• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

セックスの快感は脳を麻痺させる

脳測定から見た性的ネット濫用の本質(CSR解体新書24)

2008年1月15日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 大学の場合、すべてのアクセス記録が残っているので、この期におよんで下手なウソをつかなかったのは不幸中の幸いだったでしょう。

 でも、そもそも、「プリンター出力くらい、何をやっても誰も分からないだろう」という匿名性幻想で責任意識ゼロの行動を取った、この事自体は決して褒められません。

 ここでX君が「情報公開ガイドライン」に添って問われた責任は「目的外使用」(研究・教育に無関係な情報の閲覧、研究・教育に無関係な情報の出力)、および付加的に、自分の責任で発生した機器の故障を職員に報告しなかった怠慢などです。素直に自分の非を認め、正直に報告したことで情状を酌量され、下された処分は一定期間、大学でのコンピューター利用資格の停止にとどまりました。

 この話でおかしい(と言ってはいけませんが)のは、肝心の(?)出力されてきたプリントアウトというのは全く粗悪な白黒画像で、面白くもおかしくもない代物だったということです。

 事件があったのは1990年代のことで、当時、学生用に使っていたのは大変旧式な白黒のドットプリンターでした。画像は何が写っているのか克明には分からず、見ても興奮も何もしないシロモノでした。でも何が写っているかは誰の目にも一目瞭然だったわけです。

 大変な冒険をしたはずなのに出力に失敗し、さらに教官に見せられたのがただのインクのシミだった。踏んだり蹴ったりのX君でした。

 と、教室でこの話をすると、学生は笑ってくれます。でも、ネットにアクセスするうえで「こんなことをしても分かるまい」と「匿名性幻想」を決め込む部分について、実は多くの日本人ユーザーは決してX君を笑えない現状にあります。

ネットカフェも匿名ではない

 ここでネットカフェの仕掛けをご存じのユーザーは「いや、ネットカフェなんかでは誰がアクセスしたかシステムに記録は残らない」と言われるかもしれません。本当にそうでしょうか? 

 多くのネットカフェは会員登録時に免許証など身分証明書の提示を求めます。ちなみにNBオンラインのユーザー登録もメールアドレスと対照する読者番号の記録があります。

 ネットカフェも、公開サイトも、どの会員がどの端末で何年何月何日の何時にどういう行動を取ったか、それこそ「個人情報」保護の限界範囲内で記録を取っています。そういう「社会的責任」の取り方が求められているわけです。

 また身分証を提示させないネットカフェ店舗では、必ず防犯カメラに画像が残っています。実際、ネットを利用した組織犯罪は、常にそうした場所を舞台に繰り広げられます。

 多発するネット犯罪に対抗すべく、警察からも各種の通達が出ているはずで、捜査を容易にする証拠資料が様々に残されている。「誰も見てないだろう」と小人閑居して不善をなすかのごとき行動は、くれぐれも慎んだ方が、何より自分の身のためだと思います。

エロサイトはヒトをサルにする?

 さて、上の「プリントアウト事件」はかつて東京大学内で実際に起きた事実で、このX君も本来は優秀な東大生です。難しい入学試験をパスして大学に入ってきたはずなのに、ここで取っている行動はあまりにお粗末であります(一面コミカルでもありますが)。

 俗に色ボケ、欲ボケなどと言うように「◎◎に目がくらんで」思わずナニゴトかを仕出かしちゃった、という話は、ささやかで微笑ましいケースから、重大な刑事事件まで、世の中に枚挙に暇がありません。

 ペーパーテストに答えれば優秀かもしれないX君が、なぜ、こんなにアホなことをしてしまうのか?

 その一因は「分かりはしないだろう」という「匿名性幻想」です。ではなぜそういう状態で取る行動がかくも愚かしいのか。X君も私たちもみなホモ・サピエンスで、似たような脳みそを使って思考していますから、脳のメカニズムからきちんと考えると、万人に通じる背景が分かるかもしれません。

 「これは、うまく考えればたぶん実証できるだろう」と私は目算をつけました。そしてそれを実際に計ってみたのです。

 というのも、以前私は「なぜ優秀な理系の学生がオウム真理教に騙されたのか」という問題設定に、脳機能可視化装置を援用してアプローチして一定の成果を上げたことがあります(ご興味があれば拙著『さよなら、サイレント・ネイビー』をお読みください)。

 それと同じ背景と手法できちんとした測定を行えば、科学的に議論が可能になるはずです。

 そのポイントを一言で言うなら「エロサイトはヒトをサルにする」というものです。四の五の言うより測定結果をお目にかけましょう。

オーガズム脳は窒息する!

 図は、性的興奮状態の絶頂にある被験者(40代、女性)の大脳新皮質・前頭前野の血流を、近赤外光吸収で測定した結果を可視化したものです。

脳血流可視化マッピング

性的絶頂の状態で、前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度が著しく低下している被験者(40代、女性)の脳血流可視化マッピング。青色は酸素化ヘモグロビンの低濃度を示す。右は平常時の脳血流(測定:東京大学大学院伊東研究室/実験協力―徳間書店)

 長方形の部分で、青色は血液中の酸素を含むヘモグロビンが著しく減少している部位を、緑色は変化の少ない部分を、黄色~赤は増加している部分を示します。

 分かりやすく言えば、赤や黄色は脳が活性化していることを示し、逆に青は脳が不活性化している状態を意味します。なぜなら、その部位に酸素を豊富に含む「動脈タイプ」の血液供給が不足しているので、ニューロンが作動しようにも、酸欠のために動力源となるエネルギーを得られないからです。

コメント73

「伊東 乾の「常識の源流探訪」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック