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「クセになる使い勝手」はこうやって作る!

ソニー・エリクソン開発チームインタビュー(後編)

2008年3月13日(木)

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 「クセになる」使い勝手、使い心地とは何か。前編でジョグダイヤル(+JOG)開発担当者たちはそれを「触っているだけで心地よく感じられるようなデバイス」と表現しました。では、どうやって創るのか。前編はあの小さなダイヤルに込められた触感への執念を聞きました。後編は、触感を実際の操作とどうリンクさせるのかを扱う、ソフト編となります。

 その後編の編集作業中に、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(以下ソニー・エリクソン)が、NTTドコモ向け端末から事実上撤退かとの報道がありました。ソニー・エリクソン側からは「NTTドコモ向けの商品化計画について、一部見直しを図っていることは事実ですが、今後も開発を含めてビジネスは継続してまいります」と、日本国内での携帯電話開発事業縮小を公式に否定するコメントが出されました。携帯電話メーカーの競争の激しさと、日本市場の存在感が相対的に軽くなっていることを、我々に思い知らせる一幕ではありました。

 これからお読みいただく後編の内容を先出ししてしまえば、クセになる使い心地、ユーザーに対する圧倒的な体験を創り出す力は、ユーザーに作り手がどれだけ密着・一体化できるか次第なのでしょう。当たり前? いやいや、「ユーザー調査」レベルの話ではなく、感覚的、肉体的な部分で「シンクロ率」をどれだけ高められるか、製造側の自分を忘れ、どこまでワガママなユーザーそのものになれるのか、が問われます。それには、当然ある程度の時間がかかります。

 そして、記事の最後の方で出てきますが、このシンクロ率を高めるには、ユーザーが実際の生活の中で実機使っている姿を、開発者が頻繁に見る機会があること、そして自らも実際に生活の中で使うことが、かなり重要なのではないでしょうか。事例分析としてはもちろん、彼ら彼女らのモチベーションに非常に効くように思えます。言い換えると、目指す市場の現場に開発者が「いちユーザー」として立ちきることが出来なければ、キラーな使い心地を提供するのは極めて難しいのではないか。

 もちろん、開発者が見いだした課題を製品化するために、組織がどれくらいの自由度を作り手に与えられるかも問われます。なんといっても開発者はスティーブ・ジョブズじゃない、いち会社員なんですから、一見非効率に見える提案が通るかどうかは分からない。短期で業績を求められがちな経営側にとっても、難しい決断になるでしょう。

 だけど、クセになる使い勝手は、ジャパン・ブランドが海外を席巻した大きな理由だったはず。それを育んだワガママな国内市場は、世界に向けてイノベーションを作り出すためにも重要ではないでしょうか。

 半導体のチープ革命以後、高付加価値商品が競争力を失った、という事情もあるでしょう。しかし私には、日本の携帯メーカーが海外で力を失い、国内では過当競争という『パラダイス鎖国』に陥った理由は、「お仕事としての」義務的なモデルチェンジ競争に走りすぎて、製品の作り込みを待てなくなったことにあるんじゃないかと思えます。ジョグダイヤルが「クセになってしまった」ひとりとして、同社が日本市場にこれまで通りの開発リソースを振り向けてくれるよう、切に祈る次第です。ちなみに輸出モデルでは、ジョグダイヤル搭載機はまだないようです。


※ジョグダイヤルの使い勝手と、ファンたちの生の叫びはこちらから

(日経ビジネスオンライン 山中 浩之)


前編から読む)

右がW53S、左が先代のW21S
W53Sのジョグダイヤル「+JOG」

上:右がW53S、左が先代のW21S
下:W53Sのジョグダイヤル「+JOG」
(写真:大槻 純一、以下同)

―― クセになる使い心地の作り方、まず「モノを動かす」ベースとしてのハード編を井澤さんから伺いましたが、ソフトウエアの方はどうですか。

向井: ソフトの方では、最大のライバルというのはこれ(W21S)なんですね。

―― 自社機の先代、W21Sに、具体的にはどこで勝とうとするのですか。

向井: まず、速さというところです。ジョグダイヤルを「+JOG(プラスジョグ)」として進化させる以上、パフォーマンスというところは絶対に負けてはいけない、勝たなければ、と考えました。

 そこで、例えばメール、ブラウザー、さらにはPCサイトビューアーとか、W21S、そしてもちろん他社機も含めて色々な角度から比較したのですが、最終的には非常に満足いく速さまで持っていくことができた自信があります。W21Sとは画面(W53Sが大きい)や文字のサイズ(同、小さい)が違うので、見た目からするとそんなに変わってないように見えるのですが、実際の速さとしてはW53Sの方が勝っています。

―― 携帯に限りませんが、使っていて一番イライラするのが「押した、動かした、なのに一拍遅れて反応する」ことですからね。でも、速すぎるとかえって使いにくくなってしまいませんか?

ソフトウエア担当 向井氏

ソフトウエア担当 向井氏

向井: そこが難しいところです。単純に、ジョグダイヤルを回したときに素早く動くことを突き詰めていくと、こんどは追従性が悪くなる。速くし過ぎて目的の場所を通り過ぎて「滑ってしまう」のです。速さと追従性はトレードオフの関係にあるわけです。

 それを一番いいところを持っていかないといけない。そこで、この「速さ」と「追従性」、そういう操作感に関しては、ユーザーさんを100人以上集めた調査を数回行っているんですね。それだけじゃなくて、社内の何十人というユーザーにも、「どれが一番いいですか」と聞きまくって、突き詰めた結果が今回のW53S、ということになっています。

―― 前回、ジョグダイヤルのデバイスがW21Sとは別物になったとうかがいましたが、それを反映して「こんなことができるようになった」ことは、なにかありますか。

向井: (ハードウェアの変更で)ものすごく回転がなめらかになっているので、速さを出しやすくなっているかな、と思っています。

冨岡: 一方で、ジョグダイヤルの直径はずっと小さくなっています。これは、大きな量をスクロールさせたいときにはたくさん回転させなければいけなくなるのですが、ソフト側のアレンジで負担を減らす仕掛けをしています。

向井: そうですね。

―― それが「アクセル」ですね。

向井: 背景的なお話になりますが、+JOGの検討は、まず速さというところから入ったんですよね。そこで、ちょっと「裏技」を思いついて、作ってみたのがアクセル機能なんですよ。普通にダイヤルを回せば回す分だけ動くのではなくて、ソフト側でも「加速感」を足してやろうと思ったわけです。その思いつきをじっくりと温めてきて、今回の搭載につながりました。

回し方もいろいろ、使い方も色々

―― アクセルには「1、2、3」と3つの設定がありますね。

W53Sのアクセル機能

W53Sのアクセル機能

向井: ユーザー調査のお話をしましたけど、本当に人によって要望はそれぞれですし、回し方というのを見ていても多種多様のスタイルがあります。

―― 「カカカカッ」と小刻みにやる人もいるし、ズル~っと回す人もいますよね。

向井: そうなんです。ダイヤルにつめを立てて回したり、指の腹を使って器用に回す方法であったり、爪が長ければそれができないので、指の側面でぐいっとやる人もいたり、そういういろいろな方がいます。

 ですので、ユーザーさんの中には「しっかり回せない」人だっている可能性があります。そうなると、このデバイスに対してネガティブな見方をされるかもしれません。でも、僕はこのジョグダイヤルには、どなたでも「慣れれば使えるデバイス」という、期待を持っているんですね。それをもっと広げたい、その慣れにつながるような手段を、何とか操作的な、ソフト側からのアプローチでやりたいなということで、アクセル機能を搭載したんです。

 つまり、爪などの理由で、ダイヤルをあまり速く回せない人たちには、「ユーザーが今、速くスクロールさせたいんだよ」というのを携帯電話側で感じとってあげて、スクロールの手助けをしてあげる。逆にせっかちにがーっと速く回す人は、やっぱり速さを求めている、だったら一気に加速しよう、と察してあげる。個々のユーザーの皆さんの使い方に応じて、少しでも楽をして速いスピードに持っていけますよ、というのがアクセルの中身なんです。

―― 乱暴に言うと、1が小刻みに回す人向けで、3は一気にダイヤルを回す人向け、ということですよね。

向井: ええ、1はゆっくり回す人向けなので、動かした速度以上にたくさん回してあげる。

―― あまり焦らなくても加速するわけですね。

向井: そうですね。

冨岡: 車でたとえて言うならば、モードの1が高級車で、3がスポーツカーみたいなイメージかもしれません。

向井: 回転した角度以上に大きく動く、つまりアクセルが効く状態に入るための入り方というのも、1、2、3、それぞれ全然違う仕組みになっていまして。1番ですと、ある程度の速度で3回、クリ、クリ、クリとやると入るんです。

―― なるほど、初心者でも簡単に加速モードに入れると。

向井: そうなんです。だからあまり必死でがーっとやる必要はなくて、普通に3回やるだけで入る。逆に3番ですと、短い間隔で一気にぼーんと入れると入り出す。でもこれがなかなか難しい。なぜ難しいかというと、ジョグダイヤルは普通に項目選択をするときにも使います。そのときにアクセルが効いてしまうと……

―― あ、項目を一気に飛ばしてしまう。それでわざと入りにくくしてあるのか。

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「「クセになる使い勝手」はこうやって作る!」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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