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書店革命に挑む不思議な魅力の人(その7)

ジュンク堂書店社長・工藤恭孝――ファミレスでの発見

  • 高橋 三千綱

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2007年9月21日(金)

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 「私は別に書店革命を起こそうとか、ジュンク堂の全国展開を計画していたとか、そんなだいそれたことを考えていたわけじゃないんです。どちらかといえば、行き当たりばったりで、ちゃらんぽらんなところがあった。それが大震災に直面して、眠っていたアドレナリンが爆発したんですね」

 1988年に開店した京都店は、2年目に黒字になったが、それはベテラン店員たちの努力のたまものだった。社長が社員をしごいて育てたわけではなく、専門分野をもたされた社員が、それぞれ独自に研究し、それで得たノウハウを、あらたに入社してきた新人に伝えることによって、自然に社員教育ができあがっていったのである。

工藤 恭孝(くどう・やすたか)氏

工藤 恭孝(くどう・やすたか)氏
1950年兵庫県出身。72年に立命館大学法学部を卒業後、父親が経営していた書籍取次店のキクヤ図書販売に入社。76年にジュンク堂書店を設立し、社長に就任。現在、大型店舗を中心に鹿児島から盛岡まで全国で27店舗を展開している。

 「私は何もしなかった。みんなベテランの社員がやってくれた。私はスキーにいったり、テニスをしたり、適当に遊んでいました」

 工藤さんは別荘をもち、仲間とテニスに興じ、夏はヨット、冬はスキー、女性を横に乗せてスポーツカーを乗り回していたのである。ちなみに、泰子夫人と出会ったのも、テニスコートだった。

 「でも、京都店のときは発憤しました」

 京都に進出した当時は、三宮店から、ベテランの社員をぞくぞくと送り込んだ。工藤さんに気合いが入っていたのである。その結果、京都店は驚くほどの売り上げをあげたが、ベテランのいなくなった三宮店には専門書がそろわなくなり、書棚には隙間ができた。

 「お客さんからはお叱りをうける。でも、本はすぐにはそろわない。そのおかげで、三宮店の売り上げはがたがたになりました。あわててベテラン社員を戻しました」

 それでも阪神大震災の前までに、工藤さんは、3書店を開いている。このあたりが工藤さんの不思議なところなのである。あるいは、いきあたりばったり精神の強さなのか。

 ともかく、地元神戸の住吉、それから、自宅のある芦屋に開店した。この2店は150坪程度の中型書店だった。

 「バブルの崩壊で、あちこちの店舗に空きができて、ここに入ってくれと声がかかった。もともと関西では、入居資金に家賃の100倍くらいかかる。それが不景気で10分1の保証金ですむようになって、借りやすくなったんです」

 明石店を出したのは、震災の前年の94年だった。ここは店面積が400坪を超す京都店につぐ大型店になった。明石市の人口は30万人程度。大型店には店員の数が必要だ。需要と供給をかんがみても、とても採算がとれるとは思えない。

 「POSシステムを導入したから、中都市でも、大型店を開けたんです。これによって、人件費が大幅に圧縮できた」

 POSとは「販売時点情報管理」システムを構築することをいう。早い話、客がレジ係に本を渡した瞬間、書店側では、本のデータをすべて読みとり、レシートを客に出す間に、本のジャンル分けから、取次店に本の発注をやってしまうという、すぐれもののシステムのことをいう。

 それまでは、たとえば17番ジャンルの人文書が売れたとすると、「はい、17番、2800円」とレジ係がいって、レジをうつ。店が閉まると、店員は本のスリップに店の判を押し、データ整理し、新刊ノートにスリップを貼り付けたり、必要な本は、まとめて取次店に発注するという作業をしていた。すべて手作業だった。

 それがPOSの導入で、アルバイトでも、ただ「ピッとやる」だけで、すべての作業がすんでしまうのである。
 工藤さんが、これに気付いたのは、まったくの偶然からだったが、レジ係を含めた人件費や、大型店に何台もレジを並べることの、不合理性を常々考えていたからでもあった。

 当時、POSレジはもうあったが、それは問屋が使っているだけで、1台120万円もする。本屋のカウンターに10台も並べたらスペースがなくなる上に、大変な出費になる。

 三省堂本店には、スリップを読みとる機械を導入していた。工藤さんは神田まで行って見学させてもらったが、1台3000万円もすると聞かされ、

 「うへー、うちではちょっと手がでえへん」

 とおそれいって、早々に退散してきた。しかし、データ管理にはどうしても必要なシステムだった。

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