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野村監督相手に激論を交わす

~楽天野球団 オーナー兼社長 島田亨氏(5)

2008年3月4日(火)

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楽天野球団社長の島田亨氏が語る、社長への道。最終回は会場との質疑応答を紹介する。思わず漏れた、野村監督とのやりとりに会場が沸いた。

楽天野球団 オーナー兼社長 島田亨氏

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司会、山中(以下Y) 質問の時間にさせていただこうと思います。質問のある方、お願いいたします。

Q 「本質的な話ができない」という問題で、日光堂のときに一番苦労されたという話があるんですが、本質的な話をするための土壌づくりとして、心がけていることを教えていただきたい。

島田 私自身が自分で自覚しているマネジメントのコンピテンシーというのは1つしかないんです。「人から話し掛けられること」です。

一番手間がかかる部分を圧縮できる

島田 要は、自分から取れる情報ってすごく少なくて、相手から与えられる情報の方が圧倒的に多い。情報を取ってくる、情報を認識する、分析する、課題をつくるという各プロセスがあったときに、どこが一番時間がかかるかというと情報を取ってくるプロセスなんですね。いかにその後の工程を縮めてもなかなか縮まらない。

 だから、人からいろいろな情報をもらえるようなコミュニケーションの在り方というか、人柄をつくろうというのが意識しているところです。本音の話を気軽にしてくれるような空気、存在感をつくるというのが一番大事なポイントだと思います。

Q 球団のビジョンとして、強くて愛されるチームになりたいとおっしゃったかと思うんですが、なかなかこの両方を達成するのは難しいと思うんです。どんな戦略を考えていらっしゃるのかということと、そうなるために不可欠なものは何かをお聞かせいただければと思います。

島田 どっちが先かということでは、どっちでもいいと思います。どっちが先でもいいから、この2つが大事だからやれる方からやりましょうというのが結論ですね。

 ただ基本的に、短期的に強くするのだけは避けたいと思っています。だから、お金をはたいて強い選手を集めてきて、というのは絶対やらない。石が固まるとき、急激に時間をかけずに固まった石というのはぱかっとすぐ割れますけど、ものすごい年月をかけて固まった石は割れにくい強い石なわけで。チームを支えてくれるファンの気持ちというのはまったく同じなんですね。

 チームを強くしていくプロセスというのは、時間をかけてインタラクティブにやっていくべきだと思っていまして。極論を言うと、優勝するまでに10年かけたい。

「優勝まで10年かけたい」のが、経営の時間軸

 2007年も、「プレーオフに進出できたらいいですね」という話があったのですが、私は「進出したくない」と言ったんですよ。これはチームのファン、監督からもめちゃくちゃ怒られるんですけど本当です。最終的にいいチーム、強いチームにするというベクトルは変わらないんですけど、監督の時間軸と経営の時間軸というのは違うわけでして。

 例えば、昨年はできてないですけど、結果的に5位で終わるというのが最高のシナリオだったんですよ。それで来年の期待をまた持っていただいて。

 結果論としてスター選手が入ってくれるのはオーケーです。今回のマー君(田中将大投手)は大成功、本当に素晴らしいプレゼントだと思っていますけれども、仮にマー君が入らなかったとしても地道に強くしていく方法を取っていく。

 例えば、2006年度のパ・リーグで優勝した日本ハムと最下位だった楽天イーグルスの平均打率の違いってどれぐらいだかご存じですか。

優勝と最下位の差はごく僅か、だから、こう埋める!

Q 3分ぐらいですか。

島田 もっと少ないです。1分3厘とかそんなものですね。1分3厘というのはKPI的に何を表しているかというと、100打席で1本のヒットがあるかないかの違いだけです。

 もうちょっと違う見方をすると、2割7分の平均打率を打っているところは100打席中、27人ランナーが出ている。ビリのチームの我々は100打席中、26人のランナーが出ている。じゃあ、それを1本増やすために大枚はたくよりは、26人ランナーが出ているわけなので、26人をいかに効率的に3つのアウトを取られる前にホームを踏ませていくか、ということに切り替えた方が賢いです。

 じゃあ、何をやるかというと、どの選手を使うかということもそうですし、選手にどういう目標を持たせてどういうインセンティブ、報酬プランをつくるかということも大事。

 例えば、盗塁は成功率だいたい7割が平均なんですけど、これはだめな結果でして。なぜかというと、成功するときしか走ってないから。選手というのはプリミティブに試合に勝ちたいんでしたら盗塁はしたくない。盗塁をするとけがする確率が高いし、失敗すると三振したより惨めな姿をさらす時間が長い、成功するとしてもヒットを打ったよりも評価されない。成功しても失敗してもいいことないわけですね。

Y インセンティブが低いんですね。

島田 低いんです。じゃあどうやったらいいかというと、実績で7割盗塁成功率があるけれども、実際に盗塁を企画した数が10個しかないやつ。盗塁って足の速さだけじゃなくてセンスもありますから、そういう選手を呼んできて、「来年の盗塁の成功率は5割でいい。でも5割をちょっとでも上回ったら、成功した盗塁も失敗した盗塁も全部成功でカウントして報酬を上げる」と。

 企業みたいですけれども、それが300万円だとしても彼らはその300万円にこだわるんです。自分を特別に見てもらって、特別な使用法を設定してくれて、それが成功したら300万円もらえると思うと、それを意識して試合に出る。

 ある選手なんて、勝った日にベンチで僕らが迎えると、通り過ぎざまに、「盗塁何個になりましたからね」とか、言ったりするわけですね。

 ピッチャーもそうで、例えば先頭打者を塁に出す確率が高いと、これは負けにつながる。それが4割のピッチャーがいたとしたら、2割にするのは無理なんですけれども、3割8分にすることは可能なわけです。それぐらいの目標を設定して、インセンティブにしてあげると意識し始めるんです。

 そういう細かいことをやりながらも、経年的に、どういうポジションにどういう選手が必要か、という補強はやっていく。この両方が合わさったとき、例えば10年かかったらさすがにいいチームができるだろうと思うわけです。

司会、秋山(以下A) そのインセンティブシステムは、監督と一緒になって考えるんですか。

島田 いいえ、フロントサイドが考えています。

Y それでは現場と、野村監督と揉めませんか。

コメント2件コメント/レビュー

スペシャリストにお任せではだめ。これは経営者にとっては当たり前の話。しかし、楽天以外のプロ野球経営者はお任せを当たり前のようにしているからタチが悪い。ファンあっての野球だが、経営しているので、その辺はファンもわかってあげないとね。(2008/03/04)

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「野村監督相手に激論を交わす」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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スペシャリストにお任せではだめ。これは経営者にとっては当たり前の話。しかし、楽天以外のプロ野球経営者はお任せを当たり前のようにしているからタチが悪い。ファンあっての野球だが、経営しているので、その辺はファンもわかってあげないとね。(2008/03/04)

タニマチ意識で成り立っていた日本の球団経営に合理性を持ち込んだ点で、楽天(と島田社長)の功績は大だと思います。まあ企業としては当たり前のことなんですが…昨年の年俸交渉でほとんど揉めなかった理由の裏には、こんなインセンティブがあったんですね。(2008/03/04)

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三品 和広 神戸大学教授