「茂木健一郎の「超一流の仕事脳」」

自分の感覚を信じ抜く「言い訳」できない生き方

イチロー

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2007年12月27日(木)

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 イチローさんは自分の感性を徹底的に信じてきた人だ。振り子打法のころから、いわゆる世間のバッティングセオリーとは違うから、いろんな人に「直せ」と言われてきたけれど、自分の「こう打つのが気持ちよいのだ」という感覚をゆずらなかった。

 スイートスポットの狭い細いバットにしても、それを手にした時の「絶対にこれで打てる」という感覚を疑わなかった。悪球に手をだすとよく言われる彼独特の広いストライクゾーンにしても、それが自分の感覚なのだと決めている。

 世間でのセオリーが何であれ、自分の感覚を信じて貫くという生き方、これはすごいと思った。ぴんと張り詰めた感覚があって、その規準でイエスかノーかを決める。イチローはそれを全部試している。例えばバッティングに入る時の所作にしても、ああいうふうにすると一番集中できるということが、自分の感覚で分かっているからやっている。

 「感覚」「クオリア」というのはもともとは厳密なものだ。問題は、それを追い詰める方法をどうつかむかだ。イチローさんはそれを体の動作で追い詰めている。これが面白かった。だから、そのために厳密に何をするかというステップがある。

 感覚というものは面白くて、再会すれば前と同じだということが分かる。味にしても「この味」と覚えている。ただ、そこに至る手続きを我々は持っていない。だから、感覚はあいまいなものだと思ってしまう。

 イチローは自分のバッティングにはいる道のりとか、いろんな所作に厳密なステップがあって、それによって感覚という眼に見えないものを制御しているというか、そこにたどり着いている。

 さすがだと思った。つまり脳の圧倒的に多くの神経細胞は体からきているわけで、「見る」「聞く」といった外から来る情報と同じくらい、あるいはそれ以上の感覚が、眼に見えない体の内部からもたらされている。

 だから、ある体の動かし方をするということは、身体を通して脳に非常に大きな影響を与えている。それをイチローさんは非常に厳密にやっている。そういうことを通じて、眼に見えない感覚というものをつかんでいる。

 それは、もちろん主観的なものなのだが、客観的な体の動きによって非常に厳密に整理されたものでもある。

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イチロー・スペシャル
NHKの番組サイトへ
NHK総合テレビ
1月2日(火)午後9:00〜10:15
・再放送
 総合 未定
 総合 未定
 BS2 未定
 7年連続200本安打、シーズン262安打のメジャー記録樹立、首位打者2回・・・輝かしい記録を次々と打ち立ててきたメジャーリーガー・イチロー。そのイチローが、初めてテレビの長期密着取材を受け入れた。秘密のベールに包まれていた闘いの舞台裏。そこでカメラがとらえたのは、「クールな天才」のイメージとは全く違う等身大のイチローの姿だった。
 
 試合に向けての知られざる準備、遠征先での苦悩、闘いの陰で友に語った決意。そして、襲いかかる重圧との孤独な闘い。撮影はプライベートの時間にも許された。素顔のイチローがそこにいた。
 
 番組は、2007年のイチローを70日に渡って追い、知られざる闘いの日々を克明に描く。今シーズン、一つの決意を胸に打席に立ち続けたイチロー。息を飲む首位打者争いの陰にはもう一つのドラマがあった。イチローが、想像を絶する重圧の中でつかんだものとは。さらに、脳科学者・茂木健一郎がシアトルに赴き、天才の秘密に肉薄。華やかな歩みの陰にあった苦悩にも迫る。イチローのすべてが明かされるスペシャル版。


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著者プロフィール

茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)

茂木 健一郎

1962年、東京都生まれ。東京大学大学院卒業。「クオリア(感覚質)」を手がかりに、脳と心の謎に挑む新進気鋭の脳科学者。現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。



このコラムについて

茂木健一郎の「超一流の仕事脳」

毎回、1つの分野で超一流の仕事をしている人物を追うNHKのテレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」。キャスターを務める脳科学者の茂木健一郎氏が、番組を通じてその人物から受けた刺激をさらに深く考察して語るコラム。

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