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我儘を売りにできる創作料理旺盛な人
(その2)

ひらまつ社長・平松宏之――フランスかぶれ

  • 高橋 三千綱

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2007年11月2日(金)

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 「料理とは自己表現なんです」

 その思いに到達するまで、平松さんが何年かかったか、分からない。ただ、ある日、ポッと気づいたことでないのは、確かだろう。自分を表現するのは、時間がかる。それは、芸術家の精神だからだ。

 その平松さんが、経営に専念するようになるには、理由があった。だが、ここでは、料理人として、デビューするまでの、思いがけない道のりを、いくつかの資料を基にして紹介しよう。

平松 宏之(ひらまつ・ひろゆき)

平松 宏之(ひらまつ・ひろゆき)
1952年横浜市生まれ。本名、博利。高校卒業後、72年東京YMCA国際ホテル専門学校入学。同時にホテルオークラ入社。82年、東京・西麻布に「ひらまつ亭」開業。2001年パリに出店し、翌年「ミシュラン」1つ星を獲得。レストランやカフェを運営する「ひらまつ」は04年東証二部に上場した。

 平松さんは、4人兄弟の3男として、1952年に横浜で生まれた。長男は4歳上、次男は2歳上である。父は、旅行代理店に勤務していた。
 生まれて数ヶ月で一家は東京杉並区の高円寺に移った。以後、高校を卒業するまで、平松さんは杉並区で育った。

 高校は荻窪高校に進学した。すでに生徒にとっては、はた迷惑な、学校群制が文部官僚の思いつきで制度化されていて、平松さんは長兄の卒業した豊多摩高校を希望していたのだが、抽選の末、割り当てられたのは、荻窪高校だった。

 「自分の人生を、抽選で決められるのか」

 体制に対して、かすかな反発心が芽生えた。
 その思いを吹っ飛ばしたのが、入学式での出来事だった。

 校長が新入生に対して、慇懃に挨拶をしたあと、3年生の生徒会長が壇上に立った。そして、いきなり、
 「われわれはー」
 とやりだしたのである。その1、2年前から高校にも、学生運動の気運がみなぎりだしていて、いたるところで、学生と教師の対立が起きだしていた。新宿の高校では、1年間近く授業が行われず、毎日喫茶店でくすぶる高校生の姿が目立つ程だった。
 当時の荻窪高校の生徒会長は、中核の全高連の委員長だった。
 平松さんにとっては、はじめて聞くアジテーションである。びっくりすると共に、その歯切れのよい言葉に痺れた。

 「カッコイイなー」
 そう思うと同時に、彼の口から出る、マルクスや、ジャン・ジャック・ルソーという名に興味を持った。その連中は一体どういう人だろうと思い、図書館から「資本論」、「社会契約論」などを借りて読みだした。それを読むのが、大人の資格だと考えたのである。

 学校内の雰囲気も一時騒然とすることがあった。中核の委員長に加えて、夜間部には、革マルの全高連の会長が在籍していたのである。
 「おい、あの人たちは、公安警察にマークされているらしいぞ」
 「警察にマークされるなんて、やっぱ、カッコいいよな」
 高校1年生にとっては、そんな先輩は憧れでもあった。

 社会主義思想に感化されるままに、平松さんは、デモにも参加するようになった。
 そのうち、サルトルの実存主義にもかぶれ、さらに、カミュの「シーシュポスの神話」「異邦人」から、今度はモンテスキューをはじめ、あらゆる文学本を読みだした。

 「2年生のときには、1年間で200冊読みました。図書館にいりびたりだった」

 その頃には、デモにも参加しなくなっていた。人間関係のわずらわしさだけでなく、学生運動の先に見えている、虚しさを感じだしたからである。
 それより、フランスという国の持つ、おおらかな文化性に、強い憧れを抱くようになっていた。お茶の水のアテネフランスにも1年生の途中から、通いだしていた。

 「本を読む内に、フランスという国は、個を大事にする国だと気づいた。国境とか国籍にとらわれることなく、個の能力を評価する国だと。芸術家や哲学者が大事にされるのは、そういうことだからと知った」

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