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【第12回】醤油の認定基準や資格づくりも視野に
醤油屋「かめびし」17代目 岡田佳苗さん【後編】

  • 白河桃子

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2007年11月2日(金)

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 (前編から読む)

 創業250年の醤油屋かめびし17代目として修業中の、専務取締役の岡田佳苗さん。彼女が跡取りを表明した時、16代目である父親はこう言った。

 「俺が継いでくれと言ったわけじゃないからな」

 実は、父は大学で経済学を専攻し、かめびしの外で身を立てるつもりだったが、家業の危機で呼び戻されたのだ。父には、「お坊ちゃま育ち」の祖父に代わり、苦境の時代をなんとか切り抜けるガッツがあった。また、岡田さんが大学に進んだ頃には、家業を一息つける状態まで回復させるだけの才能もあった。

かめびしの17代目、専務取締役の岡田佳苗さん

かめびしの17代目、常務取締役の岡田佳苗さん(写真:瓜生敏夫、以下同)

 だが「かめびしは自分の代で終わり」と決めていたところ、突然の娘の跡取り宣言…。父自身は、「この仕事は受け身の気持ちで始めたら、越えられない山がある」と痛いほど分かっている。一方で、娘が自ら決めたことを放り出さない頑固な性格であることも知っている。うれしい半面、家業を背負う人間の辛さを誰よりも理解しているだけに、複雑な気持ちにもなっただろう。

 岡田さんの父には、1つのこだわりがあった。それは、かめびし醤油の味を守るためには必須の「味覚の継承」である。会社経営は、努力次第でうまくいくかもしれない。しかし、ほんの少しの味とにおいの変化も見逃さない鋭い味覚と嗅覚という細やかなセンサーを持たない人間には、かめびしの看板は継げない。

 「幸い、私は父と同じ味覚と嗅覚を持っていました。私と父が本当においしいと感じる範囲は、とても狭いのです。同じ家族でも、母と妹の場合はもう少し幅広い」

 味覚と嗅覚のセンサーは、例えば香水を作る調香師や食品メーカーの開発担当者などにも必須だ。岡田さんは、蔵に入った瞬間に「あ、掃除が足りない」と分かる。同じ桶から搾って別のタンクにブレンドした醤油の味を見て、微妙な仕上がりの違いを感じ取ることができる。もちろん、「この道何十年」という職人なら同じことができるかもしれないが、岡田さんはその感覚を経験からではなく、最初から持っていたのだ。

 今までの取材を通じて、家業を持つ家の人たちの勤勉さや商才は、その環境で育ったから受け継がれると感じていた。さらに、遺伝という強みもあることに、岡田さんに出会って初めて気づいた。伝統のブランドを守るために経営者を外から雇うことはできても、遺伝という「ギフト」こそは、お金では買えない宝物である。岡田さんが父から受け継いだ味覚と嗅覚は、実は岡田さんの娘にも継承されているという。

 こうして「跡取り」として家業に入ったが、岡田さんはまず最初の壁に突き当たる。

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