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我儘を売りにできる創作料理旺盛な人
(その7)

ひらまつ社長・平松宏之――経営戦略としてのカフェ文化

  • 高橋 三千綱

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2007年12月14日(金)

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「カフェは絶対に成功する」
 そう確信して、平松さんは粘り強く銀行と交渉をつづけた。単にフランス文化への憧れだけではなかった。それは使命にも似た確信だった。

 パリの修業時代、妻の慶子さんと休日になるとカフェにでかけた。そこで会話や読書を楽しむパリの人々を見ながら、自分たちもピカソを思い、カミュの若き日を連想した。カフェで、こころが無限に広がっていくようなひとときを過ごした。

平松 宏之(ひらまつ・ひろゆき)

平松 宏之(ひらまつ・ひろゆき)
1952年横浜市生まれ。本名、博利。高校卒業後、72年東京YMCA国際ホテル専門学校入学。同時にホテルオークラ入社。82年、東京・西麻布に「ひらまつ亭」開業。2001年パリに出店し、翌年「ミシュラン」1つ星を獲得。レストランやカフェを運営する「ひらまつ」は04年東証二部に上場した。

 パリのカフェを日本に持ってくる。

 思い入れとは別に、経営者として、そうしなくては先に進めない自分を感じていた。マンションを担保に入れても、やってみせる、そう妻にもいった。妻には悲愴な決意に映ったことだろう。

 「人がやろうかどうか、悩んでいることをやれ」

 本田宗一郎の言葉が、平松さんを後押しした。平松さんの反骨精神がさらに自分を引っ張った。

 夏から秋に変わる頃、ようやく事業計画書が認められ、93年のうちにカフェが開店できる見通しがついた。銀行からだけでは資金の全額を借りることができず、リース会社からも借りて、ぎりぎりになって、ようやく資金の目処がついたのだ。

 カフェの設計は荻窪高校時代の友人に任せた。製図を引く前に、その一級建築士の友人を伴ってパリにいった。ドゥ・マゴ、フロールといった有名なカフェからどこにでもあるカフェまで、毎日5店をはしごした。友人は、カフェというイメージを、もっと豪華な造りのものだと想像していたようだ。平松さんは友人の設計家にいった。

 「な、全然ゴージャスじゃないだろう。ペンキだって下手くそなやつが何度も塗り直した感じだろう。それでいいんだ。それで温かい雰囲気がでるんだ」

 友人は納得して、設計にかかった。この頃、平松さんの部屋にも設計台があり、自分でも設計図の線を引いて友人と確認しあった。

 「カフェ・デ・プレ」が広尾の交差点近くに開店したのは、93年の11月だった。ぎりぎりまで資金繰りに追われての開店だった。宣伝は一切しなかった。そんな余裕もなかった。

 「いきなり開いてもどうせお客は入らないだろうから、駅前で半額の切符でも配ろうかとみんなと話していたんです」

 平松さんは知らなかったが、建築中から、パリの歴史を感じさせるような変わった店構えは近所で話題になっていた。

 当日、開店前から店の前には行列ができていた。開店と当時に、お客はなだれ込み、60席はあっという間に埋まった。新米のギャルソンたちは、あたふたして客席を縫ってコーヒーを運んだ。お客はきらきらした目で通りを眺め、道行く人は、もの珍しげに、通りに面して並んでいる客席を眺めた。その彼らもつぎに通るときには、客になった。

 地下に入れたイタリア料理店の「ヴィノッキオ・デ・プレ」はシェフに阿曽達治、サービス人は遠藤宣夫が担当した。ここも連日満員だった。

 このイタリア料理店の成功が、4年後の97年6月、代官山の「リストランテAS0」となって開花する。阿曽はイタリア料理のシェフとなり、創作料理に邁進することになる。

 この「リストランテASO」は、今年の11月に発表された「ミシュランガイド」東京版で、2つ星に選ばれている。

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