国公立大学への合格者が急増したことで、注目されている京都市立堀川高校の校長・荒瀬克己さんは、より広く人間というものに向き合っている教育者だと思った。
基礎学力を付けることと、総合学習のような応用力を付けることは、普通は別のことだと言われている。しかし、本当は同じことで、探求をしないと学力を付けようというモチベーションは起きないし、逆に基礎学力がないと探求もできない。だから、本来はそれが一体のものとして発展していくのが、望ましい。荒瀬さんはそう言われていた。
印象的だったのは、できるだけ早く生徒が「失敗するようなしかけ」を作っておいてあげるべきだということだった。人が成長するには、失敗することが大事で、ただ普通に進学校で受験勉強ばかりしていると失敗する機会が少ない。
ストレートでよい学校へ入ってしまうような子でも、例えば学校の行事や会議などで、責任を持って運営するという立場になると、様々ことで失敗を経験する。それはまさに実社会の縮図のようなものだ。だから高校の時からそういう経験をさせてあげることが最大の教育だと言う。
堀川高校はいろいろな改革をし、新しい試みをしているのだけれど、実際はどこかで事前に実施されて効果があると分かっていることばかりを取り入れている。荒瀬さんは、「石橋を叩いて渡る」とおっしゃっていたけれど、教育者というのは、特に学校単位ではもっとも慎重でなければならない。例えば、探求心を育てると学力も上がるといったことは、外国の例も含めて全部知られていることで、それをただ調査してまとめあげただけだとおっしゃっていた。
つまり、できるかどうか分からない新しいことをやったわけではなく、「こうなればうまくいく」と予想できるようなことをやった。これだけ情報があふれているのに、どうやればうまくいくかという成功事例について、調査しないままに闇雲に新しいことをやったりしがちだけれど。実は堀川はそうではなかった。
改革というのはいままでのやり方を否定するところから始まるのではない。今までの良かったところも冷静に見るということだ。過去を全否定するというのは科学的な態度ではない。全部が100パーセント悪いはずがない。
荒瀬さんは自分のことを「保守的」だと言っていた。その“保守派”の人が改革をなしとげたところに、味わい深い意味があるのではないか。
保守派というのは、つまり過去を全否定するわけではないし、新しいことにすぐに飛びつくのではなくて、「石橋を叩いて渡る」くらい慎重にいろんなことを調べて検討した結果、間違いのないところを採用したという、非常に保守的な態度を取った。その人こそが、いま問題になっている公立高校を再活性化するという改革の先頭に立ったというところが、非常に面白い。
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