• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

CSR解体新書(11)ユビキタスクライシス

技術は使い方次第で天と地の差が出る

  • 伊東 乾

バックナンバー

2007年9月25日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 日本には、国際的なビジネスの「ここ一番」というところで惜しいことになるケースが多いような気がします。戦後の高度成長期は、もっと戦術巧者だったような気がするのですが、少なくとも1990年代以後で見る限りは、かなりもったいないケースも目にしています。

 よく聞くのは、IT(情報技術)関連で、ウィンドウズの原形になるマルチウインドーのパソコン用基本ソフトウエア(OS)を大阪大学の若い研究者が開発していたのに、ビジネスに結びつけることができないままに、マイクロソフトに模倣されて権利を全部囲い込まれた、なんていうようなお話です。

 そんな中で、携帯電話のOSで日本のTRONが実質的な世界標準、デファクトスタンダードを獲得したことはなかなかの朗報でした。

携帯メールを可能にした日本の技術

 今から8年前の99年、私は突然、東京大学に教官として招聘されることになりました。全く寝耳に水でした。東大で所属することになった部署は「情報とシステム」という学域で、そこの助教授という身分が割り当てられました。

 理系の枠組みの中でアート系の研究室を一から立ち上げる、というのが私に与えられたミッションで、当然ながら「親研究室」などはありません。初代と言えば聞こえがいいですが、資金集めから何から、全部一から自分でやらなければなりませんでした。その情報とシステム学域の名義上の私の真上に当たる教授が、TRONプロジェクトでよく知られる坂村健さんでした。

 もし坂村さんのお名前をご存じない方がおられたら「世界で初めて携帯電話でメールのやり取りができるようにした人」と説明しておきましょう。坂村さんが文字通り「心血を注ぎ」、私財から人生から、すべてを投げ打って取り組んできたのが純国産OS「TRON」創生のプロジェクトです。

 そうやって開発されたOS群の1つ「i-TRON」を使って、携帯電話上でインターネットの情報交換を可能にしたことで、世界中のどこでも「ケータイでメールがやり取りできるようになった」のです。

米国から狙い撃ちに遭い孤軍奮闘

 坂村さんは私が物理学科の学生時代、隣の情報科学科の助教授でした。既にTRONプロジェクトで社会的にも知られつつありましたが、米国の対日貿易交渉で狙い撃ちにされたり、様々な逆風が吹いたり、と、当時ははたから見ていても気の毒になるような状況にあったように思います。

 でも、そこで果敢にオリジナリティーの一線を譲らなかった坂村さんの姿勢には、好意と共感を持ちました。このあたりのお話は、NHKの「プロジェクトX」でも紹介されたので、ご存じの方も多いと思います。

 さて、坂村さんが一種の袋叩きに遭っていた頃、私は、スタンフォード大学と日本の文部省学術情報センター(当時)の合同プロジェクト「音楽と情報科学」というシンポジウムの組織委員をしていました。

 シンポジウムには、世界で最初のプログラミング・シンセサイザーを作ったAT&Tベル研究所=スタンフォードのマックス・マシューズ、グループの総帥ジョン・ピアース、日本からも湯浅譲二、松平頼暁など、技術系、芸術系の両方からそうそうたるパイオニアが登壇して、「一から自分が作った仕事」の話をしてゆきました。

 そこで痛感したのは、システムの大本から握っている者が強いということでした。人の作った土俵の上でいくら時間と労力を費やしても、しょせんはフォロアー(追随者)としてしか見てもらえません。

 特許や国際原著などのロイヤルティーを確保した仕事をした者だけが勝つのが、国際社会の当前の現実でした。だから、孤軍奮闘している坂村さんを応援したい気持ちになったわけです。まさかその当時は、10年後に同僚になるとは夢にも思っていませんでしたが。

電話線でデジタル信号を初めて送ったのは日本人

 シンポジウムの日本側責任者は猪瀬博教授(当時=学術情報センター長、1927~2000)と、私が教養時代からお世話になった村上陽一郎教授(科学史)のお2人だったのですが、ここで主に猪瀬先生から、私はこういう「先取権者の強さ」について教えていただきました。

コメント0

「伊東 乾の「常識の源流探訪」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トランプ政権のここまでの動きはスロー。

ジョセフ・ナイ 米ハーバード大学特別功労教授