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意識の死角はいつ生まれるか?

「演奏の脳機能可視化」から考える(CSR解体新書27)

2008年2月8日(金)

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 今回は、最初にちょっとクイズを考えていただければと思います。問題です。

 「いま、誰かがラッパ(トランペット)を吹くとします。長い音を一息で(ロングトーン)、大変に小さな音で吹き始めて、段々音量を大きくして(クレッシェンドする)、十分大きな音で吹いてから、徐々に音量を少なくして(デクレシェンド)再び弱い音で終わるとしましょう。

 この演奏の最中、奏者の脳の、意識の座があるとされる前頭前野の脳血流は、どんなふうに変化すると思われますか?」(正解は後ページに書いてあります)。

トリッキーなアプローチ

 各種の風邪が流行っています。皆さんは大丈夫でしょうか。私も、また日経ビジネス オンライン川嶋編集長も、熱が38度台に上がる、タチの悪い風邪にかかってしまいました。出稿が遅れ、申し訳ありません。

 高熱に浮かされてというわけではないですが、今日は本連載でご紹介している大脳皮質の脳血流量測定が、常識的に考えると、実は全く正攻法ではないラインを狙っている内幕から、今回はお話を始めたいと思います。

 脳みその、表面から見えるしわしわ「大脳新皮質」の測定を「情動」に関して行うというのは、もし脳科学をご存じの方がご覧になれば、実はやや素っ頓狂なアプローチなのです。

 科学的な用語を含めて書き込みをしてくださる方があるので、どれくらいプロが見ているのか、突っ込みどころがある方が面白いと思って、あえて強調せずにど真ん中に穴を開けてしばらく待っていたのです。

 が、まあ時間切れということにして、その種明かしから始めたいと思います。私が取っているのは、ややトリッキーなアプローチです。

情動を直接つかさどるのは「脳幹深部」

 情動の脳科学の本を開けば、啓蒙書から専門書まで「扁桃」とか「海馬」とか、脳幹深部、大脳辺縁系などの部位が深く関係している、と記されているはずです。

 これに対して前頭前野・連合野は典型的な「理性の座」で、数の計算などの論理的なタスク(課題)などでも変化が出る部分です。

 情動の脳科学研究者が被験者やマウスの脳を調べるとするなら、背骨の延長、延髄の真上の「脳みその芯」に近いところを調べるのが、通常の研究方法です。

 だから「情動を調べようとして連合野を見る」というのは、実は直線的には結びつかないお話になります。ちょうど「風が吹いたかどうか、桶屋の景気から調べてみよう」というようなことですね。だから自分自身で「素っ頓狂」と書いたわけです。

背理法的な測定

 情動の本体を調べようとするなら、MRI(核磁気共鳴可視化装置)やPET(陽電子放出トモグラフィ)などほかの技術を使って、脳の深い部位を調べるのが王道です。この場合、生活状態ではなく、巨大な装置の中に固定された状態での計測になるので、日常的な生活の最中に生起するユーザーの情動変化は考察対象になりません。

 だから私の測定では、情動そのものに関する与件は前提となっていて、その際に悟性の座がどう働くか、働かないかという点を、主要な興味の対象にしています。「笑いそのもの」あるいは「性そのもの」を深く探る、という道具立てにはなっていないんですね。

 でも、このセットアップだから狙える、ちょっと面白いものがあるわけです。この測定原理はやや「背理法」的なところがあります。

 情動が大きく動く → 悟性が働きにくい → そのために不注意にならざるを得ない

という話の流れです。

 私の狙い、関心は、以前から記しているような「ニューロエコ ノミクス」や、次回にも書きますが「刑事裁判での責任訴求能力」など「理性的判断がどう鈍磨するか」の評価が一番大きいのです。

 そしてその興味の原点は「音楽の演奏中には、理性的な判断が下がってしまうタイミングがある」その詳細を、よりクリアにしてみたいという、音楽に関わる人なら誰しも思い当たるフシがある事実にあるのです。

人の認知資源は限られている

 車の運転教習で、1つの難関になるのは「右折」ではないでしょうか。左右の確認、ウインカーを出して、交差点の真ん中まで進行し、途中でギアをチェンジし(最近の教習はオートマチックなのかもしれませんが…)、一度に多くの仕事「タスク」を課せられると、いちいちその場で考えていてはおっつかなくなってしまう。そこで、イメージトレーニングなんかを積み重ねて、体に覚えさせてしまう…。

 こういう「トレーニング」の経緯は、よくあるものだと思います。ここで、初心者がいちいち頭を使っている時に脳血流測定すると、前頭前野により多く活性化が見られること、熟達すればするほど、前頭前野は使われなくなり、大脳で言えば運動野、感覚運動野、あるいは小脳など別の中枢の支配に移行することはよく知られている通りで、そういうテレビ番組もオンエアされていると思います。

 人間は「意識しての並列処理」には弱いのです。だから、体に覚えさせてしまう、というのは一種の「反射」を形成するわけです。運転のように操作性の条件反射形成を「オペランド条件付け」と呼びます。これを「学習」の定義とする教育心理の人もいます。

「生兵法」で人間がアタマを使ってできることには限りがあるわけです。

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