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第1回 「監督の仕事はイメージ業だ」

  • 杉山 泰一

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2008年2月29日(金)

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 2007年1月の全国大学選手権の決勝で敗れた悔しさをバネに、早稲田大学ラグビー部の中竹竜二監督は「来年は決勝を50対0で勝つ」と選手たちに宣言した。そんな最強のチーム作りの総仕上げを始めた2007年10月、中竹監督を強力にサポートし始めた人物がいる。目標達成に向けて最大限の能力を発揮できるようにするメンタル面の研修やセッションを提供するピークパフォーマンス(東京都港区)の平本相武代表だ。同氏は、日本人メジャーリーガーやプロゴルファーなど、スポーツ選手のクライアントを数多く抱える。

 平本代表は「ゾーンメソッド」と呼ぶ独自手法を使う。クライアントをゾーンと呼ぶ意識状態に導いてから、課題の解決策を引き出す。平本代表は「ゾーンは、流れるようにすべてがうまくいく意識状態」と説明する。雑念が消えて五感が研ぎ澄まされ、自信に満ちあふれ、頭がフル回転する意識状態のことだ。自分の能力が最大限まで発揮される。中竹監督は平本代表のセッションをほぼ毎週受けてきた。

 今週から5回にわたり、2人のやり取りを紹介する。今回は2人にゾーンの有効性などを語り合ってもらった。三菱総合研究所のコンサルタントを務めた経歴をもつ中竹監督の組織論は実に興味深い。2回目以降で紹介するセッション事例はいずれも本邦初公開である。

(聞き手は、杉山 泰一=日経情報ストラテジー

――大学選手権の決勝戦で50対0で勝てるチーム作りをしていたと聞いています。そもそも中竹監督の目指す理想のチーム像とは何でしょうか。

図版

中竹竜二(なかたけ・りゅうじ)
早稲田大学ラグビー蹴球部監督。1973年生まれ。1994年に早稲田大学に入学し、ラグビー部に入部。1996年度の主将を務めた。卒業後、英レスター大学大学院社会学部へ留学。帰国後、三菱総合研究所に入社。同時にラグビーチーム「タマリバクラブ」のヘッドコーチとなり、全国クラブ選手権で2度優勝。2006年に三協フロンテアに籍を移し、監督業に専念。2月25日に自身初の著書『監督に期待するな 早稲田ラグビー「フォロワーシップ」の勝利』(講談社)を発売
(写真:山西英二、以下すべて)

中竹 実は、僕には目指そうとしている理想のチーム像はありません。最初にその組織を観察してから、その組織の目的に対してどうあるべきかを考えるのが、監督としての僕の仕事だと思っています。そういう意味で、僕の固有の理想は全くないのです。

 今回は、大学選手権で優勝させることが目的で、その目的に対して選手たちの力と僕の指導者としての力をミックスした時に、何が一番いいのかと考えたわけです。僕には強烈なカリスマ性とかリーダーシップはありません。だから、僕が選手みんなの力を最大限に引き出す、そして、選手みんなが何をすればチームに貢献できるかを自主的に考えて行動できるようにする。これこそが、次の大学選手権までの限られた時間の中で最高の成果を出す組織だと考えたのです。そこが原点です。もしも強烈なリーダーシップを発揮できる人がチーム内にいれば、僕はその人を使って別な形の組織を目指していたかもしれません。基本的に僕の理想はないですね。

平本 私のゾーンメソッドも全く同じような感じです。こんなセッションをしたい、とか、こんなリーダーが理想的ですね、といった考えは私にはありません。中竹監督とのこれまでのセッションでも、こういうリーダー像を目指して一緒に頑張りましょうというのは、全くありませんでした。

中竹 僕はそれですごくやりやすかった。何かの型にはめようとすることが一切なく、常に内面から何かを引き出してくれるセッションでしたから。基本的に僕と平本さんの仕事は同じようなものだと思うんです。平本さんが多くの人にやっていることを、僕は早稲田大学ラグビー部という組織に対してやる。だから、僕はそのノウハウやスキルについても、アドバイスをいろいろいただくところがありました。

 「50対0で勝つ」という目標設定ですが、これは去年も決勝戦で勝てる要素は持っていると感じていたけど、実際はできなかった。だったら、どれくらい点数があれば絶対に優勝できるのかと考えた。すると(天候やケガなど)リスクは大きく5つあるから、それぞれを10点と考えれば50対0。決勝戦前日に50対0で勝つ準備をするのが僕の仕事だな、と考えたわけです。平本さんとのセッションを始めたタイミングはちょうど、各項目をしっかりと10点満点にしていこうとし始めたところでした。

平本 確かに中竹監督が毎回セッションで言っていたのが、「今はディフェンスが5点、オフェンスも5点、次はディフェンスを7点にして、オフェンスはそのまま」みたいな話でしたね。毎回毎回ちゃんと計画的に数値を上げられていた。

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