。

 時代の象徴として使わせていただくんですが、“ホリエモン”(堀江貴文氏)がいるでしょう。彼はやっぱり、「勝つか負けるか」なんですよ。勝つか負けるかの基準は、「時価総額」という経済的な金銭の多寡か、いずれにしても企業のランクとか規模ということなんでしょう。

 でも、規模が大きくなると、いろいろと大変じゃないですか。

売れないものと、売れているものの間

 さっき言った専門店の名店だって、3代目が事業欲を起こして全国展開しようとしたら、中身が変わっちゃう。会社として規模が大きくなるとチェーン店化しますよね。

 いろいろなお客さんに合わせることで、失われていく味もあるわけで。面白くもおかしくもなくなっちゃう。

 商売として成立していれば、「何も一番たくさん売れなくたっていいじゃない」、ということもあるわけですよ。本当は、売れないものと売れているものの間によいものがあるとしても、一番いけないのは、売れている方向だけにみんながなびくということじゃないかなあ。

―― 「一番志向」を否定されるわけじゃないんですね。

 ええ。僕は、ホリエモンのような人がいない世界は寂しい気もするんですよ。だけど、一番になれたら、誰でも必ず幸せになれるかというと、そんなことはないと思うんですよ。一番になろうとする前に、あなたが幸せになるためには、一番と味、どっちにあるかを考えたほうがいいよ、と。

 結局、僕はいつも、何らかの形で最後にはそこに強引に結び付けるんですけど、あらゆることは「幸せ論」にかかってくるわけですね。幸福感っていろいろあっていいと思うんですよ。

 いつも勝者である必要はないというか、場合によっては、あえてトップを狙わないで、3番目の居心地がいいんだという生き方もあるはずなんですね。そうすると、「意気地なくなる」ことをあまり恐れない。

 山登りで全員が頂きを目指さなくてもいいんですよ。頂きを極める楽しみもあるけれど、山麓を散歩する楽しみもあるわけで。

―― 一番になる、なれない、という考え方は「才能」があるなしのお話にも繋がっていると思うんです。才能とか成功というのは、どうしても、あるorなしの二元論で語られがちです。0か100か、のような。

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著者プロフィール

渡辺由美子(わたなべ ゆみこ)

1967年、愛知県生まれ。椙山女学園大学を卒業後、映画会社勤務を経てフリーライターに。アニメ・コミックをフィールドにするカルチャー系ライターで、作品と受け手の関係に焦点を当てた記事を書く。男性と女性の意識の差を取材した記事も多い。著書に「ワタシの夫は理系クン」ほか。

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