• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

働きすぎないでいる努力

2007年10月26日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 どれほど仕事の責任が大きくても、深刻な病気になるほど頑張ってしまえば、それは本末転倒といえる。生きるために仕事が必要なのであり、生命の危機と引き換えに仕事があるのではない。しかしその加減を実際の労働に反映させるのはなかなか難しい。

 それを思い知らされたのが元東京オリンピック水泳選手である木原光知子氏の訃報だった。木原氏は長年にわたって、水泳の普及に努め、多方面で活動してきた。地方での地道な水泳教室から、大企業や著名な歴代オリンピック選手たちを巻き込む大掛かりな水泳イベントまで。メディアへの露出もかかさず水泳界の将来を常に意識した活動だった。

 だが、それら華やかな活動のほかに、実は社員を大勢抱えた水泳教室を運営する企業の経営者であったことはどれほど知られているだろう。

 振り返ってみれば木原氏は現役としての技術指導と社会貢献と広報活動、そして企業運営までのすべての責任を1人で背負っていたことになる。そのどれを取り上げても、それぞれに1人の専任が必要とされる種類の仕事だ。

 木原氏の健康への配慮は、食事、睡眠、運動と完璧だったと聞く。なぜそれほど健康な人間がその命を落としてしまったのか。それを考えることは、あらゆる企業のトップが陥りやすい日常の危険というものを私たちに意識させる。

 私が出会ったトップには2種類ある。組織の長としてその枠内で部下を動かすタイプと、枠を超えて自らが率先して動きまわるタイプだ。前者は大企業に多く、トップと部下の関係は、油断ならない緊張感をはらんでいることが他者からも伺えたりすることがあった。

 ある大企業の社長が「部下は真実を言わん」とボソッと言ったのを私は聞いたことがある。それに比べて後者は、一見トップと部下の関係は良い。このトップについて行けば大丈夫といった安心感やカリスマ性、信頼関係のある安定した組織のように他者には映ることがある。

 だがこれはイエスマン的労働と紙一重だ。前者だって部下たるもの上司の前ではイエスマンだろうが、腹では何を考えているか分からない。表面上のイエスマンと、心から従順なイエスマンとではトップに与える影響が違う。

 カリスマ性のあるトップの下で働くのは比較的容易だ。ただ言うことを聞いていればいいのだから。広範囲に活動するトップから矢継ぎ早に仕事は生まれるので、部下はある意味思考停止していても忙しく日々を過ごせる。だが、何故そのトップがそこまで動きまわるのか、何がトップを駆り立てるのかを考えた場合、そのモチベーションはどれほど部下に理解されているだろうか。

 私自身についても、過去に依頼がくる仕事をただ何の展望もなくどんどん日程に組み込むマネージャーがいたことがある。一見、私たちの日々は忙しいのだが、そこに何の展望もないぶん、将来へ向けての戦略もあろうはずもなかった。

「遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」」のバックナンバー

一覧

「働きすぎないでいる努力」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の社会に足りないのは起業家精神です。

デイビッド・ルーベンシュタイン 米カーライル・グループ共同創業者兼共同最高経営責任者